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十五、論理くん、私のうなじを剃る

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「ねぇ、池田さん。お父さんのシェーバー借りていいかな?」
セックスのあと、二人で居間のテレビを見ているとき、突然論理くんがそんなことを言い出した。ちなみに、論理くんにはまだ髭が生えていない。
「え?いいよ。でもどうして?」
「俺、池田さんのうなじを剃ってあげたい」
「うなじ⁉︎」
論理くんがいきなり面白いことを言い出した。いつも論理くんが見てくれてるうなじ。それを論理くんが剃ってくれるの?
「そうだよ。見たら、ちょっと伸びてるからさ。男性用のシェーバーだと、深剃りできるし、肌も痛まなくて結構いいんだよ。自分ではなかなかやりにくいから、俺が剃ってあげる」
私は、右手でうなじを触った。確かに少し伸びていた。確か、三日前くらいに剃ったんだった。
「わかった。じゃあ持ってくるね」
私は、お父さんの部屋に行ってシェーバーを探す。机の上を見ると、積み上げた書類の中に少し脇に出ている部分があって、そこに、『魅惑のうな』という文字と、裸の女の人らしいものが写っている。なんだこれ。私は、出ている部分を引っ張った。すると、書類がバサバサと倒れてしまった。
「わわわわ!やばい…」
「池田さん、どうしたの?」
「あ、論理くん、助けてー」
論理くんがお父さんの部屋に駆け寄ってきた。
「どうしたの?無茶苦茶じゃない。というより、手に何持ってるの?」
「あ、これ、何かなと思って…」
私は、手に持った物を見た。表紙には、私のような黒髪おかっぱの裸の女性が横向きに写っている。耳の下できれいに揃った襟足。そして表紙には『魅惑のうなじ』。エロ本だ。
「『魅惑のうなじ』…か」
論理くんが、すごく興味深そうにその雑誌を眺めている。
「俺、自分が池田さんのおかっぱの襟足を好きになるなんて、変わってることかなとときどき思うんだけど、こういう本が出ているということは、うなじ好きというのも普通のことなんだよな。俺、ホッとしたよ」
熱く語る論理くんだったけれど、私は全然別のことを考えていた。
「なんで…お父さんがこんな本持ってるの…。しかも…魅惑のうなじ…私と同じおかっぱ…。気持ち悪っ‼︎さあ論理くん早くシェーバー探そ!」
「え?う、うん…」
お父さんを見る目が変わった。シェーバーはすぐに見つかり、私たちは部屋に戻る。
「論理くん、どうすればいい?」
論理くんは床に胡座をかいて、私を手招きした。
「池田さんは、俺のこの脛の上に頭を乗せていて。深剃りできるところはシェーバーで剃るし、生え際や肌を痛めそうなところは、これで剃るよ」
そう言って論理くんは、カバンの中から青くて細長い物を取り出す。
「なにそれ、剃刀?」
「そうだね。この蓋を取ってスイッチを入れると、ほら」
剃刀の先がウィィィンと動き出す。
「これ見たことない?美容室とかでは使われてるみたいだけど」
「うん、電動カミソリだよね。でも、なんで論理くんがそれ持ってるの?」
「今日のために買った」
「じゃあ論理くん…初めからここで私のうなじを剃るつもりだったの?」
「うん、そのつもりだった」
「もし、私が昨日自分でうなじを剃っていたら、どうするつもりだったの?」
「それでも剃るつもりだったよ。わがまま言ってごめん。俺は、池田さんのうなじを彼氏としてきれいにしたいんだ」
この手のことを言うときの例によって論理くんは、私の目を射抜くようにまっすぐ見つめてくる。そんな論理くんが、こんなにも好きなのはどうしてなんだろう。
「ありがと。論理くん、私のうなじを、きれいにして」
「うん、ありがとう。それじゃ池田さん、まずワンピースとブラを脱いで、横向きになって俺の脛を枕にしてみて」
「え?裸になるの?」
うなじを剃るんじゃないの?さっき論理くんの前で裸になったけど、また裸になるの?恥ずかしいよ…。私がそう思いあぐねていると、論理くんが「はあああっ」と肩を上げて、こんなことを言う。相変わらず、息を吸ってるって感じが強い、深いブレス音だ。
「うなじだけじゃなくて、肩とか、背中とかの産毛も剃りたい。池田さん、襟が低くて肩まで見えるようなブラウスも着るでしょ、そういうときに、産毛が伸びてるとあまりきれいじゃないからね」
「あ、そうなんだ…わかった」
論理くん、相変わらず変わってるなぁ。でも、そこまで私のことを思ってきれいにしてくれるのって、論理くんしかいないよ、嬉しい。私は、服の裾に手を伸ばし、脱ごうとした。
「論理くん、恥ずかしいからあんまり見ないでね」
「そのセリフ、前にも聞いた気がするぞ」
そうだったかな?と思いながら、そろそろと服を脱いでいく。今度はブラは自分で外す。論理くんを見ると、やはり例によってまっすぐ見つめてきている。
「もう、見ないでって言ったのに」
論理くんの視線には、独特の、ちょっとしつこい力がある。優衣が、論理くんを嫌う理由がわかる気がする。でも私は、その視線に酔っている。
「見ていないよ。見ている気がするのは、池田さんの目の錯覚なんじゃないかな」
「よく言うよ」
私はショーツだけ残して裸になると、胡座をかいた論理くんの脛の上に頭を乗せて横向きになった。論理くんは、まず青い電動カミソリを取り出す。論理くんは、私のサイドの髪の毛をかきあげて、指でもみあげの辺りを撫でて言った。
「池田さん、銀水駅のお蕎麦やさんで話したこと覚えてる?」
「え?なんだっけ」
銀水駅のお蕎麦やさんといったら、身体が熱くておかしくなってたこと、ひとりえっちしたことしか覚えてない…。
「えぇ、酷いなぁ。でもあのとき、池田さん確かちょっと変だったよね。風邪ひいたみたいだったし、それに、トイレがやけに長かったし」
「えっ!あ…それはね…気のせいだよ、うん」
「そうなんだ。あのとき、二人で結構熱い会話をしたような覚えもあるけど」
「そ、そうだったっけ?んで、お蕎麦やさんがどうしたんだっけ?」
「あ、それはね」
論理くんは、特に気にしたこともなく話し始める。心の中で私は、胸を撫で下ろした。
「もみあげのこの辺りの…」
論理くんはそう言って、私のもみあげを指でさっと撫でた。銀水駅でのドキドキが蘇ってくる。
「…半端な毛がもしゃもしゃしてるのを剃ると、池田さん、もっとかわいくなるんだよ。銀水のお蕎麦やさんでここを剃ってあげるって、約束した。それを、今実行できる」
「あ、ありがと」
また、体が熱くなってくるのを感じながら、私は論理くんにお礼を言った。
「じゃあ、始めるよ」
論理くんの手に力がこもって、私のサイドの髪の毛が軽く上に引っ張られる。スイッチの入った電動カミソリが私の頬に当たった。ひやりとした感覚。
「ちょっとじっとしててね」
電動カミソリが私のもみあげに当たる。ジジっという音。ああ、剃られていくんだなぁ。刃がもみあげの上を小刻みに何度も動く。
「さあ、剃れたよ。池田さん、ちょっと触ってみて」
論理くんの言う通り触ってみると、ジョリジョリしていて、もしゃもしゃという感じはなかった。
「電動カミソリで剃ると、剃りあがりはちょっとジョリっとするんだよ」
再び、刃が動き始め、私の顎から頬、鼻の下、眉、額まで論理くんは丁寧に剃っていった。私はそれが少しくすぐったくて笑うのをこらえていた。
「うぅ…」
「どうしたの?」
「少しくすぐったい」
「あ、ごめんね、この部分もうすぐ終わるから。やっぱり、池田さんにはきれいでいてほしいから、丁寧にやりたい」
「ありがとう」
論理くん、私の産毛を剃るの、楽しみにしていたんだろうな。今もなんだか嬉しそうだし。論理くんが嬉しいと、私まで嬉しい。
「じゃあ池田さん、首をちょっとだけ傾けてくれるかな」
私は言われるままに首を動かし、耳の下辺りが論理くんのほうに向くようにした。
「池田さん、ロングヘアにしたことない?」
「あるよ、小学生の頃」
論理くんのニヤリと笑う気配。
「池田さん、そのときこの耳の下辺り、もしゃもしゃだったんじゃないかな。産毛が濃くて、毛流れが見えてる」
「え、そうなの?私毛深いかな」
「さっきセックスしたとき、背中の産毛が見えたよ。やっぱり毛流れができてた」
今剃った産毛の毛穴が引き締まった。
「えぇ、論理くん、そんなこと言わないでよぅ。恥ずかしい…」
「いいよ池田さん。これから俺が剃って、きれいにしてあげるから」
「もう、論理くん…好き」
「俺も池田さんのこと、好き。さあ、今度はこれで深剃りして、全然目立たなくしてあげる」
論理くんがシェーバーのスイッチを入れた。刃が私の耳の下からぐるぐると動いていく。ジョリジョリという音が聞こえる。なんだか気持ちいい。論理くんに膝枕みたいにされて、すごく安心できるなぁ。
「池田さん、肩を下げてくれるかな」
シェーバーが、私の肩の周りと、腕の付け根に走る。
「そんなところまで産毛目立ってるの?」
「この辺りはそれほどでもない。池田さんの肌、白くてすべすべで、できものとかも無くて、ほんとにきれいだ。でも、やるなら徹底を期したい」
論理くんはそう言いつつ、丁寧にシェーバーを走らせる。論理くん、私の身体よく見てくれてるんだなぁ。恥ずかしいけど、嬉しいな。
「それじゃあ、うつ伏せになって」
私は体勢を変え、論理くんの脛の上に顔を埋めようとした。あれ、なんだか匂いがする。よく嗅いでみると、さっきの論理くんの愛おしい匂い。そしてよく見ると、論理くんのちんこがまた硬く大きくなっているのがパンツ越しにわかる。ニヤリと笑うと、私はそれに鼻を押し付けた。
「ひゃあ!池田さん何するの⁉︎」
「いい匂いだー!論理くんの匂いだー!」
「これこれ、さっき十分嗅いだでしょ」
「あんなのじゃ全然足りなかった!」
論理くんのちんこの匂いが私の鼻孔を嬲る。はあー、またセックスしたい。私はちんこに手を伸ばす。
「論理くん、剃られながら触っててもいい?」
「もう、池田さんったら…。じゃあそのまま、背中剃るからね」
論理くんのシェーバーが、背中に回っていく。私の産毛が丁寧に剃られる。ああ、いい匂い。いい気持ち。論理くんのちんこ、愛おしいよぅ。眠くなってきた。刃は、背中を剃り終えると、うなじに行く。論理くんの手が、私の髪の毛を押し上げて、普段私が自分で剃っている襟足に刃を当てる。
「この襟足の剃り跡は、池田さんのチャームポイントの一つだから、特に丁寧にやらないとね」
論理くんの匂いを嗅ぎながら、私は眠っていった。
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