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32話 ゴブリンキング再び

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 だいぶ金貨も貯まってきたし、またぞろ追加でミラルダさんに納めておくか、と思いながら、明日引き渡す分の魚を釣りに王城隣の池へと向かう。ある程度釣れたら、ラザロの行きたがっていたゴブリンキングの洞窟に行ってもいいかもしれない。
 各々自分のいい場所に陣取って、と思ったのだけれど。スワリナは僕にくっついてのんびり寝ているし、バーニィもだらだら話していたい、とすぐ近くで釣り糸を垂れている。ラザロも僕を挟んでバーニィの反対側に陣取ったし、結局はみんなすぐそばで釣ることとなった。まぁ、糸は絡まないんだけどね。


「ココット、そういえばさ、妹ちゃんがいるって話じゃない?」
「そうだね、いるよ。」
「妹ちゃんはゲームしないの?」
「まだ子供が小さいしね。それ以前もあまり興味は無かったようだけど。」
「あ、おれココットの姪っ子の写真見たことあるぞっ。赤ちゃんちょう可愛いんだっ。」
「…可愛いのはギルマスでしょう!?」


 ラザロがバーニィに飛びかかってうりうりと頭を撫でたりおっぱい揉んだりし始めたのを呆れた顔で僕が見ていると、スワリナがボソリと呟いた。


「ゴブリンはあっという間に大きくなるから可愛くないさね…。」
「そうなの? そういえば小さいゴブリンって見たことないな。」
「生まれて三日で成体になるさね。マザー達がローテーション組んで三日に一回は補充されるけど、奥に隠して育ててるから会わなくて当然なのさね。」
「う、うーん。この間、目についた成体はマザー以外倒しちゃったけど、補充は効くものなの?」
「奥にいた幼体がすぐ大きくなるさね。そうすればまた補充されるさね。」
「生々しいわね。」


 バーニィをもみくちゃにしていたと思ったラザロが気がつけばまた隣で竿を振っていた。…バーニィは真っ赤な顔で仰向けに転がっていた。シャツもスカートもずり上がってるし。おっぱい揉むぞ。
 ゴブリンの生殖方法については人間と変わりがないのはまぁ、わかっているんだけどね。マザー達はあくまでも種族の増殖に関わる立場であって、快楽のそれが目的じゃないらしく、相手はマザーが選べるらしい。クイーンだったスワリナはゴブリンの女性のトップという立場だったらしいのだが、特に繁殖活動には関わって無かったそうな。一応キングの配偶者という立場だから他のゴブリン達は手を出してこないし、変に指名しようものならキングがそのゴブリンを殺してしまうらしく、キングがスワリナが人っぽすぎて云々といって他のゴブリン女性に手を出している状況で悶々としていたと。

 たっぷりと一時間は釣っただろうか。それなりの数釣り上げた僕たちは一度竿を納め、ゴブリンの洞窟に向かうべく移動を開始した。何時も通り、バーニィはふんふんと歌いながらなのだけれど、レベルの上がりすぎの心配が要らなくなった僕も一緒に歌いながらあるく。ラザロとスワリナは特に歌うようなこともないけれど、顔が緩んでいるので楽しいのだろう。
 旧市街区を抜け、一応冒険者ギルドでゲルトさんの農園でゴブリンの駆除クエストが出ていないかを見てみると、あれからだいぶ日数が経ったこともあってか、依頼が復活していた。話を聞いてみると適正ランクが上がっていてグループ推奨になっていたのだけれど、その辺りは問題なく受けることが出来た。


「なんだぁ、兄ちゃん、また連れてる女増えてるじゃねえか。」
「…どうも。」
「また注いでやるから僻むなよ、おっちゃんっ。」
「お、おお。姉ちゃん優しいじゃねえか。」

 僕の方を呆れた顔で見るおっちゃんのジョッキにバーニィが酒を注いでやると、おっちゃんはいつものように喜んでジョッキを掲げる。

「美人の酌で今日も酒が美味い!げはは! いい姉ちゃん捕まえてるぜ、兄ちゃんはよぉ!」

 上機嫌で手を振ってくるおっちゃんに会釈を返し、僕達は冒険者ギルドを出たのだけれど、ラザロがぽつりと一言。

「テラコレイムじゃ、腕試しイベント発生してたわよ。勝ったらSPくれたわ。」
「ほほう。」

 全部の街で同じじゃあアレだから、少しずつ変えてるんだろうけどなぁ。この辺は運営の遊び心なんだろうけど、一体どういう仕組みにしてるんだろうね。運営からのクエストが発行されていて常時依頼で受けてるとか? 同じことしか言わない、やらない紋切り型のNPCじゃなくて、本人の生活がちゃんとあって、その上での行動なわけだからクエスト発行が一番可能性が高そうだけど。

 そんな事を考えながらゲルトさんの農場に向かう。流石にあの後顔は出していないけれど、覚えていてくれているだろうかと思っていたけれど、ゲルトさんは笑顔で僕らを迎えてくれた。


「おお、あの時の兄さんじゃないか。人は増えてるけど、今回も受けてくれるのかい?」
「ええ、今回もお世話になります。お変わりありませんか。」
「前回兄さん達から駆除してもらってから、暫くの間は全く問題なく暮らせてたんだがね。ここ最近またゴブリン達がウロウロするようになっちまったんだよ。まぁ、嫁さんと子供はまだ避難してないがね。」
「あれ、それじゃあクエストを依頼なさったのはここ一日二日のことですか?」
「そうだね、昨日依頼したばかりだから、早くて助かったよ。」


 ゲルトさんにはもう巣の場所もわかっていることだしサクッと行ってきますね、と僕らはこの間の洞窟へと向かう。クエストを受けれた事自体はタイミング良かったなぁ、とは思ったものの、被害を受けている人の前でいうことでもない、と口に出すようなことはしないのはやはりみんなそれなりに大人だからだろう。

 前回来たときよりも戦力は格段に上がっているわけだし、僕自身もあの時よりもスキルも取ってればレベルも上がってるので、楽に行けるだろうと僕らは特に作戦を立てることもなく洞窟に突入する。どんな感じだったかはラザロにもスワリナにも話してあるしね。


『ファイヤーボール』


 詠唱短縮と多重起動のスキルをいいことにボンボン魔法を放り込み、殲滅して先に進む。
それでもわらわらと寄ってくるゴブリン達にはバーニィが先陣切って槍を持って突っ込み、スワリナも女王の盾クイーンズ・イージスを発動してから盾を片手に進んでいく。ラザロは盗賊系のスキルもあるそうだけれど、僕と一緒にファイヤーボールをぶん投げている。二系統分のスキルを取っているおかげで多重起動に範囲拡大、威力拡大については取れてないらしいのだけど。
 バーニィは槍のスキルもしっかりと覚えて使っているし、スワリナもスキルをガッツリ発動してゴブリンに仕事をさせていない。前よりも楽に殲滅し、ゴブリンジェネラルなんかもサクッと袋叩きにしていると、困惑した様子のキングが槍を片手に出てきた。


「グギャギャ、ゲギャ?」

 どうやらスワリナに向かって何か言っているようなのだけれど、流石に言語スキル取ってないから意味不明だな。

「ゲギャギャギャ!!」

 スワリナが少し下がって僕に撓垂れ掛かると、ゴブリンキングは大きくため息を吐いた。僕がスワリナの頭を撫でると、そろそろいいでしょ、とラザロが詠唱を始めた。
 それと同時に、バーニィとスワリナが突っ込んでいく。僕も遅れ馳せながら最大火力の火魔法を全力で多重起動して叩き込む。まぁ、前回で大体どれくらい突っ込めば倒れるかはわかっているし。


「……。」


 前衛の二人がゴブリンキングと接敵するとほぼ同時に二人分の魔法、といっても数十発の魔法が直撃し、蒸発する。ひどい。


「出落ちだわね。」
「あっさりだったねっ。」
「そうさね、可哀相なくらいさね。」
「こちらのレベルは確かに上がってるし、スキルでのブーストもかかりまくってるとはいえ、やりすぎ感はあるなぁ。」
「多重起動が特に酷いわね。消費軽減とか威力拡大も合わさってるから凶悪。」


僕は肩をすくめて一応手に持っていた武器をしまった。

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