推しの隣に転生してしまった

夢の途中 2

ハルトへの憧れだけで養成所に通い続ける日々。

「そこ、噛むな」

「感情が声に乗って聞こえてこないわ」

「テンポ感、間が悪い」

あらゆることを叱られた。

ただ、2つだけ。

「橋本君、上手ですね～！　及第点でしょう」

　歌とダンスレッスンだけは褒められた。けれど、それは更に周囲からの妬みを増幅させ私の敵を増やした。

　入ってから約1年が経った3月。養成所に居場所は無く、もう精神の限界だった。とある日、講師に呼び出された。

「橋本君。オーディションに受かりました。事務所に正式所属となります」

　頬を涙が伝った。あの氷のように冷たい養成所へ行かなくていい。真っ先にそのことに安堵した。