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初アフレコ 2
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本番が始まった。
「彼は一流のコンサートマスター。バイオリンのシュセキソウシャである」
噛んでしまった。首席奏者が言えない。
「すみません! 」
その後も他の箇所でリテイクを連発してしまった。
モブなのに、主要キャスト陣の時間を取ってしまい情けない。
結果一部の箇所が後回しになった。
(あいつ、声の演技下手なのに何で声優コース来てんの?)
過去に言われた台詞が脳裏をよぎる。
「ガヤ録りまーす」
「この台詞、言ってくれる人いますか? 」
収録の後半、監督の声がほとんど耳に入っていなかった
気がつけば収録は終わっていた。
「お前。」
収録後、気仙先輩が私の席に来た。
「お前、なんのためにここに来たの」
頭を殴られたようだった。
「今日初アフレコだろう。リテイクは百歩譲るとして」
「どうしてキャストが決まってない台詞を取りに行かなかった? どうしてガヤで手を抜いた?」
気仙先輩の言い方は責めるようにも諭すようにも聞こえた。
「元々キャラに名前のついてない役なんだ。
お前じゃなくたっていいんだよ」
「今日のお前はアフレコにいる価値など無かった」
自分の失態を突きつけられて指先が冷たくなっていく。
自分はアフレコにいる価値などなかった。
それは心に重く突き刺さった。
「すみませんでした」
「それは俺に言う言葉じゃない。お前に付き合ってくれたスタッフさんに言え」
気仙先輩は私と一緒に各スタッフさんに頭を下げてくれた。
「まー、新人だし仕方ないよねー」
音響監督にはそう言われた。
最後に私は先輩に頭を下げた。
「私のために、一緒に謝ってくれてありがとうございました」
「おまえのためじゃない。現場のためだ」
最後まで冷水のような言葉を浴びせられた。
先輩と別れた後、人知れず泣いた。こうして泣いている自分も情けない。
次こそは上手くやってやる。
「彼は一流のコンサートマスター。バイオリンのシュセキソウシャである」
噛んでしまった。首席奏者が言えない。
「すみません! 」
その後も他の箇所でリテイクを連発してしまった。
モブなのに、主要キャスト陣の時間を取ってしまい情けない。
結果一部の箇所が後回しになった。
(あいつ、声の演技下手なのに何で声優コース来てんの?)
過去に言われた台詞が脳裏をよぎる。
「ガヤ録りまーす」
「この台詞、言ってくれる人いますか? 」
収録の後半、監督の声がほとんど耳に入っていなかった
気がつけば収録は終わっていた。
「お前。」
収録後、気仙先輩が私の席に来た。
「お前、なんのためにここに来たの」
頭を殴られたようだった。
「今日初アフレコだろう。リテイクは百歩譲るとして」
「どうしてキャストが決まってない台詞を取りに行かなかった? どうしてガヤで手を抜いた?」
気仙先輩の言い方は責めるようにも諭すようにも聞こえた。
「元々キャラに名前のついてない役なんだ。
お前じゃなくたっていいんだよ」
「今日のお前はアフレコにいる価値など無かった」
自分の失態を突きつけられて指先が冷たくなっていく。
自分はアフレコにいる価値などなかった。
それは心に重く突き刺さった。
「すみませんでした」
「それは俺に言う言葉じゃない。お前に付き合ってくれたスタッフさんに言え」
気仙先輩は私と一緒に各スタッフさんに頭を下げてくれた。
「まー、新人だし仕方ないよねー」
音響監督にはそう言われた。
最後に私は先輩に頭を下げた。
「私のために、一緒に謝ってくれてありがとうございました」
「おまえのためじゃない。現場のためだ」
最後まで冷水のような言葉を浴びせられた。
先輩と別れた後、人知れず泣いた。こうして泣いている自分も情けない。
次こそは上手くやってやる。
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