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媒介
道中
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ドレープ性と光沢感のある
ポリエステル素材の
黒いオープンシャツ
やわらかで
とろみのある素材感が
しなやかな清人の白肌を
一際目立たせ
グレンチェック柄の
テーパードスラックスは
足元に抜け感があり
細見のシルエットが
清楚さを醸し出す
大人びた関の服も
纏まり無く散らばる
清人の癖毛が
少年らしさを演出した
透明感のある白肌は
〝マネキン 〟とは
似て非なるもので
涙袋を染める朱が
異邦人にも見え
漆黒の瞳だけが
寂しさを残し
妖しい闇へ誘う
清人の妖艶は
黒い瞳と紅い唇の不調和が
人の眼を狂わせ
魅了する魔力があった
指定された旅館までの道中
篠崎の車を運転する関は
助手席に座る清人が
繰り返し呟く言葉に
耳を傾けていた
紅い唇が微かに動く
〝 冷静になれ〟
何度も呟き
息を吐き出す清人が俯き
静かに瞼を閉じる
ハザードを点滅させ
路肩へ車を停車する関は
強い口調で制した
「やめろ」
清人は俯いたまま
視線だけを関へ向ける
「大人に成ってから
唱える呪文だ
清人は
14歳の子供のままでいい」
ゆっくりと頭を上げ
合掌した指先を唇へ当て
長い息を吹き掛ける清人は
手を下ろし返事をした
「はい」
ウィンカーを出し
車道へ車を戻す関は
ナビを確認し
「此処から一時間掛かる
怖いなら 今のうちに
泣いておけ」
助手席側の窓を眺め出す清人は
関の言葉に返事を返さず
街並みから山道へ入り
変わらぬ景色が続き
20分程経過した頃
清人の眼から
一筋の涙が
零れ落ちた
「関さん
来週 15に成ります
15歳は まだ子供ですか」
窓の外を眺めたまま
涙を拭い取る清人
「45歳に成る俺は
もう大人ですか」
関の言葉に
清人は関へ顔を向ける
「爺に成っても
子供のままで
いたいもんだな」
清人に笑いかける関は
清人から眼を逸らし
カーステレオのボリュームを上げた
薄っぺらな清人の躰が
助手席へ沈み
繊細な顎のラインを晒し
窓の外へ視線を戻す
「俺が育った村の理髪店に
シェービングレザーと言う
西洋剃力で髭を剃る
年老いた理容師が居た
その理容師が革砥のレザーストラップで
剃刀を砥ぐ仕草が
格好良くてな
理容師になろうと決めたのは
15歳の時だ
清人は 何かあるか?」
遠くを見る眼差しで
未来を描く清人は
微かに笑を浮かべ
「料理人に成りたい」
「幸介か?」
「幸介さんと
コバさん
料理を教えてくれた人です」
「そうか
じゃあ 帰ったら
スナック【小夜子】行こうな
清人を連れていかないと
ママに俺が殺される」
〝 それまで我慢してくれ〟
関はハンドルを握り締め
言葉にならない台詞を
胸の中で呟いていた
ポリエステル素材の
黒いオープンシャツ
やわらかで
とろみのある素材感が
しなやかな清人の白肌を
一際目立たせ
グレンチェック柄の
テーパードスラックスは
足元に抜け感があり
細見のシルエットが
清楚さを醸し出す
大人びた関の服も
纏まり無く散らばる
清人の癖毛が
少年らしさを演出した
透明感のある白肌は
〝マネキン 〟とは
似て非なるもので
涙袋を染める朱が
異邦人にも見え
漆黒の瞳だけが
寂しさを残し
妖しい闇へ誘う
清人の妖艶は
黒い瞳と紅い唇の不調和が
人の眼を狂わせ
魅了する魔力があった
指定された旅館までの道中
篠崎の車を運転する関は
助手席に座る清人が
繰り返し呟く言葉に
耳を傾けていた
紅い唇が微かに動く
〝 冷静になれ〟
何度も呟き
息を吐き出す清人が俯き
静かに瞼を閉じる
ハザードを点滅させ
路肩へ車を停車する関は
強い口調で制した
「やめろ」
清人は俯いたまま
視線だけを関へ向ける
「大人に成ってから
唱える呪文だ
清人は
14歳の子供のままでいい」
ゆっくりと頭を上げ
合掌した指先を唇へ当て
長い息を吹き掛ける清人は
手を下ろし返事をした
「はい」
ウィンカーを出し
車道へ車を戻す関は
ナビを確認し
「此処から一時間掛かる
怖いなら 今のうちに
泣いておけ」
助手席側の窓を眺め出す清人は
関の言葉に返事を返さず
街並みから山道へ入り
変わらぬ景色が続き
20分程経過した頃
清人の眼から
一筋の涙が
零れ落ちた
「関さん
来週 15に成ります
15歳は まだ子供ですか」
窓の外を眺めたまま
涙を拭い取る清人
「45歳に成る俺は
もう大人ですか」
関の言葉に
清人は関へ顔を向ける
「爺に成っても
子供のままで
いたいもんだな」
清人に笑いかける関は
清人から眼を逸らし
カーステレオのボリュームを上げた
薄っぺらな清人の躰が
助手席へ沈み
繊細な顎のラインを晒し
窓の外へ視線を戻す
「俺が育った村の理髪店に
シェービングレザーと言う
西洋剃力で髭を剃る
年老いた理容師が居た
その理容師が革砥のレザーストラップで
剃刀を砥ぐ仕草が
格好良くてな
理容師になろうと決めたのは
15歳の時だ
清人は 何かあるか?」
遠くを見る眼差しで
未来を描く清人は
微かに笑を浮かべ
「料理人に成りたい」
「幸介か?」
「幸介さんと
コバさん
料理を教えてくれた人です」
「そうか
じゃあ 帰ったら
スナック【小夜子】行こうな
清人を連れていかないと
ママに俺が殺される」
〝 それまで我慢してくれ〟
関はハンドルを握り締め
言葉にならない台詞を
胸の中で呟いていた
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