【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜

夜須 香夜(やす かや)

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第25話 伊吹、川を越える

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 次の日、朝食の硬いパンをミルクスープで流し込んで、俺とノジャは一階のロビーにいた。
「慎助のやつ、遅いのじゃ」
 ノジャは文句を垂れながら、椅子に腰掛けて、足をブラブラとさせた。
「確かに遅いな」
 一時間は待っている。
 そう考えていたら、二階から慎助が降りてきた。
「すまない。待たせた」
「遅いのじゃ~」
慎助の腰には刀と、ブリュアさんが付けていたのと同じであろうウエストポーチが付いていた。昨日は身につけていなかった。
「それ、ブリュアさんのに似ているな」
「ああ。これはギルドの支給品なんだ。思ったよりも入るから便利だ」
 思ったよりというか、何でも入るだろと思った。
「じゃあ、行くか。伊吹殿、ノジャ殿」
「殿ってほどじゃないけど」
「俺は大体はそう呼ぶ」
 慎助は気にするなと言って、ギルドの扉を開けた。
 俺たちもそれに続いて、外に出た。

 昨日は暗くてよく見えなかったが、建物はレンガや土でできていて、圧迫感のある街並みだった。
「旅行許可証はブリュア殿から預かっている。街の外に出て、草原と森と山を抜ける」
「山!」
「大した山ではない」
「装備が貧弱でも大丈夫なのか?」
「身一つあれば問題ない」
 問題だらけだろ。こんな軽装で登山をするのか? モンスターもいるのに?
 俺は不安になりながらも、慎助に付いていき街の外に出た。
 草原の先に川が見えて、さらに先に森と山が見えた。
 異世界には草原と森しかないのだろうか。
 森は紅葉しているのか、赤々としている。

 草原を一時間ほど歩いていると、川まで辿り着いた。川には心許ない木と紐でできた橋がかけられていた。
「これを渡るのかのう」
 ノジャが不安そうに言った。
「大丈夫だ。川はそんなに荒れていない。流されても助けに行くからな」
 流される前提なのかよ。
 ノジャは嫌じゃーと叫んだ。そんなノジャを引きずりながら、慎助は橋を渡り始めたので、俺もそれに続いた。
 ギシギシと音を立てながら、橋を渡る。
「こういう時、橋が崩れるんだよなあ」
 そう言うと、前を引きずられながら歩くノジャに睨まれた。
「わしは、水が苦手なんじゃ! アホなことを申すな!」
「わ、悪かったって」
 俺は慎重に川を渡った。慎助とノジャは先に渡り終えて、ノジャは座り込んでいた。
 ギシッと大きな音を一瞬立てたが、俺も無事に反対側へと降り立った。
「フラグじゃなくて良かったな」
 そう言うと、フラグという言葉が通じなかったのか、ノジャは疑問を浮かべた顔をしていた。
 その時、後ろの川から、コポコポと泡が吹く音がした。
「なんだ?」
 振り向いた瞬間、橋を崩しながら、川から何かが飛び出した。水飛沫が飛ぶ。
 ノジャはギャーッと悲鳴を上げた。
「水は嫌じゃー!」
 慎助が俺の前に飛び出して、刀を構えた。
「伊吹殿はノジャ殿を抱えて、離れろ」
 そう言われたので、座り込んでいたノジャを脇に抱えて、川から五メートルくらい離れた。
 慎助の前には、水でできた丸い頭をした人間のようなものが立っていた。ブリュアさんの出した人形のように顔がない。
 川から上がった時は水を纏っていたが、次第に水が引き、泥の本体が現れた。それから、次々と泥の人形が川から上がってくる。
泥人形クレイマンか。相手にとって不足はない」
 慎助は刀を縦に振り上げた。
木薬こぐすり殿!」
 慎助がそう叫ぶと、慎助の後ろから剣が現れた。
花草はなくさ殿!」
 もう一つ叫ぶと、慎助の後ろから今度は十手が現れた。
「それぞれ二体を頼む!」
 慎助がそう言ったのと同時に現れた剣と十手は、クレイマンに向かって行った。
 慎助も飛び出し、川をものともせず、クレイマンに切り掛かった。
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