【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜

夜須 香夜(やす かや)

文字の大きさ
上 下
12 / 77

第12話 リチャイナ、提案する

しおりを挟む
 火の人はさらに燃え盛った。
 さすがに、この炎の量には耐えられないのか、青年は火の人から離れた。
「ぐっ……。ヨミに報告しないと」
 火の人はそう言って、飛び上がり、火事のあった方向へと行ってしまった。
 青年はそれを見送った後、俺たちの方を見た。
「大丈夫かな?」
「はい。大丈夫です」
「杏奈に言われて、僕と同じくらいの背の男の子と小さい女の子がいたら守ってあげてって言われたんだよね。僕はリチャイナ」
「田仲伊吹です」
 リチャイナは優しく笑い、手を出したので、俺はそれに応えて握手をした。
「同い年くらいだろうし、敬語はいいよ~。とりあえず、拠点で待ってよ」
 火の人と対峙していた時と違い、のんびりとした口調で、落ち着く声だった。
 俺たちはリチャイナにうながされて、拠点の中に入った。さっきの拠点と内部はほとんど変わらなかった。
 中に何人かの人がいて、リチャイナに話しかけていた。
「火事が落ち着くまで、部屋で待っていようか~」
 俺たちはリチャイナに二階の個室へと案内された。
 個室はベッドが二つ、クローゼットがあり、トイレも付いているようだ。
 椅子が二つ、テーブルが一つある。ノジャはベッドに座ったので、俺とリチャイナは椅子に座った。
 特にすることもないので、リチャイナに異世界から来たことについて話すことにした。

「僕は何度か異世界に行ったことがあるけれど、伊吹の世界は知らないなあ」
「リチャイナもか。俺がいた世界はどこにあるんだろう」
「大丈夫。杏奈が何とかしてくれるよ~」
 リチャイナは笑顔でそう言った。
「杏奈は困っている人を放っておけないから。そして、それを解決できなかったことはないし、大丈夫だよ」
「……うん」
 俺はリチャイナのその言葉を素直に受け取ることにした。いつまでも現実逃避もネガティブもしていられない。少しでもポジティブに解決方法を探さないとな。
 俺はベッドに座り込んで項垂れているノジャを見た。
 さっきの火の人が来てから、この調子だ。ノジャを狙ってるみたいだったし。
「ノジャ。さっきの人は知り合いなのか?」
「知らん奴じゃ。でも」
 ノジャは言い淀んだ。
「言いたくないなら言わなくても良いよ」
「……ありがとうなのじゃ。でも、言うのじゃ」
 ノジャは立ち上がり、俺とリチャイナの傍に来た。
「たぶん、あれはわしを狙う奴らの一人なのじゃ。わしは追われていての。これから、わしといれば巻き込まれるのじゃ」
 ノジャは息を吐いた。
「伊吹。異世界に帰る手伝いはしてやれんのじゃ。一緒にいれば怪我をしてしまうかもしれん」
「ノジャ……」
 その時、リチャイナがパンと手を叩いた。
「なんじゃ?」
「良いこと思いついた~」
「良いこと?」
「何人か護衛を付ければ良いんだよ~。僕は仕事が立て込んでるから無理だけど、その辺りにいるギルドの仲間に頼めばいいんだよ。伊吹を異世界に返すために、ノジャを守るために」
「なんで、俺たちのためにそこまで……」
「困った時は助け合うのが人だし。もし気が引けるなら、伊吹が自分の世界に帰れたら、伊吹の世界の美味しいご飯屋さんを紹介してよ。皆で行こ~」
 リチャイナはにこにこしながら、楽しそうに言った。
 そんな事で良いのか? そっちの負担が大きい気がするけど、俺一人では対処できないし、今は頼るしかないか。
「僕たちのギルドって、幹部の何人かは世界を何回か救っているから大丈夫だよ」
「え? 世界を何回か救っている?」
 何を言っているんだ?
「うん。僕も杏奈もリンも」
 リチャイナは笑顔を崩さない。まるで、近所の人の悩み事を解決しただけのような言い方だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...