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第一章
6話
しおりを挟むシャンドラが出ていきソランが水滴を全て吸収してくれた。
そしてティエラは私がもたれられるように囲んでくれる。
暖かくてふわふわでとても心地がいい。
「ソラン…ティエラ。助けてくれてありがとう。2人のおかげで全然痛くなかったわ。」
「ナーシャ…いつもあんなにやられて…それでもお母さんの為に我慢していたの?ナーシャは優しすぎるわ。」
「ナーシャがいいと言えばいつでも痛い目見せてやるのに」
「ふふ。1人の頃はやっぱり辛かったけれど…今日は辛いどころか心強かった!」
コンコンッ「ナーシャお嬢さま…」
メイシーが目をうるうるしながら私にかけよってきて思わず座り直した。
「私のせいで本当に申し訳ありません…お医者さまを呼びに出ようとしたらレティシャさまにどうしたのか聞かれてしまって…嘘をつくことも出来なくて…
そこからはもうパニックでレティシャ様は「お父さまー」と走って行かれて…」
「わたしも後を追っていたんですがレティシャ様とそれを追いかけるシャンドラ様も走るのが早いのなんの…追いついたら部屋の前で立ち止まってらしたんてす…」
「お嬢様…お口から血まで出て…」
"ナーシャ、こいつを信用してるようだが俺達のことは絶対言ったらダメだぞ"
「え!?」
"しまった…びっくりして超えが出しちゃった"
「どうされましたか…?お嬢様」
「ううん。血を拭いたはずだったのに残ってたなんてびっくりしちゃって。」
「今すぐお体を拭くタオルと血の跡をお拭きする温かいタオルをお持ちしますね」
あ…いつの間に全身がボトボトに…
「う、うん。ありがとう」
2人のことは誰にも言うつもりはなかったけど…
メイシーに敵対心を持つソランを不思議に思う
"どうしてそんなこと言うの?"
"ナーシャは気づいてないようだがコイツ全ての行動が嘘くさいぞ"
"でもお母さまとシャンドラが出会う前の6歳頃から今まで…ずーっと一緒に居たのよ…?"
"君が信用してるのならそれでいいが俺達のことは絶対に言うな。それだけだ"
それだけを言い残してソランはフッと姿を消した。
"もう!ソランはそんなだから勘違いされるのよ"
"ナーシャ。この子ね、あなたがお母さんと話してる間に遠回りしてお医者様を探してたみたいよ"
……遠回り?
どういうこと?
"私たちも気配で感じるだけだからハッキリは言えないけど、この屋敷の玄関はここから真っ直ぐ階段を降りればいいだけよね。だけどこの子の気配はそうでなかったのよ"
"何か…取りに行っただけ…とかじゃないのかしら"
"それは私たちにも分からないわ。だけど人が倒れたときにそんな忘れ物なんて思い出さないと思うよ。ましてや大事な人が倒れたなら尚更ね"
「ナーシャ様、お待たせしました。お顔を上げて頂けますか?」
頭からフワフワのバスタオルを掛け
温かいタオルで口元を綺麗に吹いてくれる優しいメイシー。
「ありがとうメイシー」
メイシーはニコっとして
「今ベッドも整えますから…ベッドへ行きましょう」
本当は自分で動けるけれど…メイシーに肩を貸して貰いベッドへ入った。
「お嬢様…私がもっと上手く誤魔化すことが出来ていれば……」
「いいのよ。メイシー。あなたが悪い訳じゃないわ…。今日はもう疲れたから…寝ることにするね」
「今日は私のせいで…本当にごめんなさいお嬢様…おやすみなさい…」
…どういうことなのかしら…
メイシーは6歳から今までずっと私のことを支えてくれたのよ。
あの涙も全部嘘だったの?
でもこれだけじゃ…まだ分からないわ。
今までここまで耐え続けられたのはメイシーがいてくれたから…。
だからまだ疑うのは早いもの…
______________________
「おはようございますお嬢様、お体はどうですか?今日はまだお熱も出ていないし大丈夫そうですね。良かったです」
いつものように朝の支度をしてくれるメイシー。
「シャンドラ様からお伝えするように言われたのですが…婚約発表が1年後に決まったのでそれまでに社交界デビューするために…まずは貴族のお茶会に顔を出すようにしておくように。とのことです…」
何枚かの手紙を手渡し
「この中からまずは選べばいいとのことで…全てだいたい1週間後くらいに予定されています。」
お茶会…今まで誰とも話すことなく過ごしてきたけれど社交界マナーについては沢山勉強したもの。ソランもティエラもいるし大丈夫。
お母さまに恥をかかせないために頑張らないと!
でも…まず誰のところに行けばいいのかしら
「お嬢様、初めはこのリベラ・カルメル嬢というお嬢様がお優しいお嬢さんだと有名なようですけど…どうでしょう?」
「メイシー、ありがとう。じゃあリベラ嬢に返事してみるわ」
「分かりました。今日はお嬢様のお熱も上がることなさそうで安心しました。お茶会のドレスを用意しておきますね♪」
"ナーシャ、メイシーもお茶会の準備で忙しくなりそうだし当分誰も部屋に来ないでしょ?町に一緒にお出かけしましょ~♪この世界のお肉が食べたいの"
「わぁ楽しそう。だけど私…デルもないからなにも買ってあげられないの…」
"それなら簡単よ?大地の精霊を見くびっちゃダメよ。ちょっとまっててね♪"
15分後…ティエラが戻ってドサッと袋を置いた。
袋から手に取ると…オレンジダイヤにパパラチアサファイア!?
それにこれって…貴重で貴族ですら数人しか使っていない魔法石…キャベラ!?
袋には他にも沢山の宝石が入っている。
ティエラはドヤ顔で
"私と契約するってことはこんなことも簡単に出来ちゃうのよ?さ、ナーシャ。まずはこの宝石を売りに行くわよ"
サッと私を乗せ窓から飛び出し街へ出た。
街へ着くと急に紫髪のロングヘアで背の低い女の子が急に私の腕を引っ張った。
「早く宝石商に行くわよ」
「えぇえ、ティエラ!?」
「人の姿の方が何かと楽でしょう?ふふ早く行くわよ」
「ねぇ、でも大地精霊の精霊王様に勝手にしちゃって怒られないの?」
「あ、言ってなかったかしら、ウィンもソランもわたしも精霊王よ?」
えええええええ。ティエラもソランも精霊王だったの?
びっくりする間もなく早く行きましょうと引っ張られた。
街に出るのも久しぶりで、それも1人じゃなくて初めてのお友達のような存在になってくれるティエラ。
私は久しぶりに心から楽しい気持ちになった。
宝石商に着き、宝石を買って貰えませんか?と尋ねると、はいはいと机にすわり宝石の方に目を向けると宝石商は目を飛び出すほどにびっくりした。
「キ…キャベラなんかを売ってしまうのかい!?それにこんなに珍しい宝石が2つも。お嬢さんは一体何者ですか!」
「ふふ。宝石なんていくらでも家にあるから3つくらい売っちゃっても問題ないわ♪早く鑑定しちゃってくださる?」
と私の後ろから顔を出しティエラは慣れたように宝石商とやり取りする。
「今すぐの買取りとなると…9…9千万デルしか出せません…本当はもっと買取り値がお高いのは重々承知ですが普段からキャベラなんか取り扱うことなんてなく…そこにオレンジダイヤにパパラチアサファイア…今はこれが手一杯なんです!!足りなければ後日残りの5千万デルをお伺いして、というのはいかがでしょうか…」
"ティアラ…後日お伺いなんてシャンドラやお母さまが見たらびっくりしちゃうし取り引きは厳しいわ…。"
「お伺いなんていいわ。9千万デルで売ってあげる♪その代わり今後の取り引きでオマケしてちょうだい。」
「も…もちろんでございます!!」
宝石商は9千万ドルをアタッシュケースで手渡し大喜びで宝石を買取りその日はお店を閉じた。
「さぁもうどこにでも行けるわよー。早く行きましょ♪」
普段部屋にこもってデルすら持たない私は
「本当いいのかしら…」
とティエラに申し訳なさそうに聞くとなにも考えることなく
「私と契約してくれたんだからいいのよ♪人間の姿で外に出られるのもナーシャが契約してくれたからなのよ♪だからいいのいいの♪それに私だって人を選ぶわよ?嫌な人間だったら契約してもこんなことしないわ。でもナーシャの為ならなーんでもしちゃう。明日も時間を見て遊びに行きましょう」
それから私達は食べ歩き満足してソランのおみやげを買って家へ帰った。
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