【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜

夜須 香夜(やす かや)

文字の大きさ
上 下
65 / 77

第61話 三人の刺客

しおりを挟む
「ノジャ。仲直りしよう」
 俺たちはギルドに帰った。その足で、ロビーのソファにいるノジャの所へ来た。
「伊吹? どういうことじゃ? わしのことは許さなくてもいいのじゃよ」
「俺が怒っているのは、ノジャが辛くなるまで黙っていたことだよ。話してくれて、ありがとう。ノジャとの旅は楽しかったよ」
 俺はなんだか照れてしまい、捲し立てるように言ってしまった。
 ノジャは立ち上がり、俺を見上げる。
「ノジャも、俺との旅が楽しくて黙っていたんだろ?」
「そうじゃが」
「……ノジャが黙っていてくれなかったら、こんな体験できなかった。全部良い思い出とは言わないけれど、ノジャと一緒にいられて良かったよ」
「伊吹」
 ノジャは涙目になり、涙を拭うように、目を擦った。
「すまない……すまない。伊吹。わしがきちんと家まで送り届けるから、嫌いにならないでほしいのじゃ」
「嫌いになるなんて言ってないだろ。それに、元の世界に返すだけで良いから。家には一人で帰るって」
 その言葉の後、ノジャは俺に抱きついて、わんわんと泣いた。

「仲直りできて良かったな」
 アキラと皐月にそう言われた。
 ノジャは俺と離れたくないのか、俺の後ろから顔を出して、服の裾を握っている。
「ああ、ありがとう。二人のおかげだよ」
「俺は何もしてない」
「俺も」
 皐月とアキラはそう言いつつ、二人で顔を見合わせた。
「真似すんな!」
「お前こそ!」
 喧嘩が始まりそうになった時、杏奈がやってきた。
「アキラ!」
「やあ、杏奈! 久しぶりだね。元気にしていたかい?」
「元気よ。アキラも元気そうじゃない」
 杏奈はいつもと同じような対応をしていた。アキラが言っていた恋人っていうのは、皐月がいう通り冗談だったようだ。
「伊吹、ノジャ。これからどうするか話そうと思っていたのよ」
 杏奈は俺とノジャの方を見た。にこりと笑い、食堂に行きましょうと言う。
 その時、地鳴りがした!それはどんどん大きくなり、建物が震える。
「な、なんだ!」
「これは……」
 杏奈やアキラ、皐月は辺りを見渡す。
 ノジャの、俺の裾を掴む力が強くなる。
「刺客か?」
 俺がそう言うと、杏奈は頷いた。
「本気で来たのかも」
 俺たちが外に出ると、ギルドの前に三人いた。
 ボブヘアーのアカツキと、俺を窓から連れ出したオレンジ色の長髪の人と、黒髪に青みがかかった背の高い人がいた。
「あんたは……」
 俺は、オレンジ色の長髪の人をじっと見つめた。
「生きていたんだね。いや、ギリギリ殺さないようにしてしまったのかな」
「コノヨ……」
 ノジャはその人の方を向いて、そう呼んだ。
「そのお姿なのですね」
 黒髪の背の高い人がそう言って、前に出た。三人の中心にいる人だ。
「白銀の神様。我々の神様」
 やっぱり、神様なのか。
 ノジャを見ると、震えていた。怖いのだろうか。それとも……。
「そろそろ殺されてくれませんか?」
 背の高い人は、後ろに背負っていた大きな剣を手に持つ。
 アカツキは炎を出し、コノヨと呼ばれていた人は格闘技の構えのようなポーズをとった。
「ヨミ。この者たちには危害を加えるな」
 ノジャは俺から離れて、前に出た。
「ああ。我々の神様。そうは行きませんよ」
 ヨミと呼ばれた背の高い人は、杏奈たちを見る。
「彼らはあなたを差し出さない」
「杏奈! わしのことは良いのじゃ。もう」
「良くない! なんでかは知らないけれど、殺されそうになっている友だちを放っておけるわけない」
「杏奈……」
 ノジャは俯く。俺はそんなノジャの手をとった。
「俺たちは邪魔になるから、少し下がろう」
「……うん」
「何を」
 ヨミは声を発した。その声は震えていた。
「何をしているのだ。我々の神様に無礼にも触れるとは、なんたることだ!」
「そんなこと言っている場合なのか?」
 アキラはそう言いながら、いつの間にか抜いていた……どこからか出した剣を握って、ヨミに切り掛かっていた。
 ヨミは大きな剣でそれを受ける。
「邪魔なやつめ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん、異世界でスローライフはじめます 〜猫耳少女とふしぎな毎日〜

桃源 華
ファンタジー
50代のサラリーマンおっさんが異世界に転生し、少年の姿で新たな人生を歩む。転生先で、猫耳の獣人・ミュリと共にスパイス商人として活躍。マーケティングスキルと過去の経験を駆使して、王宮での料理対決や街の発展に挑み、仲間たちとの絆を深めながら成長していくファンタジー冒険譚。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...