メリーボイス 

manato

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scene1 深夜の訪問

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「助けてぇぇぇ 死ぬっ 死ぬ死ぬ! 」

 全速力で暗い病院を駆けるジョン。背後に迫る黒い影。どの病室も鍵が掛かっており逃げ込むことはできない。ゾンビはすぐそこまで迫ってきている。

「マジ何で追いかけてくるんだよ、てか何でゾンビがいるんだよ」

 パニックのあまりキレ始めたジョンは診察室のドアが開いていることに気が付いた。
 部屋に飛び込みすぐさま扉に鍵をかける。

ゾンビがこの部屋を蹴破ったりしませんように。
ジョンは祈るように目を瞑った……



「叫ぶ台詞多いな。明日、喉が壊れないといいんだけど」

ぼやきながら台本を読んでいるのは今をときめく人気若手男性声優、朝霧あさぎりゆうである。

 男性にしては小さい手でペンをくるくる回し、年齢より幼く見えるその顔を顰めて台本と真剣に向き合っている。翌々日のアフレコのためにチェックしているのだ。

 渋い役もやりたいのだが特徴的なハイトーンボイスのお陰で、最近は少年ショタ役ばかりまわってくる。

「もう3時か。そろそろ寝よう」

 湧は台本を置いて、ゲーミングチェアから立ち上がった。明日は久しぶりの休日だ。寝坊しても怒られない。
 その時、玄関で音がした。がん、という重い音に思わず肩が跳ねる。
 なんだろう。何か物が落ちたのか、泥棒か、はたまたゾンビか。 
 先程まで読んでいたホラー映画の吹き替えの台本を思い出し身震いする。
 屁っ放り腰で廊下に出ると懐中電灯で照らしながら玄関へ向かった。

「ヒィっ」

 玄関には男が倒れていた。ヤバイ、俺何かしたっけ。湧は近づいて、おそるおそる その顔を覗込んだ。

 高い鼻。長いまつげ。薄い唇。酒と甘い香水の匂い。

「……    高峯たかみねさん? 」

 湧が思わず声をかけると、男は目蓋を開いた。
つり目の黒曜石のような瞳。

「っ、んっ」

 なぜここに先輩がいるのだろうと考えていたその時、男は湧の唇を奪った。

「俺と……シたいんだろ? 」

「ちょっと、高峯さん、ちょっ、先輩」

 必死に抵抗するも男はその大きな体で湧を押し倒し口内に舌を滑りこませた。カクテルの香りが口に広がる。長い舌が歯列をなぞり、呼吸ごと飲み込む。息ができない。

「ふあっ、んんう」

 湧の身体からへなへなと力が抜け、そのまま気を失ってしまった。
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