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第35話 杏奈とリン、合流する
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「ザサツ界に行くですって!」
久しぶりに会ったリンは驚いた顔をしていた。杏奈は呑気そうだ。
「リンなら何とかなるだろう」
ツトムは余裕そうに、リンをニヤリと見つめた。
「土地勘もないですし、あの世界で生きていくのがどれだけ大変なことかわかりますよね?」
「俺は問題ないし、リンも問題ないだろ」
ツトムの言葉を聞いて、リンは俺とノジャを見た。
「守りながら戦えるかどうか……」
「杏奈もいるし、大丈夫だろ」
「杏奈さんも守る対象なんですけど」
リンの隣にいた杏奈が、まあ失礼ねと言う。
「難しいなら、すぐに豊たちに助けを頼むといい」
「……そうですね」
リンはため息を吐き、再びこちらを見た。
「ザサツ界は危険な世界ですが、本当に行きますか?」
「わしは平気じゃが、伊吹はどうじゃ?」
「そこに行けば、元の世界に帰れるかもしれないんだろ。リンには迷惑かけるけど、頼む」
「わかりました。できる限りのことはしますが、危険すぎると思ったら帰りますからね」
「わかった! ちなみに、ザサツ界っていうところはどんな世界なんだ?」
リンは再び目を丸くしてから、ため息を吐いた。
ザサツ界という世界は、殺人欲という欲望を持った人がいる世界らしい。
殺人欲とは定期的に殺し合いがしたくなる欲望。昔はいたるところで殺し合いが行われていたが、今では街中で殺し合いが始まることは減っている。しかし、闘技場で殺し合いが常に行われている。
でも、それは街中の話で、街を一度出てしまえば、殺人に飢えた人たちや進化したモンスターが襲ってくるらしい。
度々聞いていた気がしたが、進化したモンスターとは何なのか聞いてみた。
モンスターは元々は知能が低く、群れで人を襲うことはとても少なく、ずる賢い罠を張ることもなかったし、人語を理解することもなかった。今では、人語を理解し話すモンスターや、知恵を使って人にあだなすモンスターもいる。それが進化したモンスターだ。
「ザサツ界に行くのも一苦労なんですけど」
そう言って、リンはギルドの講堂に入っていった。
そこで、ザサツ界に行く魔法陣を描くと言っていた。魔力がとても強くないと描けないと言っていた。
「この街といえば白身魚のサンドウィッチだぜ」
ウルイァが呑気に俺たちに話しかけてきた。
「ウルイァは仕事に行かなくて良いのか?」
「ちょっと休憩だよ。港町といえば、海産物だろ? 市場に行こうぜ。リンが魔法陣作る間だけ」
俺とノジャは顔を見合わせた。
「どうするのじゃ? リンに何でも任せきりで良いのかのう」
「同意。何か手伝えることがあるかも」
「ないない。すごく高度な魔法だから、俺でも手伝えないし」
ウルイァにそう言われて、俺とノジャは仕方なくウルイァに着いて行くことにした。
杏奈とツトムは合間に仕事をするらしい。もしかして、ウルイァはサボりたいだけかもしれない。
市場まで来ると、さらに潮風を感じた。海が見えて、キレイだった。
街中は人がそこまでいなかったが、市場は人で賑わっていた。競りを行っているところもあった。
俺たちは白身魚のサンドウィッチを食べながら海を眺めた。
久しぶりに会ったリンは驚いた顔をしていた。杏奈は呑気そうだ。
「リンなら何とかなるだろう」
ツトムは余裕そうに、リンをニヤリと見つめた。
「土地勘もないですし、あの世界で生きていくのがどれだけ大変なことかわかりますよね?」
「俺は問題ないし、リンも問題ないだろ」
ツトムの言葉を聞いて、リンは俺とノジャを見た。
「守りながら戦えるかどうか……」
「杏奈もいるし、大丈夫だろ」
「杏奈さんも守る対象なんですけど」
リンの隣にいた杏奈が、まあ失礼ねと言う。
「難しいなら、すぐに豊たちに助けを頼むといい」
「……そうですね」
リンはため息を吐き、再びこちらを見た。
「ザサツ界は危険な世界ですが、本当に行きますか?」
「わしは平気じゃが、伊吹はどうじゃ?」
「そこに行けば、元の世界に帰れるかもしれないんだろ。リンには迷惑かけるけど、頼む」
「わかりました。できる限りのことはしますが、危険すぎると思ったら帰りますからね」
「わかった! ちなみに、ザサツ界っていうところはどんな世界なんだ?」
リンは再び目を丸くしてから、ため息を吐いた。
ザサツ界という世界は、殺人欲という欲望を持った人がいる世界らしい。
殺人欲とは定期的に殺し合いがしたくなる欲望。昔はいたるところで殺し合いが行われていたが、今では街中で殺し合いが始まることは減っている。しかし、闘技場で殺し合いが常に行われている。
でも、それは街中の話で、街を一度出てしまえば、殺人に飢えた人たちや進化したモンスターが襲ってくるらしい。
度々聞いていた気がしたが、進化したモンスターとは何なのか聞いてみた。
モンスターは元々は知能が低く、群れで人を襲うことはとても少なく、ずる賢い罠を張ることもなかったし、人語を理解することもなかった。今では、人語を理解し話すモンスターや、知恵を使って人にあだなすモンスターもいる。それが進化したモンスターだ。
「ザサツ界に行くのも一苦労なんですけど」
そう言って、リンはギルドの講堂に入っていった。
そこで、ザサツ界に行く魔法陣を描くと言っていた。魔力がとても強くないと描けないと言っていた。
「この街といえば白身魚のサンドウィッチだぜ」
ウルイァが呑気に俺たちに話しかけてきた。
「ウルイァは仕事に行かなくて良いのか?」
「ちょっと休憩だよ。港町といえば、海産物だろ? 市場に行こうぜ。リンが魔法陣作る間だけ」
俺とノジャは顔を見合わせた。
「どうするのじゃ? リンに何でも任せきりで良いのかのう」
「同意。何か手伝えることがあるかも」
「ないない。すごく高度な魔法だから、俺でも手伝えないし」
ウルイァにそう言われて、俺とノジャは仕方なくウルイァに着いて行くことにした。
杏奈とツトムは合間に仕事をするらしい。もしかして、ウルイァはサボりたいだけかもしれない。
市場まで来ると、さらに潮風を感じた。海が見えて、キレイだった。
街中は人がそこまでいなかったが、市場は人で賑わっていた。競りを行っているところもあった。
俺たちは白身魚のサンドウィッチを食べながら海を眺めた。
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