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どんちゃん騒ぎの小劇団
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劇団星空はまだ数年目の小劇団だ。うちの事務所の先輩と座長が知り合いだったらしく、私は縁あって次の公演にアンサンブルとして出演させて頂くことになった。劇団とはいえ劇場を持っているわけでもなく都内のスタジオに初顔合わせと称して集合した。
「橋本優と申します。精一杯頑張りますのでよろしくお願いいたします」
「よっ、イケメン」
「いい声!」
挨拶をしただけでやじが飛んでくる。かなりフランクな劇団なようだ。
中でも印象に残ったのが
「カイです。よろしくお願いします」
南米の人のような顔とスタイルの良さ、よく通る低い声の劇団員だった。
読み合わせが始まっても、その流暢な日本語と真っ直ぐな芝居から目が離せなかった。
一方、違う意味で印象に残ったのが
「伊藤桃華です」
伊藤さんである。読み合わせ中もチラチラこちらに視線をよこしてくるのが気になって仕方ない。
読み合わせも終わり、打ち入りとして飲み会に行くことになった。
「乾杯!」
居酒屋でビールを仰ぐ。初めは私に気を使いつつ飲んでいる感じだったが、次第に空気が和んでいった。というか乱れていった。
「橋本さん、私酔ってきちゃいました」
伊藤さんは相変わらず隣の席をキープしている。古めのあざとい系女子といったところか。
「桃華!初対面でそんなベタベタしないのっはしたない」
カイさんが伊藤さんをたしなめているが、口調がさっきまでと違う。
やれやれといった感じで座長が耳元で言った。
「カイ、実はオネエなんだよ」
まじか。
私もオネエみたいなものだけど。
伊藤さんとカイさんはまだぎゃあぎゃあ言い合っている
「2人ともうるさいっ 他の客の迷惑だ」
座長がブチ切れるまでキャットファイトは続いた。
その後は、心理テストをしたり演劇論を聞いたりして、あっという間に時が過ぎていった。
帰り際、駅までの道を伊藤さんとカイさんに挟まれる。
「橋本さ~ん、今度は2人で飲みましょーね」
酔ったと言いつつあまり酔ったように見えない伊藤さんがくっついてくる。
伊藤さん、悪いな。心が女なもんでドキッとも何とも思わないんだ。
一方でカイさんは黙って何か思案しているようだった。
駅に着き、数名ずつ路線ごとに散っていく。別れ際にカイさんが囁くように言った。
「あなた、誰にも言えない秘密があるでしょ」
「どういう意味ですか」
「他の人に知られたくなければ今度私とサシで飲むことね」
カイさん一行は駅のホームへと消えていった。
「橋本優と申します。精一杯頑張りますのでよろしくお願いいたします」
「よっ、イケメン」
「いい声!」
挨拶をしただけでやじが飛んでくる。かなりフランクな劇団なようだ。
中でも印象に残ったのが
「カイです。よろしくお願いします」
南米の人のような顔とスタイルの良さ、よく通る低い声の劇団員だった。
読み合わせが始まっても、その流暢な日本語と真っ直ぐな芝居から目が離せなかった。
一方、違う意味で印象に残ったのが
「伊藤桃華です」
伊藤さんである。読み合わせ中もチラチラこちらに視線をよこしてくるのが気になって仕方ない。
読み合わせも終わり、打ち入りとして飲み会に行くことになった。
「乾杯!」
居酒屋でビールを仰ぐ。初めは私に気を使いつつ飲んでいる感じだったが、次第に空気が和んでいった。というか乱れていった。
「橋本さん、私酔ってきちゃいました」
伊藤さんは相変わらず隣の席をキープしている。古めのあざとい系女子といったところか。
「桃華!初対面でそんなベタベタしないのっはしたない」
カイさんが伊藤さんをたしなめているが、口調がさっきまでと違う。
やれやれといった感じで座長が耳元で言った。
「カイ、実はオネエなんだよ」
まじか。
私もオネエみたいなものだけど。
伊藤さんとカイさんはまだぎゃあぎゃあ言い合っている
「2人ともうるさいっ 他の客の迷惑だ」
座長がブチ切れるまでキャットファイトは続いた。
その後は、心理テストをしたり演劇論を聞いたりして、あっという間に時が過ぎていった。
帰り際、駅までの道を伊藤さんとカイさんに挟まれる。
「橋本さ~ん、今度は2人で飲みましょーね」
酔ったと言いつつあまり酔ったように見えない伊藤さんがくっついてくる。
伊藤さん、悪いな。心が女なもんでドキッとも何とも思わないんだ。
一方でカイさんは黙って何か思案しているようだった。
駅に着き、数名ずつ路線ごとに散っていく。別れ際にカイさんが囁くように言った。
「あなた、誰にも言えない秘密があるでしょ」
「どういう意味ですか」
「他の人に知られたくなければ今度私とサシで飲むことね」
カイさん一行は駅のホームへと消えていった。
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