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最終章
謙譲
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枯淡の時間が
流れる
篠崎の指先に挟まれた
煙草の煙りが
あっさりと揺らめきながら
灰皿へ落とされる
煙草の灰が深く
時の流れを 重んじる
テーブルの上に置かれた
タブレット画面に
黒背景画像の中へ
見覚えのある服を着た清人の姿が
停止画のまま 映し出され
数分が経過していた
髪型を整えた清人の表情が
あまりにも静観な装いで
隆行は 戸惑いを隠せず
傍観するしかなかった
隆行の服を着る清人に
違和感を感じ
シャツの袖口を見た隆行は
固唾を呑んだ
細い指を膝に添える清人の手首が
袖口に収まり
長く伸びた腕が
清人の成長を知らしめる
中学の入学式以降
清人から眼を逸らし続けた隆行は
ダボついたワイシャツの袖口から
覚束無い手で
ネクタイを絞めていた清人を
想い描くと瞬時に
隆行の脳裏は巣窟を刳り
最後の清人の姿を映し出す
暖色系の薄暗い照明に照らされ
父親の頭を抱え込む
妖艶な清人の姿が 鮮明に浮かび
無意識に隆行は
清人の画面から
顔を背けた
「穢らわしいか」
透かさず篠崎の声が
隆行の胸中に槍を刺す
〝謝罪〟と言う言葉が
酷く虚言に落ちぶれ
腹黒い膿が どろりと
槍を搦め取り
隆行は自尊心を捻じ伏せられた
清人の動画が再生を始め
痴態を晒す隆行の眼を奪い
撮影者の声に応え
口数少ない清人の言葉が
断片的に隆行の耳を奪った
『 初めての相手も
お父さん?』
真一文字に綴じられた
清人の唇を微かに噛み締め
一瞬 視線を床に落とすと
撮影者側へ顔を向け
〝…兄です〟
『 近親相姦が好きなんだね』
精悍な表情を変えず
微かに震える手で
シャツの胸元を握り締める
清人の画像に
隆行は 困窮する胸を抑え
露見の澱みへ嵌り
嗚咽を漏らした
幾つかの質問の狭間に
〝気持ち悪い〟人間だと
清人自ら 卑下する言葉を零し
隆行の眼から
一筋の涙が頬を伝う
〝一番近くて
一番…遠い人〟
『今でも好き?』
躊躇なく〝はい〟と
消えいる声で応える清人に
堪え切れず 泣き項垂れる隆行は
動画再生を停止し
「〝気持ち悪い〟と
清人に言ったのは 僕です
僕が清人を…」
激情に駆られ
言葉に詰る隆行の胸ぐら掴む篠崎は
加減なく吊り上げ
「〝謝罪〟とは
こうゆう事だ」
ソファーへと
隆行の身体を叩きつけていた
流れる
篠崎の指先に挟まれた
煙草の煙りが
あっさりと揺らめきながら
灰皿へ落とされる
煙草の灰が深く
時の流れを 重んじる
テーブルの上に置かれた
タブレット画面に
黒背景画像の中へ
見覚えのある服を着た清人の姿が
停止画のまま 映し出され
数分が経過していた
髪型を整えた清人の表情が
あまりにも静観な装いで
隆行は 戸惑いを隠せず
傍観するしかなかった
隆行の服を着る清人に
違和感を感じ
シャツの袖口を見た隆行は
固唾を呑んだ
細い指を膝に添える清人の手首が
袖口に収まり
長く伸びた腕が
清人の成長を知らしめる
中学の入学式以降
清人から眼を逸らし続けた隆行は
ダボついたワイシャツの袖口から
覚束無い手で
ネクタイを絞めていた清人を
想い描くと瞬時に
隆行の脳裏は巣窟を刳り
最後の清人の姿を映し出す
暖色系の薄暗い照明に照らされ
父親の頭を抱え込む
妖艶な清人の姿が 鮮明に浮かび
無意識に隆行は
清人の画面から
顔を背けた
「穢らわしいか」
透かさず篠崎の声が
隆行の胸中に槍を刺す
〝謝罪〟と言う言葉が
酷く虚言に落ちぶれ
腹黒い膿が どろりと
槍を搦め取り
隆行は自尊心を捻じ伏せられた
清人の動画が再生を始め
痴態を晒す隆行の眼を奪い
撮影者の声に応え
口数少ない清人の言葉が
断片的に隆行の耳を奪った
『 初めての相手も
お父さん?』
真一文字に綴じられた
清人の唇を微かに噛み締め
一瞬 視線を床に落とすと
撮影者側へ顔を向け
〝…兄です〟
『 近親相姦が好きなんだね』
精悍な表情を変えず
微かに震える手で
シャツの胸元を握り締める
清人の画像に
隆行は 困窮する胸を抑え
露見の澱みへ嵌り
嗚咽を漏らした
幾つかの質問の狭間に
〝気持ち悪い〟人間だと
清人自ら 卑下する言葉を零し
隆行の眼から
一筋の涙が頬を伝う
〝一番近くて
一番…遠い人〟
『今でも好き?』
躊躇なく〝はい〟と
消えいる声で応える清人に
堪え切れず 泣き項垂れる隆行は
動画再生を停止し
「〝気持ち悪い〟と
清人に言ったのは 僕です
僕が清人を…」
激情に駆られ
言葉に詰る隆行の胸ぐら掴む篠崎は
加減なく吊り上げ
「〝謝罪〟とは
こうゆう事だ」
ソファーへと
隆行の身体を叩きつけていた
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