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第一章
12話
しおりを挟む「おはようございます。お嬢様。今日の夕方頃シャンドラ様がお帰りになるようです。あと先日のお茶会で知り合われたアイリス・バルセ侯爵令嬢が急ですがナーシャ様にお会いしたいとのことで…どうされますか?」
今まで誰とも関わることも出来なかったし、私にとっては何ともないけどこの間のお茶会で知り合ったとわいえ親しい中でもない目上に対する急な訪問は相手の失礼にあたること。
アイリスは知っているはずなのにどうしたのかしら……。
まあ……メイシーはこの間のお茶会の時にアイリスと話してたことも見てたし、シャンドラに言われても親しい仲になったといくらでも言えるし……
「部屋に呼んでちょうだい」
「かしこまりました」
「ナーシャ様!!急な訪問で…御無礼申し訳ございません……」
「いいえ、この間のお茶会は楽しくお話出来て嬉しかったわ。それで今日はどうしたの?」
「…………お兄様が…お兄様がナーシャ様に会いに行くって聞かないんです。…それで……」
「アイリスにはお兄様がいたの?」
「ええ…ロアンという…ほらあのこの間わたしを迎えに一緒に来ていたあの黒髪の…」
アイリスのお兄様だったんだ。てっきりレディーファーストな優しい婚約者様かと羨ましく思っていた自分に少し恥ずかしくなる。
「それで、そのお兄様がなぜ私に会いに?」
「それが… ナーシャ様とお話したいだけで…発表前の婚約者がいると言っても聞かなくて…その……お父様の立場的にもそれはやめて欲しいって…部屋に閉じ込められてしまったんです」
アイリスのお兄様を想う気持ちがヒシヒシと伝わる。
もし可愛いレティシャがに閉じ込められたら私もきっと耐えられない。
けれどたしかに立場を考えると理由もなく会いに行きたい。だけでは公爵同士の婚約発表前の女性に会いにくるには問題だろう…
「それで…私はどうすればいいのかしら…」
「わたしは…あんな勢いに任せて言いたいことを言うお兄様を見るのは初めてなんです。いつもはもっと後先を考える理性的で優しいお兄さまで…お父様に反抗なんてすることも無くて…だから失礼を承知ですが…どうかナーシャ様から会って頂けないかと…」
「……それは牢に会いにいくのかしら」
「いえ…そんなお嬢様のご負担になるような事はありません近いうちに私のお茶会へお越しいただければその時に隙を見てロアンが話しかけるかと思います」
「なるほどね。だけど…私はあなたのお兄様と面識なんてなかったはずなけど一体なんの用なのかしら…」
「………………………?いやなんでもないです。こんな急なお話を聞き入れて頂きありがとうございます。お父様にバレる訳にも行かないので…こんな頼み事をするだけで本当失礼を承知ですが…」
「大丈夫よ。さっバレないうちに急いで帰って」
なんて言ったのか上手く聞き取れなかったけどお兄様のために体を張ってここまでこっそり来るなんて素敵な兄妹だわ。
コンコン「お嬢様、バルセご令嬢はどんな御用だったんですか?」
私は下手に返事するのも面倒で苦笑いして誤魔化した
メイシーは機嫌が良さそうに入ってくると「お嬢様に突撃訪問だなんて失礼なご令嬢ですよね。身分も弁えずに。お嬢様もあんなご令嬢お断りしちゃっていいんですよ~」
何も分かっていないメイシーはひとりで永遠に話続けた。
なんとも言えず紅茶を飲んで誤魔化そうとコップを口に付けた瞬間…
"メイシー…あなたこそ身分を弁えてないんじゃあないかしら。"
「ブフッ」
「まぁお嬢様!?大丈夫ですか?いまタオルをお持ちしますわ」
"もう!ティエラったら!紅茶吹き出しちゃったじゃない"
"だって本当のことじゃない"
"一言言っちゃえばいいのよ♪案外スッキリするわよ?"
"たしかに…スッキリはするだろうけど…"
"はいはい。メイシーがなんでナーシャに嫌がらせをするのか理由がまだ分からないもんね~"
"分かってて意地悪しないでよぉ"
"意地悪じゃないわ。ただたまにはガツンと言ってやんなさいってことよ。"
ティエラにそう言われるとたしかに私は我慢しすぎなのかしら…と思い直す自分がいる。
ガツンと言っても言わないでも結局酷い目に合うのなら1度立ち向かって向き合うのもいいのかな…。
いつも通りお母さまの元へ行こうとすると
お母さまは嬉しそうにレティシャに話しかけていた。
「今日の夕方頃にお父様が帰ってらっしゃるわよレティシャ」
「本当!?嬉しい。お父様のご病気も治ったのね!!ふふ。じゃあ今日はお父様の似顔絵を書いて渡したら喜んでくれるかな」
「ふふふ。もちろん喜んでくださるわ。レティシャはお父様のことが大好きね」
「もちろん。魔法を使って大勢の病気を治せるお父様なんてどこにもいないしとってもかっこいいでしょ?みんなに自慢の私のお父様よ。ふふ」
「まぁ。ふふふ」
このやり取りを見て思わず輪に入る気にはなれずに部屋に戻ろうとするとレティシャに見つかってしまった。
「お姉様~今日はお父様が帰ってくるんですって」
「ええ。さっきメイシーに聞いたところよ。レティシャ。お父様が帰ってこられることになって安心だね」
「うん!!ふふお姉さま今日もお勉強や一緒に遊んでくれる?」
シャンドラが帰ってくるまで少し時間がある。
「今日は少しだけね、わたしもラベル先生からの宿題をまだ終わらせてないの」
「えーお姉さままだ終わってなかったの?わたしには早く終わらせようって沢山教えてくれてたのに。お姉様と遊びたかったなあ 」
「レティシャ?ナーシャはこの間からレティシャの宿題も見てくれてたでしょう?それに、お父様がいない間、ずーっとレティシャと一緒にいてくれたでしょう?宿題の内容もどんどん難しくなってくるからお姉様に無理を言っちゃだめよ」
「そっか…わたしと遊んでくれてたから。無理を言ってごめんなさい…お姉さまありがとう!」
「ふふふ。いいのよ。さっまずは一緒にお勉強しましょう」
「はーい」
勉強を終え、レティシャの相手をしているとあっという間に時間も過ぎシャンドラが帰ってくる1時間前くらいにはそろそろ勉強しに部屋に戻るわね。と部屋に戻った。
夕方シャンドラが帰ってきて珍しく夕食を一緒に食べると言われお母さまやレティシャが「お父様のいない間はナーシャがたくさん遊んでくれた」「ナーシャが居てくれて心強かったのよ」と褒めてくれて
珍しくシャンドラに「ナーシャ、良くやってくれた。ありがとう」と褒められて居心地が悪かった。
「そういえばナーシャお嬢様に朝一バルセご令嬢が突然押しかけてきたのはどうしてだったんですか?」
メイシーは今にもこの空気を潰したいらしくわざわざこのタイミングで話を割って大袈裟に話を持ち出してきた。
「ナーシャ。バルセご令嬢になにか失礼なことでもしたのかい?」
いつもの私ならお母さまやレティシャの前だろうと悪い事をしてなくても何が悪くて怒られるのか分からずに怖くて何も言えなかった。だから今までは部屋にこもってお母さまやレティシャにも父親の本性に気づかれることなく過ごせていた。
メイシーはアイリスがなぜ来たかも知らないのにこうやって話を持ち出すのは私が黙って空気を悪くすることを狙っているのだろう。
「…アイリスはこの間のお茶会で仲良くなった私の友達です。」
「まあ!この間お友達になったばかりのお嬢様に朝から押しかけるなんてお嬢様に失礼ですわよね。そんな方とお友達になられて私はお嬢様が心配です」
「ナーシャ、君は人を見る「…アイリスは!メイシーが手を加えたドレスの件でリベラは怒ってないけれどサプライズのお茶会でみんなでリベラのドレスを色違いで着るのはどうか。って提案に来てくれたんです。もちろん。手を加えたドレスを元に戻して。あの後疫病も流行って何も出来なかったから…落ち着いたから善は急げと私のために。」
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