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第二章
30話
しおりを挟むお義父様と話し合った後、ジェノシーに向かいお義父様はルークと少し挨拶を交わし、私はルークと一緒にリーツを高めておけばいいよ。とお義父様だけで栄養失調の人や病気の方を診に回ってくれることになった。
お義父様ったらルークに…
「君はエンドラ公爵のところのルークだね。ナーシャは婚約者が居る身だ。だから今はまだ目立つようなことは避けて欲しい。」だなんて…
ルークも当たり前のように真剣な顔で
「もちろんです。大切なご令嬢の迷惑にならないよう気をつけます。僕にとって今はまだ大切な幼なじみですから…。」って私を置いてけぼりに…
もちろん…私の気持ちもルークに向いてるのは確かだけれど改めてお義父様とルークが話すと恥ずかしくて仕方ないわ。それに、"今はまだ"って2人して強調しちゃって。
「ナーシャ、早くリーツを高めよう。陣の書き方はもう覚えたんだね。」
と何事も無かったように普通に話しかけるルークに少しムカつく。私だけがこんなに照れちゃってルークったら女性慣れしてるのかしら。
でも確かにこの容姿なら…有り得なくは無いのかも…?
ルークとリーツを高め合い、午後になってお義父様が患者さん達を診終わり一緒に帰ろうとした。
「ナーシャ、君は数日ここにいてもいいんだよ?そのために部屋を借りてるんじゃないのかい?」
「え、でもお母様にバレたら…。それにこの部屋を借りたのは…」
「いや、ナーシャが帰りたいならもちろん一緒に帰ろう。だけど今のナーシャはお母様と少し距離を取りたいんじゃないかと思ってね。レアロナの気持ちを大事にするナーシャの気持ちも分かるがナーシャはしんどくないかい」
「うん…本当は今は少しお母様と距離を置きたい。でも…」
「ナーシャの気持ちが優先だよ。親のために生きてるんじゃないから。君たちは1度物理的に離れた方がいいんじゃないかと思ってる。
それにお母様にはバレてないが毎日バタバタしているだろう?僕がいるとはいえナーシャも体を壊してしまうだろう。」
正直、お母様と1度離れて過ごしたいとは思っていたけどお母様が今少し歪んで見えるからと言って子供の頃、私を大切に育ててくれて楽しかった日々、優しくて純粋なお母様の笑顔などを思い返すと自分に罪悪感が大きくて潰れそうになっている自分がいたため、少し離れた方がいいと言ってくれるお義父様の言葉で心が少し軽くなった気がしそっと頷いた。
「あ、もちろんだがここにメイドは送らせてもらうよ。大袈裟かもしれないがやっぱり娘を1人でここにって言うのは心配だからねルークが居るとはいえそれはそれである意味心配だから」
「…ありがとうお義父様」
「いや、こんなことしか出来なくてすまないね。本当は私がレアロナにもっと向き合うべきなんだが」
「いいえ。そんなことないわ。私はお義父様がお母様にいつも向き合ってるのを見てきたからそんなこと言わないで。」
「はは。娘にそんなこと言って貰えるなんて嬉しい限りだよ。じゃあ私はそろそろ帰ろう。あまり無理しないように。何かあったら直ぐにラミフォンで連絡するんだよ。」
「ええ。今日はありがとう」
______________________
それからはコツコツ毎日ルークと一緒にリーツを高めた。
「ナーシャ、僕とウィンの陣にティエラとソランの光を加えて見てくれない?」
「2人の光を?」
言われたようにルークの陣に光を加えてみると茶色、緑、青の光が混ざりながらいつもよりも綺麗に光出した。
「やっぱり。1人ずつリーツを高めるよりこっちの方が効率が良さそうだ。3人の力の差がそんなに大きくないから一緒に出来るんじゃないかって思ってたんだ。ナーシャ、手を出して」
そっと手を出すとルークがで握る。
「さ、目を閉じてリーツを高めよう」
「ええ」
今までにないくらいにリーツが溢れ出し壺を囲んでいた透明の箱が割れそうになる。
不安になりバッと目を開いた。
目の前ではまだルークが目を閉じリーツを高めている。
どうして割れそうになったんだろう。
昨日は箱がどんどん大きくなったはずなのに。
"ティエラ…"
"どうしたの?ナーシャ、顔が真っ青よ…何があった?"
"あのね…リーツの壺の周りに透明の箱があるの知ってる?"
"ええ。契約者のリーツが壺から溢れた上級者には壺がベリストで囲われてるわね"
"そのベリストが…割れたらどうなるの?"
"んー割れたら大概の人は溢れなくなったって聞いたけど?でも1人だけ…今の精霊界をまとめてくれている元人間のルーシー様はベリストが割れた瞬間にリーツの湖ができたらしいけど。"
"……どうしようティエラ…。私目を閉じて祈った瞬間にベリストが割れそうになったの"
"嘘!?リーツが溢れたのは私も感じたけどそんなに一瞬で!?"
"うん…昨日はベリストが大きくなって安心してたんたけど溢れそうになった瞬間にピキってヒビが入っちゃった…"
"そんな一瞬で…もしかして湖が出来るんじゃないの!?"
"分からないわ…リーツの湖ができた人は過去にルーシー様しかいないんでしょう?もし湖が出来なかったら…私、ティエラとソランとの契約は破棄されちゃうの?"
"どうだろう?ナーシャの壺自体が大きいようから大丈夫だとは思うけど"
"そっか…でもどうしようこれが割れたら2人とも力を思う存分に使えないのよね"
「どうしたんだいナーシャ。急に辞めちゃったみたいだけど」
「ルーク…。ベリストが割れそうになっちゃったの。それで焦って…」
「割れそうに!?」
「うん…それで不安になってティエラにベリストが割れたらどうなるか聞いてたの。割れたらそのまま契約破棄になっちゃうかもしれないけど壺はあるから大丈夫だろうって」
「そっか…それならこれ以上リーツを溢れさせると危険な可能性が高いのか。ごめん…僕が一緒にやろうと言ったばかりに」
「ううん。ルークは悪くないわ。ほんとにすごい勢いでリーツが溢れ出したもの!これだけあればソランもティエラも十分に力が使えるわ!!」
「…何かあったらすぐに教えて欲しい。ナーシャが心配だから」
「ふふ。ありがとう」
「とりあえず部屋へ帰ろう。ベリストが割れそうになった時体に負担はなかった?」
「大丈夫。割れそうになった時は不安でドキッとしちゃったけど負担はなかったわ」
「そうか。よかった。部屋に戻ってスープでも飲もう」
うちへ帰るとラミフォンに着信が沢山来ていた。
お母様がずらり……
帰らなくなって1週間ほど経つからさすがに心配かけすぎちゃったかな…。
先にお義父様に伝えるべきかしら……
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