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第二章
36話
しおりを挟む「君がコテージに入り、縄を解いて貰ったらすぐに魔法石で合図してくれ。合図の確認後私達もすぐにワープする。子息の無事は君にかかってる。頼んだぞ」
「はい!」
公爵の治癒魔法がかかりティエラは令嬢に傷を負わせた。
「ぅグッ…すごい…痛みを感じないわ……。」
「私たちもついていけたらいいんだけど…精霊の気配も感じ取ってるようだから…令嬢、気をつけてね。そっちに行ったらすぐに公爵様が治してくれるわ"」
「いや、僕が空から様子を見に行くよ。ワープだと距離が近いからバレるけどボクのスピードで向かば空から様子は伺えるだろ"」
「ウィン。頼んだよ。」
レビア令嬢はそっと頷き折れた腕を支えながらなんとか走り宿屋を出てお父様の魔法石でさっき暴れ回った馬車の辺りまでワープした。
ウィンもそれに続き飛んでいく。
スパイ用の魔法石で中の映像を見れたらいいが忍ばせたままだから何も見えずウィンと令嬢からの連絡を待つしかない状況だった。
もし…もしレビア嬢が結界に向かい中へ入れたとし、出迎えるのがあの疑り深いラベルであればまだロアンには手を出していないだろう。
だがそれがメイシーであれば、既にロアンは……。
ここにいる者はまだ何も起こって居ないことを願うしか無かった。
「公爵様、そろそろ寝室で眠っているナーシャを起こしてきます。」
「ああ。そうだな。頼むよ」
コンコン
「ナーシャ…」
「ん…んん…ルーク!帰ってたのね」
「ああ。今レビア令嬢とウィンが結界の元へ向かったよ」
「そんなに私眠ってたの!?」
「いや、令嬢が公爵から魔法石をスムーズに受け取ってくれたおかげで帰ってくるのも早かったんだ。」
「そう…」
「令嬢から合図が来たらすぐにコテージに飛ぶよ。でもナーシャ…呪術師の力は相当なものだからと言ってナーシャは無理をしないで欲しい。」
「……」
「ナーシャに何かあったら僕はもう生きていけない。それくらい君が大切だから…」
「ルーク…。」
ルークはそっとナーシャを抱き寄せる。
「まだ婚約破棄していない令嬢にこれ以上は出来ないのは分かっているが今だけはこうさせてほしい。」
私は応えるようにそっと腕を回した。
「ルーク…少し座って。」
「ん?」
ルークはナーシャを抱き寄せながらそのままソファに座った。
そうじゃあないんだけど…私は抱きながらじゃないんだけどと少し恥ずかしくなり顔を赤らめながらそっとルークのおでこにキスをした。
「ナーシャ…」
「ふふ。婚約の身の私がこんなことしちゃいけないわね。でもルーク。ルークも…私達みんな無事にロアンを助け出してメイシーとラベルを捕まえよ」
「ああ。そうだな。何があってもナーシャだけは守るからね」
「ありがとう」
「そろそろ公爵様も心配するだろうから部屋へ戻ろう」
「ふふ。そうね。」
ガチャ
「まだ令嬢からの合図は来てない。奴ら令嬢のことももう切り捨てたかもしれないな…。」
「そう…でも令嬢にかかってるわ。どうか切り抜けてくれることを願うしか…」
お義父様は頷く。
「令嬢がメイシーと話してて結界に入れてもらったみたいだよ。」
ウィンが帰ってきた。
「出たのはメイシーだったか…」
「ん?どういうことです公爵様」
「いや。なんでもない。すぐに令嬢からの合図も来るだろう」
「そうですね。」
「何かあれば僕の魔法石を壊そう。だから公爵様が魔法石を持っていてください。」
「分かった。」
"ソラン!私たちは呪術師に専念しよう"
"もちろんだ。ティエラ、ウィン。呪術師は3人で何とかしよう"
"よーし。久しぶりに暴れるぞー!"
カチカチ!
「令嬢からの合図だ!行こう!2人とも、体力回復は僕に任せてくれ。だが…無茶だけはしないように」
「お父様。ありがとう」
「感謝します公爵様。」
___________
スっっ
「ラベル先生!メイシー!あなた達が何をしようとしてるかもう分かってるわよ!!」
チラッと令嬢を見ると令嬢は嘆きながらしゃがみこんでいた。
「令嬢…ロアンは…」ぱっと周りを見るとロアンは診察台のような台の上で寝ているように見えたけれど何が起きたかまだ分からない。…間に合わなかったようだった…。
お義父様がそっと令嬢の手当をする。
「なんて事をっっ」
「チッ」
後ろを向いていたラベルは机に向かっていたが手を止め私たちに向かって術を唱えだす。その机にはロアンがくり抜かれたであろう目が2つ置いてあった。
「ソラン…ティエラ!」
"そうはさせるか!"
ソランがラベルに向かって勢いよく水をかけラベルを囲う。
"ソラン。命中率上がったんじゃない?"そこへティエラが呪術師の足に向かって岩をはめ込みツルで腕を縛り上げた。
「ウィン!」
"ソランの水玉に大波を加えてやる!"
水玉の中で波が加えられ呪術師のフードが外れラベル先生の姿が鮮明に映る。
「なっなんでナーシャお嬢様がここにおられるんですか?」
メイシーが私に向かって歩いてきた。
「なんでですって。あなた達が何をしようとしてるか分かってるのよ!!」
「「ナーシャ(嬢)危ない!」」
ロアンの元からレビアとお義父様が叫ぶ。
「!?」
呪術師のことを見えなかったがあの水中で呪文を唱えることを辞めなかったようだ。
大地震が起きたかのように地面が揺れだし剣が私に向かって飛んでくる。
"大地精霊にそんな戦い方する?"
揺れと反対にコテージが揺れだす。
剣の方向が代わりメイシーの方へ剣が進む。
「「メイシー!!」 」
レビアはメイシーに向かって飛び出した。
「「""令嬢!!"""」」
ティエラは揺れの方向を咄嗟に変わるも剣はレビアの左肩へと刺さった。
私とお義父様は令嬢に駆け寄る。
「レビア令嬢!!大丈夫!?」
「メイシーには色々聞かないといけないでしょう…?」
「痛み止めの効果で痛みは無いだろうがまだ喋ってはいけない。」
お義父様がそっと治癒魔法をかけながら剣をゆっくり抜くと、
「出血は凄かったために貧血状態で今は話すのもやっとだろう。これは貧血に聞く薬だが回復に10分くらいはかかるだろう…」
私はすかさずレビアを括っていた縄でメイシーを縛る。
"まずい!呪術師の力が強まっている。ウィン!時間を稼いでくれ!"
"オーケー。ルークそろそろやる?"
"え、なんの話しよ!"
「ああ。やってやろう呪術師が出る!!ウィン、急げ!僕を飛ばしてくれ!」
ルークは剣を構えウィンに叫ぶ。
呪術師は何かを唱えだした。
"契約者との連携プレイだ!いくぞ!!"
ウィンは呪術師を風で覆いながらルークが呪術師に向かって飛ぶ。
ドス!!
呪術師の脇腹辺りに剣が刺さる。
"これで終わり?"
ドクンッ…
「あ…ああ」
"まて!ウィン!ルークの様子がおかしい"
「幻術だ!ルークに幻術がかかってる!!」
「ナーシャ…ナーシャ…ごめん…僕はナーシャになんてことを」
「……ルー…ク…」
どうしよう…ルークが刺したのは私じゃないのに声が出ない…。
"ティエラ…痛くて声が出ないの…だけどあのままだとルークに何が起こるか分からないわお願い…ルークを…"
"でも今力を使えばナーシャも危険よ。ルークに幻術を見せてるだけじゃなくてナーシャにも身代わりになる術も使っているんだわ"
呪術師に刺さった剣を抜きルークは自分の首へ剣を当てる。
"お願い!!"
私は目をぎゅっと閉じ怪我とともに激減したリーツを高めた。
ズキンッ…
ティエラがルークをツルで縛ると共に負担がかかり胸に痛みが入る。
"ナーシャ!!"
「大丈夫!ナーシャには僕がいる。ナーシャ大丈夫だお腹に傷は無いようだな。ならラベルの傷をなおす他ないのか。」
「ダメ……まずは…ラベル先生を捕えないと…。」
「そんな力もうナーシャには残っていないだろう!!」
「お義父…様…。体力だけ…おねが…い」
ゴホッゴホッ
私は口から血を吐き出した。
「"""ナーシャ!!"""」
まずい…けど急がないと今逃したらラベル先生を倒せない。
"ティエラ…お願い。捕まえるには今しかないの"
「"分かったやるわよ。でもナーシャ死んだら許さな「…悪いですが術の準備が終わりました。もうあなたに精霊はだせないでしょう。」
<スペラケーション>
「なっ…」
ティエラの一言にお義父様は急いで私の体力を回復してくれたようだったがティエラの技は間に合うことなくティエラ、ソラン、ウィンは消えてしまった。
ティエラ?ソラン?テミニエル様デムルメをかけてもらったって…嘘だったの!?
「まずい。この状態ではラベルが回復してしまう」
ティエラ達のツルや岩も消えていく…。
「レビア嬢!!近づいてはいけない!!」
「グフッ」
レビア嬢はラベルに1つの薬品を投げつけたようだ…。
「ウッ…」
私は痛みを感じ気を失うようにスっと目を閉じた…。
あれ?ラベル先生の深手を私も負ったはずなのに何も感じない…。
この光は…ティエラとソランの幻覚かと思う程の消えかかる細い光に向かいそっと歩いた。
リーツが…ツボは溢れているがベリストのヒビが広がりリーツがたまらない状態にまでなっていた。
壺以上のリーツが溜まらないわ…。
このままじゃあ2人ともう一度契約を結ぶことすら難しい。
私は細い光を合わせ陣を書く。
もうこれに賭けるしかない…お願い!!
パァァ…
リーツが溢れ出すと共にベリストの大きなヒビが広がってゆく。
パリーン
お願い…!!
割れるだけじゃあダメなの。
神様…お願い…お願いします!!
ドボドボドボドボ
ベリストが溢れ帰る。
良かっ…た。もうティエラとソランに会えないかと思った…。
そうだ…早く目を覚まさないとラベル先生が…。
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