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第24話 慎助とクキヤ
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ブリュアさんがいなくなってから、ノジャと椅子に座って待っていると、黒髪をポニーテールにした和装の青年がこちらへやって来た。
「お前たちが伊吹とノジャか?」
「そうだけど」
「俺は慎助だ。ブリュア殿の代わりに火星での護衛を務めることになった。ウルイァのバカが近くの街にいるみたいで、そいつに引き渡すまでは一緒にいる」
「ウルイァ?」
「ブリュア殿と一緒に護衛をする予定のバカだ」
言葉の端々にウルイァという人への嫌悪が混ざっている気がした。
「わかったけど、俺たちはその近くの街まで行くのか?」
「そうだな。ブリュア殿もすぐは合流できなさそうでな。バカに先に会わせた方がいいとブリュア殿に言われた」
もうウルイァをバカとしか言わなくなっている。
「もう夕方だ。出発は明日にしようと思っているが、良いか?」
「ああ。大丈夫」
俺の言葉に、ノジャも頷いた。
俺たちはギルドの部屋の一室を借りて、休むことにした。
火星での料理はとても質素だった。リンからもらった時のパンよりも硬いパンに、野菜が少しだけ入ったスープだ。
慎助の言い分だと、火星のギルドは見入りが少なくて貧乏だそうだ。火星のギルドは大変な割に、収入が少ないから行きたがる人はいないらしい。慎助は火星の出身だから、よく火星で仕事をしていると言っていた。
俺たちは夕食を取り終えて……そういえば昼食をとっていなかったので夕食だけでは物足りなかった。とりあえず、明日に備えて寝ることになった。
俺とノジャは別々の部屋だった。俺は眠れなくて、部屋から出て外の空気を吸いに行くことにした。
ギルドの受付にはもう誰もいなく、扉に鍵がかかってなかったので、外には簡単に出れた。不用心すぎないかとは思ったが、ラッキーではあった。
外に出ると、秋だからなのか少し肌寒かった。薄めの上着だと、長時間いると風邪を引きそうだ。
俺は少しだけ空を眺めてから、帰ろうと考えていた。
ギルドの外壁にもたれて、空を見た。星々が輝いている。月は……ないよな。火星だし。
「その格好、寒くない?」
不意に声をかけられて、声の方を向いた。
腰までの長さの銀髪で前髪パッツンで、腕の袖が異常に長い。女性か?
「今、僕のこと女だと思ったでしょ」
「え! いや、そんな事は」
「僕は男だからね。それより、その格好は寒いでしょ。上着を貸そうか?」
「大丈夫。そろそろ戻るし」
「そうか。僕はクキヤ。君の名前は?」
「伊吹。よろしく……」
俺は突然話しかけてきたクキヤを信用して良いのか悩んだ。寒そうだと思って、気にかけて話かけてくれたのだろうけど。
「警戒しなくて良いよ。信用できる言葉じゃないかもしれないけれど、このギルドに知り合いがいるし」
「そうなのか。ごめん。警戒していた」
「知らない人に話しかけられたら、そうなるでしょ」
それはそうだ。クキヤとは気兼ねなく話せる気がした。とりあえずは、信用することにした。
「クキヤは夜中に何をしているんだ?」
「僕は街の夜の外が好きだから。いつもは賑やかなのに、夜になると静かになるでしょ。それが良いんだよね」
わかる気がする。俺も今の街の状態を、よく感じている。
「俺もそうかも」
「わかってくれる?」
クキヤは嬉しそうに言った。
「総司さんに言っても、わかってくれないんだよ! あ、総司さんっていうのがギルドの知り合いね」
「へー。いつもは静かじゃない所が、静かなのが良いのにな」
「だよね! 伊吹はわかっているなあ。僕たち、友だちになれそうじゃない?」
「そうかもな」
「そうでしょ! 伊吹はもう友だちね」
クキヤは嬉しそうに手を上げた。長い袖が垂れ下がっている。
俺はその時、くしゃみをした。
「う……そろそろ部屋に戻った方がいいかもな」
「そうだね。じゃあ、またね」
「ああ」
俺はクキヤと別れて、ギルドの中へと戻った。
「お前たちが伊吹とノジャか?」
「そうだけど」
「俺は慎助だ。ブリュア殿の代わりに火星での護衛を務めることになった。ウルイァのバカが近くの街にいるみたいで、そいつに引き渡すまでは一緒にいる」
「ウルイァ?」
「ブリュア殿と一緒に護衛をする予定のバカだ」
言葉の端々にウルイァという人への嫌悪が混ざっている気がした。
「わかったけど、俺たちはその近くの街まで行くのか?」
「そうだな。ブリュア殿もすぐは合流できなさそうでな。バカに先に会わせた方がいいとブリュア殿に言われた」
もうウルイァをバカとしか言わなくなっている。
「もう夕方だ。出発は明日にしようと思っているが、良いか?」
「ああ。大丈夫」
俺の言葉に、ノジャも頷いた。
俺たちはギルドの部屋の一室を借りて、休むことにした。
火星での料理はとても質素だった。リンからもらった時のパンよりも硬いパンに、野菜が少しだけ入ったスープだ。
慎助の言い分だと、火星のギルドは見入りが少なくて貧乏だそうだ。火星のギルドは大変な割に、収入が少ないから行きたがる人はいないらしい。慎助は火星の出身だから、よく火星で仕事をしていると言っていた。
俺たちは夕食を取り終えて……そういえば昼食をとっていなかったので夕食だけでは物足りなかった。とりあえず、明日に備えて寝ることになった。
俺とノジャは別々の部屋だった。俺は眠れなくて、部屋から出て外の空気を吸いに行くことにした。
ギルドの受付にはもう誰もいなく、扉に鍵がかかってなかったので、外には簡単に出れた。不用心すぎないかとは思ったが、ラッキーではあった。
外に出ると、秋だからなのか少し肌寒かった。薄めの上着だと、長時間いると風邪を引きそうだ。
俺は少しだけ空を眺めてから、帰ろうと考えていた。
ギルドの外壁にもたれて、空を見た。星々が輝いている。月は……ないよな。火星だし。
「その格好、寒くない?」
不意に声をかけられて、声の方を向いた。
腰までの長さの銀髪で前髪パッツンで、腕の袖が異常に長い。女性か?
「今、僕のこと女だと思ったでしょ」
「え! いや、そんな事は」
「僕は男だからね。それより、その格好は寒いでしょ。上着を貸そうか?」
「大丈夫。そろそろ戻るし」
「そうか。僕はクキヤ。君の名前は?」
「伊吹。よろしく……」
俺は突然話しかけてきたクキヤを信用して良いのか悩んだ。寒そうだと思って、気にかけて話かけてくれたのだろうけど。
「警戒しなくて良いよ。信用できる言葉じゃないかもしれないけれど、このギルドに知り合いがいるし」
「そうなのか。ごめん。警戒していた」
「知らない人に話しかけられたら、そうなるでしょ」
それはそうだ。クキヤとは気兼ねなく話せる気がした。とりあえずは、信用することにした。
「クキヤは夜中に何をしているんだ?」
「僕は街の夜の外が好きだから。いつもは賑やかなのに、夜になると静かになるでしょ。それが良いんだよね」
わかる気がする。俺も今の街の状態を、よく感じている。
「俺もそうかも」
「わかってくれる?」
クキヤは嬉しそうに言った。
「総司さんに言っても、わかってくれないんだよ! あ、総司さんっていうのがギルドの知り合いね」
「へー。いつもは静かじゃない所が、静かなのが良いのにな」
「だよね! 伊吹はわかっているなあ。僕たち、友だちになれそうじゃない?」
「そうかもな」
「そうでしょ! 伊吹はもう友だちね」
クキヤは嬉しそうに手を上げた。長い袖が垂れ下がっている。
俺はその時、くしゃみをした。
「う……そろそろ部屋に戻った方がいいかもな」
「そうだね。じゃあ、またね」
「ああ」
俺はクキヤと別れて、ギルドの中へと戻った。
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