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第1章 全ての始まりの記録
abyss:40 フード男の生い立ち②
しおりを挟むフード男の口からティナを犯した。
と聞かされた。
信じたくはない、嘘であってほしい。
しかしフード男の生い立ちや言動、態度を見るに事実だろう。
そう、ティナはフード男に犯されてしまったのだ。
「おおおっ!どうしたどうしたハルキくぅーん!戦意喪失しちゃったかぁ」
フード男はニタニタした笑みを浮かべて舌をベロベロさせている。
こういう時は冷静に、冷静になれ。
事実かどうかは俺の目で確かめろ。
心を乱すな、乱されるな。
目の前のコイツを倒さない限り確認することはできない。
例え事実でも俺はそれを受け入れる。
受け入れられる。
よし、大丈夫だ。
俺は進行方向に向かって全力で駆け出した。
こいつに構っている時間が無駄だ。
「俺から逃げられると思うんじゃねぇ!!!」
フード男も追いかけてきた。
チラリと背後を見るとさっきまで姿を捉えることが出来なかったフード男がものすごい速さで追いかけてきている姿が見えた。
(こっちもトップスピードならあいつの動きを追える)
通路の左側に身体を寄せながら駆ける。
これで背後と右側からしか攻撃はして来ないはず。
フード男は俺の横に並びククリナイフの斬撃をしてくる。
俺はダメージを喰らいつつ致命傷になる斬撃は受ける。
フード男の姿が視界から消える、と同時に俺は直感でジャンプした。
さっきの場所に伏せて足払いをしたフード男の止まった姿があった。
それを無視して全力で駆ける。
追いかけてくるフード男。
ザシュザシュ
背中を2、3回斬られたが、それも無視してとにかく本拠地に向かって走る。
「俺を無視するんじゃねぇえええええ!!!!!」
若干さっきまでより速度が遅くなっている気がする。
(スタミナ切れか)
「待てっつってんだろ…………!?」
俺の右肩にナイフが突き刺された。
刺した瞬間に動きが止まるのを待っていた!
フード男の腕を右手で鷲掴みにする。
「もう離さないぞ!」
「しまった!」
左手でフード男の襟元を掴み走る勢いを上乗せした状態で床に背中から叩きつけバウンドさせる。バウンドの勢いで1回転させてから殴りつけるように床に叩きつけた。
ドガァ
「グゲぇえええっ!!!」
気持ち悪い悲鳴をあげるフード男の襟元を持ち上げ、何度か地面に後頭部を叩きつける。
動きが鈍くなったところで掴んだままの右手に関節技を決めながらうつ伏せの姿勢に持っていく。
「クソ! オラァ!ど けよゴルァ!!!」
ジタバタ暴れるが力はそこまで強くなかった。
フード男はククリナイフを離さなかったのでそれを奪って彼の左足のアキレス腱を切断する。
「!?!?!?? イッテェえええええ!!!!」
これであの速さで動き回ることはできないだろう。
「その痛みから解放してやる」
関節技を決めている右手と左手を入れ替え、右手にククリナイフを握る。
フード男の横顔にナイフの切先をゆっくり置いてから振りかぶった。
「やめろ!嘘だ!さっきのは嘘だ!!!」
俺は振り下ろすナイフをピタリと止めた。
「本当はあの女には何もしてねえ!」
「── 嘘だ。お前は平気で嘘をつく」
「嘘じゃない! 攫った女の部屋に行ったらどこにもいなかった!!!
マジだ! 信じてくれ! 本当は何もしていない!!!」
フード男の顔は涙と鼻水とヨダレでぐちゃぐちゃになっていた。
「じゃぁ何処に行ったんだ? 都合よく逃げたというのか?」
「俺に殺処分をさせてた女に連れて行かれていたんだよ!!!」
フード男は必死に頭を振りながら抵抗してくる。
「お前の言うことを信じると思うか?」
俺はもう一度ナイフを振り上げた。
「ヒイいいっ!!! お願い殺さないでぇええええ!!!」
有利な時は調子に乗るくせに自分が弱者の立場になると自分のことしか考えていない。
それで許されると懇願してくる姿は滑稽で身勝手だ。
俺はナイフを思い切り振り下ろした。
ザグ!!!
「かはっ ── ひゅぅ~ヒュ~~~」
フード男の顔の横、床に深々とククリナイフを突き刺さした。
フード男が過呼吸をしながら恐る恐る横目で俺をみる。
俺は床に刺さったククリナイフを力任せにへし折り、フード男の横顔に思いっきり拳を叩き込んだ。
ピクピク痙攣しているフード男の両足を起き上がってから掴むとジャイアントスイングでぐるぐる回した後、壁に投げ飛ばした。
無抵抗な状態で壁に派手に激突したフード男は完全に気を失った。
フード男の言ったことが真実かどうかはわからない。殺されないための演技だったのかもしれない。悲惨な環境で育った彼なら人を騙す演技くらい簡単にできるかもしれない。
最後の必死な命乞い…………
もし真実だとしたらティナが何もされていない可能性がある。
「俺は殺す技術はあるけど、殺さないで済むなら殺したくないんだ」
次の闘いに向けて自分の身体のダメージを確認した。
服のあちこちに裂傷はあるが失血性ショックはしなさそうだ。
激痛にさえ耐えればまだ闘うことが出来る。
骨は小さなヒビはありそうだが折れてはいない。
「本拠地まであと少し…………ティナすぐ行くからな」
ポタポタと床に血を垂らしながら俺は本拠地を目指した。
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