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阿吽
熟慮
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二人掛けの赤いカウンター椅子
右側に寄り腰掛け
空席の左側を眺める
競馬ゲーム機のパネルに両肘を付き
馬の模型を嬉しそうに見る
清人の面影が蘇り
空席のパネルへ
メダルを投入する久我は
8×11単騎ボタンを押した
パドックする模型の馬達が
ゆっくりとゲートに収まり
軽快音を鳴らしレースが始まる
オッズを確認する久我の視界へ
真横に立つ人影が映り込み
久我は顔を向けた
久我の前へカードを差し出す腕が伸び
黒ベストの胸元に付けられた
[店長]プレートを見た久我は
疑いも無く見覚えのある
カードへ手を翳す
「お客様のカードで
間違いありませんか?」
店長の質問に 手を止めた久我は
半信半疑に首を傾げ応えた
「そうだと思いますが」
店長の掌からカードを掴む久我は
カードの下に隠された
幼い清人の顔写真に目を見張る
防犯モニター画像を
プリントアウトした
清人の写真を掴み取り
立ち上がる久我の耳元へ
「御足労 願います」
飄々と告げる関は
レースが終わるのを待ち
立ちはだかる久我の脇で
払戻したメダルを取り除き
関係者出入口へ歩いてゆく
為す術もない久我は
唯一の手掛かりを握る
店長の後を追い掛け
無言のまま連れ立つ店長と
エレベーターに乗り込み
5階事務所へ同行する
有限会社ソルトへ
久我を誘導した関は
篠崎に久我を引渡すと
任務終了の如く沈着冷静に
ゲーセンへと戻っていった
テーブルに損害賠償の書類を置き
久我の到着を待ち構えていた篠崎は
ソファーへ深く腰掛け
久我を手招き書類を指差す
一礼しソファーへ座る久我は
示された書類を手に持ち
内容を読み上げた
「元金160万円
均等返済でも構わん」
篠崎の申し出に
瞼を閉じ真一文字に口を噤む久我は
数分間 静止し
決意表明を告げる
「一括返済致します」
清人の署名欄下の余白に
テーブルへ置かれたボールペンで
名前を署名する久我は
すぐさまソファーから
立ち上がり
戸口へと躰を向けた
「言いたい事は
ないのか?」
言葉で久我を引き止める篠崎へ
振り返る久我は
食縛る固い口を開き
「清人は
生きていますか」
篠崎は固い表情の久我を見上げ
薄らと笑みを含ませ
手首を揺らし帰れと
追い払った
一礼し事務所を出て行く
久我を見送ると
奥で待機していた穂苅が顔を覗かせ
「何すか あの態度
拉致された理由とか
清人の監禁場所とか
気にならないんすかね?」
書類に書き込まれた
久我の名前を確認する篠崎は
メモ用紙に書き写し
「生きてさえいれば
何が起きていても
どうでもいい事なんだろ」
首を捻る穂苅に
メモを手渡す篠崎は
珍しく機嫌良く笑っていた
右側に寄り腰掛け
空席の左側を眺める
競馬ゲーム機のパネルに両肘を付き
馬の模型を嬉しそうに見る
清人の面影が蘇り
空席のパネルへ
メダルを投入する久我は
8×11単騎ボタンを押した
パドックする模型の馬達が
ゆっくりとゲートに収まり
軽快音を鳴らしレースが始まる
オッズを確認する久我の視界へ
真横に立つ人影が映り込み
久我は顔を向けた
久我の前へカードを差し出す腕が伸び
黒ベストの胸元に付けられた
[店長]プレートを見た久我は
疑いも無く見覚えのある
カードへ手を翳す
「お客様のカードで
間違いありませんか?」
店長の質問に 手を止めた久我は
半信半疑に首を傾げ応えた
「そうだと思いますが」
店長の掌からカードを掴む久我は
カードの下に隠された
幼い清人の顔写真に目を見張る
防犯モニター画像を
プリントアウトした
清人の写真を掴み取り
立ち上がる久我の耳元へ
「御足労 願います」
飄々と告げる関は
レースが終わるのを待ち
立ちはだかる久我の脇で
払戻したメダルを取り除き
関係者出入口へ歩いてゆく
為す術もない久我は
唯一の手掛かりを握る
店長の後を追い掛け
無言のまま連れ立つ店長と
エレベーターに乗り込み
5階事務所へ同行する
有限会社ソルトへ
久我を誘導した関は
篠崎に久我を引渡すと
任務終了の如く沈着冷静に
ゲーセンへと戻っていった
テーブルに損害賠償の書類を置き
久我の到着を待ち構えていた篠崎は
ソファーへ深く腰掛け
久我を手招き書類を指差す
一礼しソファーへ座る久我は
示された書類を手に持ち
内容を読み上げた
「元金160万円
均等返済でも構わん」
篠崎の申し出に
瞼を閉じ真一文字に口を噤む久我は
数分間 静止し
決意表明を告げる
「一括返済致します」
清人の署名欄下の余白に
テーブルへ置かれたボールペンで
名前を署名する久我は
すぐさまソファーから
立ち上がり
戸口へと躰を向けた
「言いたい事は
ないのか?」
言葉で久我を引き止める篠崎へ
振り返る久我は
食縛る固い口を開き
「清人は
生きていますか」
篠崎は固い表情の久我を見上げ
薄らと笑みを含ませ
手首を揺らし帰れと
追い払った
一礼し事務所を出て行く
久我を見送ると
奥で待機していた穂苅が顔を覗かせ
「何すか あの態度
拉致された理由とか
清人の監禁場所とか
気にならないんすかね?」
書類に書き込まれた
久我の名前を確認する篠崎は
メモ用紙に書き写し
「生きてさえいれば
何が起きていても
どうでもいい事なんだろ」
首を捻る穂苅に
メモを手渡す篠崎は
珍しく機嫌良く笑っていた
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