徒然ペンギン

天野蒼空

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2024年2月

柚子呑の奥さん

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 引越し作業が終わったらやること。それはお隣さんへのご挨拶。

 いや、人によるのかもしれないけれど。今の時代する人少ないとか言われるけど。

 それでも私は幼い頃からの引越しで両親にそう教わってきたので、ご挨拶に伺います。

 中身は百貨店で買って、きっちり目に包んでもらったタオル。ちゃんと熨斗(あと掛け紙)もついてます。

 ちなみに買う時に柚子くんに「外に熨斗でいいよね。ご挨拶だし」って話したら「熨斗ってどうやって使うの?」って聞かれた。よく考えたら熨斗を自分でつけるのって、あまり機会ないよね。家が違うと文化がまるで違うからそういう風にもなる。

 私の実家はお中元も年賀状も、なんなら暑中見舞いとかも毎回作ってるような家。柚子くんの家は年賀状はしないけれど、ホームパーティーを頻繁にやるお家。どっちが正解とかそういう話じゃなくて、文化違うから話してて面白い。

 作法的な面の話になると、柚子くんは箸の使い方が綺麗なので好きです。あと、フォークナイフの使い方も綺麗です。

 さて、挨拶回りにいきます。

 この挨拶用の手土産、ご挨拶の下に「柚子呑」「天野」と連名にするのもなんか変だなと思ったので「柚子呑」だけにしたんです。つまりご近所さんの認識では、私が柚子呑さんところの奥さんってこと。

 わ、意識したらにやけてきた。

 まだ入籍はしてないよ。してないけどそういうことになるじゃん?

 やばくない?

 やばいよ。

 でもにへにへしてると、すぐ柚子くんにみつかって突っつかれてしまうので、頑張って噛み殺します。

 お隣さんのインターホンを鳴らして、

「お隣に引っ越してきました、柚子呑です。引越しのご挨拶に伺いました」

 と、同じ棟に住んでいる人達に挨拶して回ったのでした。

 挨拶回りで知ったのは、私の部屋は以前、大家さんのお子さんが住んでいて、かなりリフォームされているらしいということ。大家さんが優しいらしいということ。

 かなり寛容な大家さんらしくて、これは本当にアタリなのでは。ご近所さんも怖そうな人いなかったし。

 本当なら大家さんにも挨拶に行くべきなのでしょうが、管理会社に一任しているタイプの大家さんのようなので挨拶は控えさせて頂きました。

 さて、挨拶回りが終わったら柚子くんは一旦実家に帰ります。明日は柚子くんの荷物を運んでくる日です。私は前の家の撤去確認みたいなやつが午前中にあるので、こっちに待機。

 明日は役所に転居届を出しに行きます。わくてか。わくてか。

 なので1人で晩御飯を食べるのですが。

 部屋が寒い。

 フローリングってすごく底冷えするんですよね。今まで住んでたところは畳だったのですっかり忘れてた。いや、キッチンはフローリングだったけどほとんど和室で過ごしていたし……。

 おまけに、窓がでかいのでかーてんの大きさがあってません。前の家は障子だったのですが、とりあえず用で実家から余ってるカーテンを強奪して持ってきていました。一般的な窓のサイズのものしか無かったので、クソデカ窓にはつんつるてん。冷気がガンガンに入ってきます。

 今日がクソ寒い日なのもあったのかもしれませんが。

 エアコンは備え付けであるのですが、なんとなく電気代のもったいなさを感じてつけられず。いやだって、暖房は付けなくてもなんとかなるじゃないですか。冷房はつけなきゃしんじゃうけど。それに前の家では暖房はエアコン使わずに、小さな電気ヒーター1台で生きていたので余計に抵抗が。

 そんなことを考えていたのも、晩御飯を食べるまででした。

 なんなら「晩御飯どうしようかな」って思いながらスマホいじってたり、荷解きしたりしていたら3時間経ってました。

 でも寒いと寂しくなっちゃうので、コンビニに行って肉まんとおにぎりを買いました。

「明日には世帯主が柚子くんで……」

 何度も何度も想像してニヤニヤしちゃいます。柚子くんいないのでいくらニヤニヤしてもバレません。変な顔になっても大丈夫。

 わくてか。わくてか。
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