カーネイジ・レコード

あばらい蘭世

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第1章 全ての始まりの記録

abyss:47 夫婦激闘

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ガキキキン! ガキンガキキキキ! 
カンキンカカカカキン!

母さんと父さんの攻防は一進一退の激闘を繰り広げている。
互いの武器が激しくぶつかるたびに火花が撒き散らす。
父さんは両腕が金属でできているため両腕全部で防御可能だ。
母さんは父さんの肉体に攻撃することができない為、攻撃範囲が狭く非常に不利な闘いを強いられていた。

「嘘でしょ─── あれは!」
ティナが驚いた声を漏らす。
「どうしたティナ?」
「今の技は──── 昇華詠翔剣しょうかえいしょうけん? 今度は爆砕独歩ばくさいどっぽ──── 獅子落下斬ししらっかざん
ティナの口から母さんが繰り出している剣技と古武術の名前がスラスラ出てくる。

ちょっとまて。俺も母さんからいろいろ技を習っているけどそんな技名じゃないぞ。
龍神邪火りゅうじんじゃっか仁王におうの上位互換、黒焔くろほむらまで!?」
おいおい、厨二病なネーミングばかりじゃないか。
ネーミングは違うけどティナが母さんの技を知っているのは例の師匠のせいか?
「ハルキのお母様、本当に何者!?」
「逆にティナが何者か知りたくなった───んんっ!」
興奮しているティナの手がペチペチと顔にあたって会話を途中で遮られる。

螺旋顛凱らせんてんがい! あれを躱すの?! 
邪獄冥牙閃じゃごくめいがせん! 決まった!」
え!? なんだって?! じゃごくめいがせん? ど、どの技?
母さんと父さんの闘いは人間の限界を超えた動き、お互いのスキルを出し尽くしての攻防が続いている。
闘いと技術の高さに見入ってしまうが、ティナの実況が妙に気を散らしてくれる。
俺からしたら家族の命が掛かっているんだぞ。
ティナの興奮した実況はまだまだ続く

「明日は月曜日! オペラ・ノヴァーク!」
月曜? いまの技名なの? 漢字だけじゃなく、セリフやカタカナの技まであるんかい!!ちょっとティナさん、技を出すときカッコよく叫ぶ人?

俺がティナの変な実況を聞かされている最中、死闘を繰り広げている夜春よるは将暉まさきは13年ぶりの再会と闘いを楽しんでいた。
夜春よるは、びっくりするほど強くなったな」
「あなたを助けるためだけに13年間、牙を磨き続けたわ!」
「昔の俺ならもう勝てないかもな」
「どうかしら? もう少し有利かと思ったけどその機械の腕の防御力が厄介。あと少しのところで私の牙が届かない」

夜春よるはは手加減なしで速攻で終わらせるつもりでいたが将暉まさきの元々の身体能力フィジカルの高さを最大限に引き上げられているため攻防の中で実力差を理解していた。
操っている阿久津あくつをチラリと見ると、胸の前で両手を握って祈りのポーズをしながら、マスクはぴえんの表情をしている。
「あいつ本当にムカつくわね!」
「本当に嫌なやつだな!」

2人の息はピッタリ合っている。
「俺の葬儀はやったのか?」
「本国はやったわ。バカバカしくてムカついたから暴れて止めに入った参列者一個小隊分を潰しちゃった。みんな私の悲しみに付き合って殴らせてくれたんでしょうね。流石に上司、上官を何人か殴ったのは大問題になったけど」
「はは! 軍法会議ものじゃないか」
「半年間休暇を取らされたわ、それも優しさね」
「あいつらは元気しているか?」
「みんな元気よ、あなたの帰りを待っている。私も隣にあなたがいない人生なんて考えられないわ」
「そうか元気しているか。 それと─── 1人でハルキを立派に育ててくれてありがとう。君に似て可愛い顔しているじゃないか」
「将来はあなたみたいにカッコよくなるわよ」
「いやいや、君に似ているって」
「いやいや、あなたよ───」
と親バカな会話で盛り上がる。

夫婦仲がいい光景は阿久津あくつにとって何一つ面白くなかった。
何かひらめいたのか、拳を手のひらにポンとおいた。
「ハルキ、あなたが高校一年生を覚えていますか?」
阿久津あくつが俺に話しかけた来た。
高校1年? 
仕事に行った母さんがずっと帰って来ないし全く連絡が取れない時期だった。
帰って来ない理由、思春期真っただ中の俺は高校受験も何もかも自分一人でやって、捨てられたのではないかという不安から母さんにイライラしていたし荒れた学校生活を送っていたことを思い出す。
「高校生の俺が何かお前と関係あるのか?」
「いま教えてあげます」
スッと手を上げると視覚化された3D映像の拡張現実が広がっていく。

室内に天井から綺麗な青空の映像が広がり遠くに山岳地帯が出現した。
砂漠の国でみるような山々。
次々に拡張現実が現れていく。中東地域で見るコンクリート工法の建物が建つ。
映像技術はすごいが何がしたい?
俺が映像の意味を理解できたのはこの後だった。
阿久津あくつ!!! やめろ!!! お前だけは絶対に殺す! 必ず殺す!!!」
「いやああああああぁぁぁぁぁっーーーーー!!!!!やめてぇえええ!!!」
母さんが映し出された景色を見て取り乱し始めた!
夜春よるは! 俺の目を見ろ!!!」
取り乱している母さんに父さんは攻撃しながら呼びかけた!
「見ないで! 聞かないで!」
母さんは父さんの攻撃を捌いているが動揺していて攻撃にキレがなくなっている。

父さんは恐ろしい形相で憤怒ふんどし叫んだ。
「俺の女を傷つけたお前を許さん!!! 阿久津あくつ!楽に死ねると思うな!!!」

俺は映像を見た母さんが取り乱しているのかまだ意味が理解できない。
「何を見せる気だ!?」
「意味などない。あの時の事実をそのまーま伝えてやる。これを聞いた将暉まさきはそりゃあもうすごく怒り狂ってくれたーよ!
ハルキ、お前はどういう反応になるのか楽しみでしかない!」
ヘルメットの顔にニコニコマークが浮かぶ。

夜春よるはの精鋭部隊はこの国の軍事作戦を完ぺきに遂行するはずだった。では、なぜ作戦は失敗したか教えてやろう。思い出しても笑いが止まらない。クックック、私が敵側に情報をリークしたのだよ!
軍備調達金として多額の資金を渡す条件に女は殺さずに捕虜にしろ。殺さない限り毎月、送金してやる、と。夜春よるはの軍事作戦開始前に敵に奇襲させて、ポンッ! 誘拐成功!」
両手を広げる。

「捕虜になるだけでよかったんだけど…………なんかさー、ククク、敵兵士に
3ヶ月くらい毎日まいにちまーーいにち、輪姦まわされて二度と子供が産めない身体になっちゃったみたいなんだよねー!」

俺は巨大な岩が頭に落ちてきたような衝撃をくらい頭が真っ白になった。
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