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第12話 リチャイナ、提案する
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火の人はさらに燃え盛った。
さすがに、この炎の量には耐えられないのか、青年は火の人から離れた。
「ぐっ……。ヨミに報告しないと」
火の人はそう言って、飛び上がり、火事のあった方向へと行ってしまった。
青年はそれを見送った後、俺たちの方を見た。
「大丈夫かな?」
「はい。大丈夫です」
「杏奈に言われて、僕と同じくらいの背の男の子と小さい女の子がいたら守ってあげてって言われたんだよね。僕はリチャイナ」
「田仲伊吹です」
リチャイナは優しく笑い、手を出したので、俺はそれに応えて握手をした。
「同い年くらいだろうし、敬語はいいよ~。とりあえず、拠点で待ってよ」
火の人と対峙していた時と違い、のんびりとした口調で、落ち着く声だった。
俺たちはリチャイナにうながされて、拠点の中に入った。さっきの拠点と内部はほとんど変わらなかった。
中に何人かの人がいて、リチャイナに話しかけていた。
「火事が落ち着くまで、部屋で待っていようか~」
俺たちはリチャイナに二階の個室へと案内された。
個室はベッドが二つ、クローゼットがあり、トイレも付いているようだ。
椅子が二つ、テーブルが一つある。ノジャはベッドに座ったので、俺とリチャイナは椅子に座った。
特にすることもないので、リチャイナに異世界から来たことについて話すことにした。
「僕は何度か異世界に行ったことがあるけれど、伊吹の世界は知らないなあ」
「リチャイナもか。俺がいた世界はどこにあるんだろう」
「大丈夫。杏奈が何とかしてくれるよ~」
リチャイナは笑顔でそう言った。
「杏奈は困っている人を放っておけないから。そして、それを解決できなかったことはないし、大丈夫だよ」
「……うん」
俺はリチャイナのその言葉を素直に受け取ることにした。いつまでも現実逃避もネガティブもしていられない。少しでもポジティブに解決方法を探さないとな。
俺はベッドに座り込んで項垂れているノジャを見た。
さっきの火の人が来てから、この調子だ。ノジャを狙ってるみたいだったし。
「ノジャ。さっきの人は知り合いなのか?」
「知らん奴じゃ。でも」
ノジャは言い淀んだ。
「言いたくないなら言わなくても良いよ」
「……ありがとうなのじゃ。でも、言うのじゃ」
ノジャは立ち上がり、俺とリチャイナの傍に来た。
「たぶん、あれはわしを狙う奴らの一人なのじゃ。わしは追われていての。これから、わしといれば巻き込まれるのじゃ」
ノジャは息を吐いた。
「伊吹。異世界に帰る手伝いはしてやれんのじゃ。一緒にいれば怪我をしてしまうかもしれん」
「ノジャ……」
その時、リチャイナがパンと手を叩いた。
「なんじゃ?」
「良いこと思いついた~」
「良いこと?」
「何人か護衛を付ければ良いんだよ~。僕は仕事が立て込んでるから無理だけど、その辺りにいるギルドの仲間に頼めばいいんだよ。伊吹を異世界に返すために、ノジャを守るために」
「なんで、俺たちのためにそこまで……」
「困った時は助け合うのが人だし。もし気が引けるなら、伊吹が自分の世界に帰れたら、伊吹の世界の美味しいご飯屋さんを紹介してよ。皆で行こ~」
リチャイナはにこにこしながら、楽しそうに言った。
そんな事で良いのか? そっちの負担が大きい気がするけど、俺一人では対処できないし、今は頼るしかないか。
「僕たちのギルドって、幹部の何人かは世界を何回か救っているから大丈夫だよ」
「え? 世界を何回か救っている?」
何を言っているんだ?
「うん。僕も杏奈もリンも」
リチャイナは笑顔を崩さない。まるで、近所の人の悩み事を解決しただけのような言い方だ。
さすがに、この炎の量には耐えられないのか、青年は火の人から離れた。
「ぐっ……。ヨミに報告しないと」
火の人はそう言って、飛び上がり、火事のあった方向へと行ってしまった。
青年はそれを見送った後、俺たちの方を見た。
「大丈夫かな?」
「はい。大丈夫です」
「杏奈に言われて、僕と同じくらいの背の男の子と小さい女の子がいたら守ってあげてって言われたんだよね。僕はリチャイナ」
「田仲伊吹です」
リチャイナは優しく笑い、手を出したので、俺はそれに応えて握手をした。
「同い年くらいだろうし、敬語はいいよ~。とりあえず、拠点で待ってよ」
火の人と対峙していた時と違い、のんびりとした口調で、落ち着く声だった。
俺たちはリチャイナにうながされて、拠点の中に入った。さっきの拠点と内部はほとんど変わらなかった。
中に何人かの人がいて、リチャイナに話しかけていた。
「火事が落ち着くまで、部屋で待っていようか~」
俺たちはリチャイナに二階の個室へと案内された。
個室はベッドが二つ、クローゼットがあり、トイレも付いているようだ。
椅子が二つ、テーブルが一つある。ノジャはベッドに座ったので、俺とリチャイナは椅子に座った。
特にすることもないので、リチャイナに異世界から来たことについて話すことにした。
「僕は何度か異世界に行ったことがあるけれど、伊吹の世界は知らないなあ」
「リチャイナもか。俺がいた世界はどこにあるんだろう」
「大丈夫。杏奈が何とかしてくれるよ~」
リチャイナは笑顔でそう言った。
「杏奈は困っている人を放っておけないから。そして、それを解決できなかったことはないし、大丈夫だよ」
「……うん」
俺はリチャイナのその言葉を素直に受け取ることにした。いつまでも現実逃避もネガティブもしていられない。少しでもポジティブに解決方法を探さないとな。
俺はベッドに座り込んで項垂れているノジャを見た。
さっきの火の人が来てから、この調子だ。ノジャを狙ってるみたいだったし。
「ノジャ。さっきの人は知り合いなのか?」
「知らん奴じゃ。でも」
ノジャは言い淀んだ。
「言いたくないなら言わなくても良いよ」
「……ありがとうなのじゃ。でも、言うのじゃ」
ノジャは立ち上がり、俺とリチャイナの傍に来た。
「たぶん、あれはわしを狙う奴らの一人なのじゃ。わしは追われていての。これから、わしといれば巻き込まれるのじゃ」
ノジャは息を吐いた。
「伊吹。異世界に帰る手伝いはしてやれんのじゃ。一緒にいれば怪我をしてしまうかもしれん」
「ノジャ……」
その時、リチャイナがパンと手を叩いた。
「なんじゃ?」
「良いこと思いついた~」
「良いこと?」
「何人か護衛を付ければ良いんだよ~。僕は仕事が立て込んでるから無理だけど、その辺りにいるギルドの仲間に頼めばいいんだよ。伊吹を異世界に返すために、ノジャを守るために」
「なんで、俺たちのためにそこまで……」
「困った時は助け合うのが人だし。もし気が引けるなら、伊吹が自分の世界に帰れたら、伊吹の世界の美味しいご飯屋さんを紹介してよ。皆で行こ~」
リチャイナはにこにこしながら、楽しそうに言った。
そんな事で良いのか? そっちの負担が大きい気がするけど、俺一人では対処できないし、今は頼るしかないか。
「僕たちのギルドって、幹部の何人かは世界を何回か救っているから大丈夫だよ」
「え? 世界を何回か救っている?」
何を言っているんだ?
「うん。僕も杏奈もリンも」
リチャイナは笑顔を崩さない。まるで、近所の人の悩み事を解決しただけのような言い方だ。
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