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第1章 全ての始まりの記録

abyss:58 ハルキ VS レグルス開戦

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地上まで続く大穴からローグたちの姿が見えなくなった。
俺はレグルスに身体を向けるとディストピアを低く構え、一呼吸する。

俺は生まれて両親からたくさんの愛情を注いで育ててもらい、いまここに立っている。
13年前の大爆発で無関係な大勢の人が殺されたこと、父さん母さんが離れ離れになったこと、遥お姉ちゃんが犠牲になったこと、レグルスの謀略で母さんが捕虜になりレイプされたこと、ティナが攫われたこと…………
母さんがたくさんの犠牲をここまで頑張ってくれたから俺は生きて辿り着くことが出来た。

「レグルス。お前はこの星にいらない、俺が倒す!」
全身に、骨という骨に、筋肉に、全神経に一気に力が湧き上がってくる。
ディストピアの刀身が赤紫と黒曜に光りだす。
(マジで魔王みたいな剣なんだが)
「お前が下らないと言った人間が、お前が否定した愛の力がズタズタにお前を破壊していくのを観測しやがれ!!!」

俺の未知の力を察知したレグルスは瞬時に両手をバッと広げ迎撃態勢になる。
「予備電源! 最上級総攻撃起動マキシマイズ!」
レグルスの顔面、頭部に無数の円形のコマンドモニターが表示された。
指を上に向けると本拠地コフィンの損壊していない四方の壁が無数にパカッと開いて中から数百体はあろう正方形の白い物体【CUBEキューブ】が射出された。
形はフード男が乗っていた物と同じだが、違うのはCUBEはその場で不規則な高速回転を始めたことだ。

レグルスが上に向けていた指を俺に向けると全方向からCUBEが同時に飛んできた。
どういう原理で浮いたり飛んで来たりしているのかわからないがかわしても空中で方向転換したりと縦横無尽に襲ってくる。
回転が速すぎてほぼ球体にしか見えない。当たればえぐらるほどの高速回転をしている。

だが今の俺は動体視力が跳ね上がっているためCUBEの軌道がどの方向から襲ってきているかをゆっくり見え対応することができた。
「こんなことまで出来るのか、すごいな」
ディストピアの能力がなにも分からないまま、ぶっつけ本番で闘っている。
全身能力すべてが増強ということは脳の思考処理、神経伝達速度も同じように上がっているのだろう。

「最初からCUBEこいつを出していたらお前の勝ちだったぞ!!!」
多数のCUBEが四方から襲ってくるが俺に届く前に隙間をジグザクにすり抜けながらかわす。
決してCUBEが遅いわけではない、ディストピアを持つ前の俺だったら2体かわすのが限界で3つ目の直撃でミンチになっていた。
いまの俺が早すぎるのだ。

襲ってくるCUBEがあれば、一か所にある程度固まって浮いているだけのCUBEも多数あった。
本拠地コフィンの右側にそびええ立つ黒い円柱の前で、床から天井まで一定間隔で配置されている。
「そういうことか」
あの黒い円柱はおそらくレグルス本体だろう。
違ったとしても構わない、守るような配置をしているなら重要な何かなのだろう。

よし、ちょっとレグルスを試してみようか。
俺は黒い円柱からわざと遠ざかるようにこの空間の反対側に走った。
「逃げ場はありませんよ!」
余裕のレグルスが叫ぶ。
多数の攻撃CUBEが一斉に追いかけてくる。黒い円柱前の防衛CUBEは動かない。
空間の端に行き俺に向かってくるCUBEをある程度引き寄せたところで、一気に黒い円柱に向かって突き進んだ。
黒い円柱前のCUBEが高速回転を始める。

レグルスが気付いた。
始めて黒い円柱前の防衛CUBEが襲ってきた。
逃げてばかりではなくそろそろディストピアで反撃を始めようか。

ヒュカッ

回転しているにもかかわらずCUBEは自分でも驚くほど簡単に真っ二つになった。
切れ味よすぎ!
「何これ!ディストピア優秀すぎ!」
『我の刀身は宇宙硬度100だからな』
「宇宙硬度? よくわからないけど、めちゃくちゃ硬いんだね」
関心している暇はなく次々と防衛CUBEが襲い掛かってくる。

ヒュパパパパ! シュカン!

ほぼ同時に5体のCUBEが斬られる。
「馬鹿な!? そんなの人間には不可能だ!」
レグルスが驚いている。

防衛CUBEはまだまだあるが、背後から攻撃CUBEが全部戻ってきている。
黒い円柱をディストピアで斬る!

ザン!

あっさり円柱の外壁が裂ける。
「や、やめろ!!!」

一回斬っただけじゃ壊れたとはいえない。どこまで壊したらレグルスが機能できなくなるのかわからない。
中途半端に壊してたら復活するかもしれない。
斬撃の追い討ちをかけ天井と床に繋がっている円柱全体が崩れ落ちるまであらゆる角度から何度も何度も何度も何度も何度も斬り刻んでやった。

何度も何度も何度も何度も何度も徹底的に。

崩れ落ちても巨大だった黒い円柱の残骸から光の発光が完全になくなるまでディストピアを振り続ける。
持ち上げられる大きさの残骸は飛んでくるCUBEに投げつけ、粉砕してもらう。

「おのれ! おのれ! おのれ! よくもやってくれたな!」
レグルスから怒気の言葉が吐き捨てられる。
「もしかして怒ってる? はっはっはー! 感情はないんじゃなかったのか?」
レグルスの足元からCUBEが出現しレグルスごと宙に浮かび上がる。
レグルスを乗せたCUBEは回転せず常に俺と一定の距離を保つ。
「俺が怖いのか?もしかして本体がやられたからお前がやられるとゲームオーバーとか?」
俺は不敵な笑みを浮かべてレグルスを挑発した。
「────!」
レグルスの顔が忌々しいほどに歪む。
これは図星だな。

さっきまで余裕があったのとは違い、感情が出過ぎてわかりやすすぎる。
つまり目の前にいるレグルスを倒せばこの闘いは終わる!
さらに意識を集中して身体能力を向上させ、レグルスに突っ込んで行く。
レグルスは空中を逃げながら両腕、両指を不規則にカクカク動かす。
四方にあるCUBEがあらゆる弾道で飛んできた。
これまでは互いのCUBEがぶつからない動きだったが、いまはCUBE同士が衝突して壊れる勢いで俺に向かってきている。
「クッ!」
さすがに数が多い!
猛襲してくるCUBEをいくつもブッた斬るが数が多くてキリがない。

俺の着地を狙って襲ってくるのをブッた斬り、躱せるのははかわす。
それなりの数を斬ったがこの空間が広いため物量は圧倒的に多い。
レグルスは一定距離を常に取り続けているためなかなか辿り着けない。
(ならば地の利を生かすのはお前だけじゃないぜ)

壁面を垂直に蹴って天井まで駆け上がる。
ディストピアを天井に突き刺し、逆さまの姿勢で駆け回りながら天井を無作為に斬り込みを入れていく。
「ウオオオオオオオオッ!!!!」
天井破壊中の俺にCUBEは天井で圧し潰そうといくつも衝突してくる。

斬り刻まれた天井はCUBEの衝突の衝撃と天井自らを支えられなくりなり自重じじゅうでメキメキガラガラと崩れ落ちはじめた。
広範囲に落下する瓦礫の下を飛行しているCUBEは瓦礫と激突。
小さな瓦礫なら粉砕するCUBEもあるが圧倒的な瓦礫の質量、物量に大半が押し潰されていった。
よし、だいぶ数を減らせた。

レグルスは完全に余裕をなくした表情を浮かべていた。
「ちょこまかちょこまかと小賢しい!」
レグルスが両手を胸の前で合わせて握りしめる。
残ったすべてのCUBEが四方八方から同時に俺に飛んでくる。
逃げ場を無い状態にして圧倒的物量で俺を押し潰す気だ。
「生命活動終了! 死ね!」
レグルスは叫び、ローグが天井にレールガンで開けた穴から地上に飛び去っていく。

地上に逃げたレグルスと向かってくるCUBEに囲まれた俺はこのあと起こることを予測できた。

俺の周囲ですべてのCUBEが爆発し、本拠地コフィンそのものが大爆発を起こした。
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