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発覚
誤謬 3
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白い長袖Tシャツに
黒地のパーカーを重ね
ジーンズ姿で
中山宅へ訪れた久我は
紐ネクタイに本象牙ブローチを付け
Vネックのベストに
茶系ブレザーを着る
中山先生の服装を
懐かしみる
社名入りの軽自動車で
中山を迎えに来た久我の車へ
乗り込む中山は地図を渡し
行き先を告げた
「診療所?」
久我の質問に頷く中山は
簡単な経緯を話す
「大学病院に救急搬送されたが
翌日 嶽宮の父親が
診療所へ転院させている
被害者側の諸事情により
公には したくないと言う理由で
大学病院側は対応したらしい」
中山の説明に
煮え切らない溜息をつく久我は
診療所の住所をナビに設定し
アクセルを踏んだ
「GCグループ取締役代表
神城社長が 病院側と
取引をしたと言う事ですか」
「そういう事になる」
「…腑に落ちない話です」
診療所をネット検索し
印刷した紙を読み返す中山は
情報を久我へ伝え始めた
清人が入院した診療所は
個人病院に隣接する施設で
入院病棟は病院内部に有り
担当医である医院長が
診療所の医師の為
清人は病院側の入院病棟へ
間借りしていた事になる
「頭部の強打が原因で
血管に溜まった血液が脳を圧迫し
一時的 意識を喪失したが
血流が正常に回復し
転院許可を出したそうだ」
「療養の為にですか?」
的確な久我の指摘に
溜息を洩らす中山は
書き留めたメモを眺める
「詳しくは 担当医に
確認しなければ 判らんが
全治一ヶ月の怪我を負っている」
「…一ヶ月」
「打撲傷による内出血と
肋骨を二箇所負傷と聞いた」
口を堅く結び
押黙る久我は
冷静沈着にハンドルを握り
信号機が赤に変わり
ブレーキを掛ける久我は
握り締めた拳でハンドルを叩き
「糞!」
悔しさを吐き捨てていた
街道沿いに聳え立つ
個人病院へ到着した久我は
広大な敷地内の駐車場に
車を停車する
街道側に面する病院は
二階建ての建物になり
駐車場の中央部に
診療所と看板を掲げた
平屋建ての建物があった
年末年始の休館日に入り
閑散とする駐車場には
数台の車しか無く
入院病棟の患者達も
自宅へと可能な限り
一時退院してゆく
閉館する診療所では無く
病院へ向かう中山を追い
受付ロビーに踏み入れた久我
白一色のロビー内に
胡蝶蘭の植木鉢が並び
床や壁に張り巡らせた
白い石状の造りを見廻す
待合所も革張りソファが置かれ
高級感を醸し出し
エステサロンを思い浮かべた
しばらく待ち
ガラス張りの螺旋階段から
白衣を纏う白髪の医院長が
静かに降りて来る
医院長に誘導されるまま
入室した相談室は
開放的な窓硝子から
柔らかな陽射しが射し込み
広々とした応接仕様の内装に
中山と久我は 眼を奪われていた
黒地のパーカーを重ね
ジーンズ姿で
中山宅へ訪れた久我は
紐ネクタイに本象牙ブローチを付け
Vネックのベストに
茶系ブレザーを着る
中山先生の服装を
懐かしみる
社名入りの軽自動車で
中山を迎えに来た久我の車へ
乗り込む中山は地図を渡し
行き先を告げた
「診療所?」
久我の質問に頷く中山は
簡単な経緯を話す
「大学病院に救急搬送されたが
翌日 嶽宮の父親が
診療所へ転院させている
被害者側の諸事情により
公には したくないと言う理由で
大学病院側は対応したらしい」
中山の説明に
煮え切らない溜息をつく久我は
診療所の住所をナビに設定し
アクセルを踏んだ
「GCグループ取締役代表
神城社長が 病院側と
取引をしたと言う事ですか」
「そういう事になる」
「…腑に落ちない話です」
診療所をネット検索し
印刷した紙を読み返す中山は
情報を久我へ伝え始めた
清人が入院した診療所は
個人病院に隣接する施設で
入院病棟は病院内部に有り
担当医である医院長が
診療所の医師の為
清人は病院側の入院病棟へ
間借りしていた事になる
「頭部の強打が原因で
血管に溜まった血液が脳を圧迫し
一時的 意識を喪失したが
血流が正常に回復し
転院許可を出したそうだ」
「療養の為にですか?」
的確な久我の指摘に
溜息を洩らす中山は
書き留めたメモを眺める
「詳しくは 担当医に
確認しなければ 判らんが
全治一ヶ月の怪我を負っている」
「…一ヶ月」
「打撲傷による内出血と
肋骨を二箇所負傷と聞いた」
口を堅く結び
押黙る久我は
冷静沈着にハンドルを握り
信号機が赤に変わり
ブレーキを掛ける久我は
握り締めた拳でハンドルを叩き
「糞!」
悔しさを吐き捨てていた
街道沿いに聳え立つ
個人病院へ到着した久我は
広大な敷地内の駐車場に
車を停車する
街道側に面する病院は
二階建ての建物になり
駐車場の中央部に
診療所と看板を掲げた
平屋建ての建物があった
年末年始の休館日に入り
閑散とする駐車場には
数台の車しか無く
入院病棟の患者達も
自宅へと可能な限り
一時退院してゆく
閉館する診療所では無く
病院へ向かう中山を追い
受付ロビーに踏み入れた久我
白一色のロビー内に
胡蝶蘭の植木鉢が並び
床や壁に張り巡らせた
白い石状の造りを見廻す
待合所も革張りソファが置かれ
高級感を醸し出し
エステサロンを思い浮かべた
しばらく待ち
ガラス張りの螺旋階段から
白衣を纏う白髪の医院長が
静かに降りて来る
医院長に誘導されるまま
入室した相談室は
開放的な窓硝子から
柔らかな陽射しが射し込み
広々とした応接仕様の内装に
中山と久我は 眼を奪われていた
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