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第30話 ノジャ、怒る
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研究室の奥に進むと一際大きな机があり、机の上には地図と周りに資料が置いてあった。
「川にはクレイマンが多く生息していて、山と森はオークが多いんだ!」
「もしかして、あの二足歩行の豚のことか?」
俺がそう聞くとスナオはにこやかになった。
「そうそうそう!」
この街に来るまでの道中に出会ったのは、そのオークとスライムが大半を占めていた。
「泥のあるところにクレイマンがいた印象じゃのう」
「そうなんだよ! 少女! クレイマンは水か泥のあるところにしかいない。それから、反対側の森ではトロールが必ず何体かいてね」
スナオは段々俺たちが言葉を挟む余地もなく話し始めた。
なるほど。ユイリンが言っていたのはこのことか。話題に注意するべきだったのだろうけれど、これは防ぎようがなかった。
「ボストロールが前はいたんだが、討伐されてしまったんだ。研究材料にしたかったー!」
笑顔で話していたスナオは突然真顔になって、俺たちの方を見た。
「でもね、モンスターを研究材料にするのは認められていないんだ。街の中に生きているモンスターを入れることになるからね」
「それはそうなのじゃ。きちんと管理できていなかったら、モンスターによって街が破壊されるのじゃ」
「それでも僕はモンスターを研究するべきだと思うけれどね」
スナオは前を向き、再びマシンガントークを始めた。
「国王はわかってくださっているのに、魔法研究所の上層部の頭が固すぎる!」
まだ、話は続くようなので、俺はぼんやりと机の資料を眺めていた。
横をちらりと見ると、ノジャはきちんと話を聞いているようだった。
ノジャの人の話をきちんと聞く姿勢は尊敬に値した。俺なら、あまり興味のない話にはついていけなくて、このようにボーッとしてしまう。
しかし、置いてけぼりも詰まらないので、俺も話に加わってみることにした。
「地球では頭蓋骨を集めているトロールがいたよな」
「そうじゃったのう! なんと凶暴なモンスターなのじゃ」
「え?」
スナオはこちらをぽかんと見つめた。
「今、何て言ったの?」
「えっと、地球では頭蓋骨を」
「本当に! 本当に頭蓋骨を集めていたのかい?」
スナオは興奮気味に話しかけてきた。
「は、はい。そうです」
俺は圧倒されて、思わず敬語になってしまった。
「僕も出会いたかったー! もう討伐されたんでしょ? そんな習性があるモンスターがいるのかー! すごいなすごいなすごいな」
「頭蓋骨を集めていたんじゃぞ。人間を何人も殺しているのじゃ。討伐されて良かったと考えるべきじゃぞ」
「それはそうなんだけどさー。価値が分かってないよ。頭蓋骨はどうしていたんだい? 巣に集めていたのかい?」
「装飾品にしていたよ」
俺がそう答えると、スナオは爛々と目を輝かせた。
「頭の良いトロールだ! なんと言うことだ。やはり、モンスターは進化し始めているんだ。あー。惜しいことをした」
ノジャは不快そうな顔をしているが、スナオは何も気にせず話を続けた。
「詳しく聞かせて欲しいんだけど」
「もう話すことはないのじゃ」
スナオが言葉を言い終わる前にノジャは答えた。
「でも」
「ないのじゃ! 伊吹、慎助のところに戻るぞ」
「あ、ああ」
俺とノジャはスナオを置き去りにして、慎助たちがいた研究室の入り口まで戻ることにした。
「川にはクレイマンが多く生息していて、山と森はオークが多いんだ!」
「もしかして、あの二足歩行の豚のことか?」
俺がそう聞くとスナオはにこやかになった。
「そうそうそう!」
この街に来るまでの道中に出会ったのは、そのオークとスライムが大半を占めていた。
「泥のあるところにクレイマンがいた印象じゃのう」
「そうなんだよ! 少女! クレイマンは水か泥のあるところにしかいない。それから、反対側の森ではトロールが必ず何体かいてね」
スナオは段々俺たちが言葉を挟む余地もなく話し始めた。
なるほど。ユイリンが言っていたのはこのことか。話題に注意するべきだったのだろうけれど、これは防ぎようがなかった。
「ボストロールが前はいたんだが、討伐されてしまったんだ。研究材料にしたかったー!」
笑顔で話していたスナオは突然真顔になって、俺たちの方を見た。
「でもね、モンスターを研究材料にするのは認められていないんだ。街の中に生きているモンスターを入れることになるからね」
「それはそうなのじゃ。きちんと管理できていなかったら、モンスターによって街が破壊されるのじゃ」
「それでも僕はモンスターを研究するべきだと思うけれどね」
スナオは前を向き、再びマシンガントークを始めた。
「国王はわかってくださっているのに、魔法研究所の上層部の頭が固すぎる!」
まだ、話は続くようなので、俺はぼんやりと机の資料を眺めていた。
横をちらりと見ると、ノジャはきちんと話を聞いているようだった。
ノジャの人の話をきちんと聞く姿勢は尊敬に値した。俺なら、あまり興味のない話にはついていけなくて、このようにボーッとしてしまう。
しかし、置いてけぼりも詰まらないので、俺も話に加わってみることにした。
「地球では頭蓋骨を集めているトロールがいたよな」
「そうじゃったのう! なんと凶暴なモンスターなのじゃ」
「え?」
スナオはこちらをぽかんと見つめた。
「今、何て言ったの?」
「えっと、地球では頭蓋骨を」
「本当に! 本当に頭蓋骨を集めていたのかい?」
スナオは興奮気味に話しかけてきた。
「は、はい。そうです」
俺は圧倒されて、思わず敬語になってしまった。
「僕も出会いたかったー! もう討伐されたんでしょ? そんな習性があるモンスターがいるのかー! すごいなすごいなすごいな」
「頭蓋骨を集めていたんじゃぞ。人間を何人も殺しているのじゃ。討伐されて良かったと考えるべきじゃぞ」
「それはそうなんだけどさー。価値が分かってないよ。頭蓋骨はどうしていたんだい? 巣に集めていたのかい?」
「装飾品にしていたよ」
俺がそう答えると、スナオは爛々と目を輝かせた。
「頭の良いトロールだ! なんと言うことだ。やはり、モンスターは進化し始めているんだ。あー。惜しいことをした」
ノジャは不快そうな顔をしているが、スナオは何も気にせず話を続けた。
「詳しく聞かせて欲しいんだけど」
「もう話すことはないのじゃ」
スナオが言葉を言い終わる前にノジャは答えた。
「でも」
「ないのじゃ! 伊吹、慎助のところに戻るぞ」
「あ、ああ」
俺とノジャはスナオを置き去りにして、慎助たちがいた研究室の入り口まで戻ることにした。
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