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第十一話 拒絶

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「あのさ、俺はできる限り自力でやりたいんだよ」
「それじゃあこの子は?」
「でちー」
「これは例外」
「でちー!」

 でちさんから抗議のぺちぺちアタックされるが痛くもかゆくもない。
 何とか説得を続けるもメリルは折れる気配がない。

 だが、容易に彼女を連れて行っていいのか?
 末期になると、いつのまにか俺を人形にする奴だ。

 どうしよう、彼女たちに不信感がわいている。
 おのれ魔王、これが最後の呪いか!(違います)

「どうせアリシアもジャンヌもシーラも来るのよ?はっきりとした答えを出さない以上今更逃げられるなんて思わないで」
「えー…………」
「どっちつかずにする癖は治らないのね」

 どっちつかずの癖って、そんなのないと思っているんだが?
 確かに晩飯とかみんなの意見が分かれたときは好きにしてと言った覚えが結構ある。
 でもそんな大したことじゃないだろ?

 ってそんな話じゃないんだよ今は。
 彼女はずっと俺を睨むようにして見ている。

「……………………」
「ねえ、はっきりさせなさい!」
「…………メリル、君を連れていく事はできない」

 はっきりとした拒絶、恐らく俺がこうして彼女を否定することは初めてだ。
 けれどもこのままじゃ、俺は絶対に幸せになれないと思うんだ。
 20回もあそこからやり直しても、俺がどれだけ努力しても結末を変えられることはできなかった。

 俺もおかしいのかもしれないが、メリルが、いや彼女だけじゃない、俺のも元からおかしかったんだ。

「ど、どうして、そんなことを言うの?私は仲間じゃない!」
「ああ、勇者時代の仲間だったな。でも、いつまで頼ってばかりじゃいけないんだ」
「そんなことない!いつまでも私を頼っていいんだよ!?」

 信じられないように弾劾するように叫んで言う。
 なんだろう、いつかこうなると分かっていたのにいざその時が来ると思った以上に冷静だ。

 旅をしていた時の彼女たちはあんなに信頼していたのに不信感しか湧かない。
 仲間だと、家族だと、妻だと思っていた人に何度も苦しめられたから?
 はは、もう俺はだめかもしれないな。

「話はこれまでだ。多分聞かないと思うけど、他のみんなに会ったら言っといてくれ」
「ま、まって!待ってったら!」
「…………さよなら」

 最後の言葉がとどめになったのか、呼び止める声がピタッとやんだ。
 俺は振り返らずに部屋を出た、やべえ、心臓がバクバクなってる。
 こんなに心臓が鳴ってるのって魔王と対峙した時くらいだ。
 つまり俺は、思っていた以上にそれだけ別れることが辛かったのか。

「はは、なんか失った気分だ」
「でちー?」

 いつの間にかでちさんが折れについてきていた。
 あれ、いつ出たっけ?あ俺と一緒に出た覚えはないんだけどなぁ。

 もう宿にいる必要はない、他のみんなもおってくるんだしさっさとこの町から出よう。
 でちさんを小脇に抱えていざ脱出。
 ここの町を出る時は割と緩い検問を通るだけだ。

「でちちっ」
「なんだ?何か不満なのか?」
「でちっ」

 片手をあげて何か抗議しようとしても何も分からないって。
 せめて文字が書けたら筆談で意思疎通ができるのに…………

 もうここの名産品には目もくれず町から脱出した。
 まだ商品は残ってるし、お金も十分に余裕があるからぶりに商売する必要はない。
 もう次に大陸に逃げる算段をしておかないといけないな。

 全員がこの大陸に集まっているとしたらずっとここにいることは不可能だ、ってでちさん蝶々を追っかけて道からそれるなよ!
 ああもう、転んだから土まみれじゃん!

「でちー」
「こら走るな!土拭いてあげるから大人しくしなさい!」
「でちっ」
「まてこらー!」

 でちさんとの旅は続く。

 しかしすぐ躓いた。

「ここどこ!」
「でちちー!」
「でちさんを追ってたらこんな所に…………」
「でち?」

 うろちょろするでちさんを捕まえようと追いかけていたら知らない森の中にいた。
 くっ、なんかはぐれてもいつの間にか戻ってきそうなでちさんだけどなんかほっておけなかったのが運のつきか!

「森ってのは分かるけど、どっから出たらいいんだ?」
「でちちー」
「それはまさか、方角が分かるというあの『ホーイジシャーク』!?あ、でも針がぐるんぐるん回ってて役に立ってない…………」
「でち…………」

 分かってて出したのだろうけど、これも役に立たないという報告だったんだろう。
 上げて堕とす様子はないし、落ち込んでいるところを見ると純粋に役に立ちたかったんだろう。

 仕方ない、森を一直線に歩き続けるしかない。
 出る方法はそれくらいしか思いつかないが、帝国の近くにある森は大きいと聞いたことはないから大丈夫でしょ。

 俺とでちさんは森を突き進んだ。
 無言で、とある結界にぶち当たるまで、無実の罪でエルフにとらわれるまで俺の足は止まらなかった。
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