【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜

夜須 香夜(やす かや)

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第26話 神を倒せる程度の強さ

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 クレイマンとの戦いはあっさり終わった。
 慎助と剣と十手の連撃で、相手は一瞬で木っ端微塵になり、灰化してしまった。
「なあ」
 俺は刀たちの泥を拭いている慎助に声をかけた。
「なんだ?」
「もしかして、ギルドの人たちって、めちゃくちゃ強い?」
 慎助はふと考えたような素振りを見せた。
 刀の泥を丁寧に拭いたまま答えた。
「数人でかかれば、神を倒せるくらいには強いかもな」
「何じゃと!」
 俺が驚く声を上げる前にノジャが声を上げた。
「オーディンやゴールネディアなどの規格外の神は別だが」
 慎助は補足したが、俺もノジャも驚きを隠せなかった。
 神様って倒していいものなのかという疑問もあるし、オーディンが規格外の神様だという驚きもあった。そんなにすごい神様なのか。余計に杏奈のあの態度が恐ろしく感じた。気軽すぎる。
「俺やバカのウルイァなどの仲間で、ブリュア殿を含めた色神しきしんを全て倒している。紛い物の神だけどな」
「紛い物って……」
 言い方に棘があるな。殿って付けているけど、慎助はブリュアさんのことはあまり好きではなさそうだ。
「神を倒すなどと……人間にそんな事が可能なのか? もしかして、殺すこともできるのかの?」
 ノジャは慎助を見据えてそう言った。
「俺は殺したことはないが、殺された神を知っている」
「何とうことじゃ……」
 ノジャは再び座り込んでしまった。
「ノジャ、どうした?」
「いや、なんと言ったら良いのかと思ってな」
 ノジャは俯きながら答えた。
 ノジャはあからさまに元気がなくなっていた。

 それから、泥を取り終わった慎助から、出発することを伝えられて、森の方へ向かうことになった。
 ノジャは元気をいつの間にか取り戻していて、呑気に鼻歌を歌っていた。
「ノジャ。大丈夫か?」
「ん? 何ともないぞ!」
 それなら良いが、気にはなった。今まで一緒にいるがノジャは結構謎が多い。どの異世界から来たのかとか、なぜ刺客に追われているのかとか、本名を隠している理由も不明だ。
「今から森の中に入る。モンスターが出るから、俺から離れるな」
 慎助にそう言われたので、俺とノジャは慎助からはぐれないように後ろに着いた。
 
 森から山の斜面を登っているようになった頃、すでに四組のモンスターと出会っていたが、慎助が難なく倒してしまっていた。
 俺は異世界に来てから、強いスキルをもらうこともなければ、強くなることを求められることもなかった。
 楽ではあるが、異世界系配信者が言っていた異世界転生をしてチートスキルを手に入れるということを体験したさもあった。
「俺はこのままで良いのかな」
「どういう意味だ?」
 心の声が漏れていた。慎助には聞こえたらしく、疑問に思われてしまった。
「弱いし、守られてばかりだし、このままで良いのかなって思ったんだ」
「そんな事を気にしていたのか。守られるべき存在はそのままの方がいい」
 慎助は立ち止まり、こちらを振り返った。
「俺は強くなりたくてなったわけではない」
「そうなのか?」
「昔は守られるだけの存在だった。それが嫌だったこともあったが、いざ強くならないといけないと言われた時には絶望した。戦いには辛いことが多すぎる」
 慎助の言うことは、俺は体験したことがないから、理解は完全にはできなかった。
 今までは、慎助やブリュアさんたちが代わりに戦ってくれていたが、いつか俺が戦わないといけない日が来るのだろうか。
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