僕らの距離

宇梶 純生

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懲戒

脆弱

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冷え切った躰が
温まるにつれ
上昇してゆく体温

渇いた咳を零す清人は
熱い息を吐き続け

熱を帯びた肌から
滲む汗が流れ出す

久々の風邪に
体力を奪われ
思考回路が止まり

清人は ずぶ濡れのシャツを
レジ袋へ隠し入れたまま
忘れていた


市販の風邪薬を
清人に服用させた関が
スポーツドリンクを
ベッドの横へ並べ
仕事に戻り

ベッドから這い出た清人は
覚束無い脚取りで
脱衣場へ向い

洗濯籠の中から
関が脱ぎ入れた
グレーのパーカーを取り出し

首回りが弛む
着古したTシャツに
パーカーを重ね
部屋着スエットのまま
関の部屋を出た

1階のエレベーター前へ
フードを被り
俯き座る清人は
5階から降りて来る
穂苅を待ち詫びる

午後6時半を過ぎ
降りて来た穂苅は
床へ蹲る清人に驚き
腕時計を確認すると
清人の腕を持ち上げ
外へ連れ出し

清人を引き連れ
裏路地を抜け
タクシーを止める穂苅は
清人を押し込み
乗り込んだ

「…体調が あまり良く…」

清人の訴えを
軽く聞き流す穂苅は
清人の言葉に被ぶせ

「わかった わかった
 客と話しをつけてやるから
 兎に角 ホテルまで
 行ってくれ」

タクシーの窓に頭を寄せ
ドアへ凭れ掛かる清人は
脱力する腕を脚の間へ垂らし
荒い呼吸を吐き続けた

待ち合わせ場所で
四十代後半の筋肉質な男性を拾い
タクシーでホテルへ向う間
助手席へ乗り込んだ男性は
ぐったりとする清人を見て

90分3万円と
値引き交渉する穂苅に
快く承諾を示した


男性に支えられ
エレベーターに乗り込み
部屋へ入るなり
壁際に清人を押し付け

スエットと下着をずり下げ
清人のアナルへ
ペニスを押し込んでゆく

興奮状態の男性が
激しく腰を突き上げるたび
壁に顔を打ち付ける清人は
必死に腕で顔を庇い
揺れ動いていた

短縮された時間を
有効利用化する男性は
清人を連れベッドへ移動し

筋肉隆々の肉体を晒し
あらゆる角度から
挿入を試み

朦朧とする清人は
ぼんやりと部屋を眺め
喘ぎ声も挙げず
顔に掛かる髪すら避けず
無抵抗で犯され続けた


曇りガラス張りの浴室で
シャワーを浴びる男性の
シルエットを眺め

ベッドへ置かれた
3万円札に手を伸ばす清人は
札の端を指先で触れ
荒い呼吸音を聞いていた

制限時間を気にする男性は
ヤリ捨てた清人を
ベッドへ残し
部屋から出てゆき

「帰らないと」

敢えて声に出す清人は
ベッドから躰を起こし
乱れた髪を直しもせず

入口付近に落ちる
下着とスエットを
壁に凭れ履き

フロントへ降りて行った

汗に塗れ乱れた髪を梳かす支配人は
タクシーを呼び
明日の仕事がない事を
清人に告げ

蓋を開けた栄誉ドリンクを
清人の掌へ握らせる

草臥れ果てた清人は
栄養ドリンクを飲み干すと
力無く下ろす腕から
ドリンクの瓶が落ち
床を転がって行った
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