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悲壮
遡及
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裏口付近で
清人の訪問を
待ち構える小夜子
関が姿を現し
後を付いて
清人の姿が見え
言葉などなく
歓喜に満ちた
甲高い小夜子の
歓声が響き
清人を羽交い締めにする
小夜子の腕の中で
仰け反る清人は
戸惑いの表情を
浮かべながらも
僅かばかり
頬を紅く染め
微かに口元が微笑んだ
厨房に居た幸介は
若干 不機嫌を残しながらも
背後から清人へ近寄り
清人の背に頭を添わせ
腰元に腕を回す
端に寄り
小夜子と幸介に挟まれ
身動きを封じられる清人を
眺めていた関は
清人を呼び
顔を向けた清人に
卓席に座る篠崎の方へ
視線で合図を送る
ゆっくりと首を回す清人は
視線の先に篠崎を捕え
小夜子と幸介に挟まれたまま
立ち尽くし
篠崎の姿を眺めていた
関係者入口前に
立ち尽くしていた
初対面の清人を思い出す
長い前髪で顔を隠し
俯く清人の横顔
暗証番号を打ち込む
セキュリティケースに
篠崎が手を伸ばすと
邪魔にならぬ様
場所を譲り
「中に入れ」
篠崎の言葉に
顔を上げた清人の唇が
鮮やかな深紅色を晒す
5階事務所へ連れてゆき
清人の外見を調べ始める篠崎
背丈が差程 高くはない篠崎より
細身の清人は 背丈が高く映った
清人の顎を持ち上げ
角度を付け左右に動かし
「見栄えは悪くない」
篠崎の言葉に
唾を飲み込む振動が
顎を持つ指先に伝わり
篠崎はAVの話を
関から聞かされている状態を悟った
関を否占める為に作成した
偽の損害賠償請求書と
明細書を清人に見せ
有無を言わさず
署名欄に記入させ
金融機関の借用書を
新たに追加する篠崎は
清人を直視し
「報酬金 初回25万
お前の躰に払ってやる」
椅子に座り俯く清人が
深紅の唇を堅く噤み
小さな喉仏を揺らし
再度 唾を飲み込んだ
そして
AV撮影に臨んだ清人を
関の部屋まで迎えに行き
シャワーを浴び
下着姿で立ち尽くす清人は
高揚する肌に
無数の傷跡を全身に浮かばせ
清人の肩に刻まれた
深い刺傷へ篠崎が指先を翳すと
清人は顔を背け
瞼を閉じた
シャワーの熱が冷め
白肌に消えてゆく傷跡は
まるで躰に染みついた
白い刺青の様に
肌へ馴染んでいった
「篠崎さん」
朧気な視覚で記憶と重ね
清人を眺めていた篠崎は
目の前に移動した清人に驚く
「お世話になります」
丁寧に頭を下げる清人の顔に
深紅の唇が浮かび
ゆっくりと顔が上がる
緊張を滲ませながらも
取り除かれる不安に
強張る表情は拭い去られ
緩和する清人の顔
落ち着いた清人の表情は
14歳の等身を醸し出す
〝幼い顔で笑い
儚い涙を流す
……子供なんだよ〟
幸介の訴えた言葉が
胸に刺さる篠崎は
言い掛けた言葉を飲み込んだ
子供と大人の狭間を漂う
思春期の真っ只中
大人に成りつつある肉体と
未熟な精神が絡み合う
幸介へ歩み寄る清人が
照れ臭そうに はにかみ
「服を部屋へ
忘れて来ました」
「馬鹿か!」
幸介と戯れ合う清人の姿は
篠崎の目に
14歳の少年として映っていた
清人の訪問を
待ち構える小夜子
関が姿を現し
後を付いて
清人の姿が見え
言葉などなく
歓喜に満ちた
甲高い小夜子の
歓声が響き
清人を羽交い締めにする
小夜子の腕の中で
仰け反る清人は
戸惑いの表情を
浮かべながらも
僅かばかり
頬を紅く染め
微かに口元が微笑んだ
厨房に居た幸介は
若干 不機嫌を残しながらも
背後から清人へ近寄り
清人の背に頭を添わせ
腰元に腕を回す
端に寄り
小夜子と幸介に挟まれ
身動きを封じられる清人を
眺めていた関は
清人を呼び
顔を向けた清人に
卓席に座る篠崎の方へ
視線で合図を送る
ゆっくりと首を回す清人は
視線の先に篠崎を捕え
小夜子と幸介に挟まれたまま
立ち尽くし
篠崎の姿を眺めていた
関係者入口前に
立ち尽くしていた
初対面の清人を思い出す
長い前髪で顔を隠し
俯く清人の横顔
暗証番号を打ち込む
セキュリティケースに
篠崎が手を伸ばすと
邪魔にならぬ様
場所を譲り
「中に入れ」
篠崎の言葉に
顔を上げた清人の唇が
鮮やかな深紅色を晒す
5階事務所へ連れてゆき
清人の外見を調べ始める篠崎
背丈が差程 高くはない篠崎より
細身の清人は 背丈が高く映った
清人の顎を持ち上げ
角度を付け左右に動かし
「見栄えは悪くない」
篠崎の言葉に
唾を飲み込む振動が
顎を持つ指先に伝わり
篠崎はAVの話を
関から聞かされている状態を悟った
関を否占める為に作成した
偽の損害賠償請求書と
明細書を清人に見せ
有無を言わさず
署名欄に記入させ
金融機関の借用書を
新たに追加する篠崎は
清人を直視し
「報酬金 初回25万
お前の躰に払ってやる」
椅子に座り俯く清人が
深紅の唇を堅く噤み
小さな喉仏を揺らし
再度 唾を飲み込んだ
そして
AV撮影に臨んだ清人を
関の部屋まで迎えに行き
シャワーを浴び
下着姿で立ち尽くす清人は
高揚する肌に
無数の傷跡を全身に浮かばせ
清人の肩に刻まれた
深い刺傷へ篠崎が指先を翳すと
清人は顔を背け
瞼を閉じた
シャワーの熱が冷め
白肌に消えてゆく傷跡は
まるで躰に染みついた
白い刺青の様に
肌へ馴染んでいった
「篠崎さん」
朧気な視覚で記憶と重ね
清人を眺めていた篠崎は
目の前に移動した清人に驚く
「お世話になります」
丁寧に頭を下げる清人の顔に
深紅の唇が浮かび
ゆっくりと顔が上がる
緊張を滲ませながらも
取り除かれる不安に
強張る表情は拭い去られ
緩和する清人の顔
落ち着いた清人の表情は
14歳の等身を醸し出す
〝幼い顔で笑い
儚い涙を流す
……子供なんだよ〟
幸介の訴えた言葉が
胸に刺さる篠崎は
言い掛けた言葉を飲み込んだ
子供と大人の狭間を漂う
思春期の真っ只中
大人に成りつつある肉体と
未熟な精神が絡み合う
幸介へ歩み寄る清人が
照れ臭そうに はにかみ
「服を部屋へ
忘れて来ました」
「馬鹿か!」
幸介と戯れ合う清人の姿は
篠崎の目に
14歳の少年として映っていた
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