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三章
20年
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二人の王を乗せた黒龍は、あっという間にゴダール城の大広間の玄関口に到着した。
ラウルはララの手を引いたまま、ズカズカと広間に入ってゆくと、そこには、王やトーマたちの帰りを今か今かと気を揉みながら待っている、フォレスをはじめとする侍女たちや、側近の者達が集まっていた。
「まあ、陛下!! おかえりまさいまし! よくご無事で……」
「やあ、フォレスただいま」
フォレスがラウルの顔を見てホッと顔をほころばせると、ラウルは誰かを引きずりながら、脇目も振らずに王宮の奥へと向かって歩いてゆく。
「あの、陛下……? その方は……?」
「ちょ、ラウル、待て……」
ラウルが抱えるようにして引き連れているのは、銀髪をなびかせたあの懐かしくも美しいシンの姫だった。
「まあああ、ララ様!!」
「やあ、フォレス! 久しぶりだな! 元気だったか?」
言っている間も、ララはどんどんラウルに引きずられてゆく。
「はい、おかげさまで……」
フォレスがつられて後についてゆく。その後ろから、あっけにとられた臣下たちがゾロゾロと続く。
「ちょ、待って、ラウル! もう!」
なんとかララが抵抗して少し引き返してきたものの、ラウルはすぐ戻ってきて容赦無くララを引きずってゆく。
「や、もう! す、すまない、フォレス、なんかもう、ラウルはさっきからこんな調子で、年甲斐もなく聞く耳持たないんだ……」
「え、ええ、あの、ララ様、お元気そうで何よりですわ……ちっともお変わりにならない。今もお美しくて……」
フォレスも必死で後を追う。
ラウルはすでに、広間を抜けて長い廊下を歩いてゆく。
「あは、ありがとうフォレス……」
「フォレス、俺がいいというまで、俺の部屋には誰ひとり近づけるな」
「は、はい、陛下……」
「ああ、すまないフォレス! あとでゆっくり……ああそうだ、久しぶりにおまえの料理が食べ……」
「たい」という言葉を言い終える前に、ラウルはララを引っ張って廊下を曲がって姿を消した。
フォレスがしょうがないかというように、溜息をひとつついて立ち止まっても、他の臣下たちはわけがわからないというようにまだ王の後を追おうとしている。
慌ててフォレスがその前に立ちはだかった。
「みなさま、お待ちくださいませ!! これより先は、この老女の命に代えても行かせるわけには参りません!」
長年この王家に仕え続けてきた老女官長の言葉である。逆らえるものは誰もなかった。
ガランとした味気ない王の部屋の床に、服が転々と落ちている。それは、天蓋付きの大きなベッドまで続いていた。紗のカーテンの向こうでは、二人の人影が蠢いている。
「や、ちょ…」
「ラゥ…」
「待っ」
「んんっ……」
「ラウル」
「おまえ、は…」
「どうして…」
「いつも……」
「んん……」
「ぁ」
「うあ…」
「あん」
「やめっ」
「あ」
「あ」
「ああっ」
「ララ……」
「あぁ」
「ララ……」
「あうっ、ラウル……」
「ああ……」
ラウルの逞しい裸の背中が、細身の白い裸体を組み敷き、全身をぶつけるようにして貪っている。
ギシギシと軋む寝台の音が、ラウルの激しい思いを物語っている。
やがて、静かに止んだ。
「はぁ、気が済んだ……」
「はぁ、はぁ……そなたと言うやつは、ちっとも変わってないじゃないか」
ララが呆れたように言っている。
「私たちはもういい歳だぞ。こんな思春期の若造みたいな……」
ララの愚痴を聞いているのかいないのか、ラウルはララの頬を撫でながら、熱っぽい目でずっとララの顔を見つめている。
「……そ、そんな顔をされたら何も言えなくなってしまうじゃないか」
ララが照れたように目を逸らした。
そのララをラウルが抱き寄せる。
「……思うだけで触れられない。この20年ずっとだ。だから、目の前にしたら触れずにはいられない。俺は歯を食いしばるようにして耐えてきたんだ……」
「ラウル……」
「だから、おまえが俺を責めるな……」
ラウルがもう一度ララにキスした。
「あの子達は、そなたと別れて2年後に身籠っていることに気づいたんだ」
「信じられん……」
「ふふ、普通の恋人同士なら大ゲンカになるセリフだな」
「ああ、いや俺は……」
「うん、わかってる。私だって最初は信じられなかった。あまりにも非常識すぎる」
ララの指先が、ラウルの身体中の傷跡ひとつひとつにそっと触れる。
「でも、トーマのあの髪と眼を見れば、俺の子だと言うことは一目瞭然だ」
「うん。それに、並ぶとよく似てる」
「ああ、そういえば城でもよく言われたな。トーマが黒にするとしょっちゅう言われた。でも、俺からすればおまえに似てる気がしてたんだ」
「そうか……。おそらく、初めて抱き合ったあの泉で身籠ったんだ。つまり、私がシンと聖婚する直前だ」
その時の受精卵が、聖婚の衝撃で凍結したまま子宮の中で眠っていたのではないかとララは言う。
「そう言えば、そのあとから月のものがないと言ってたな」
「そう。そして、その後会うたびに飲んでいた避妊薬の銀鱗丸が凍結を長引かせていたのじゃないかと思う。そして、そなたと別れ、銀鱗丸を飲まなくなった途端、凍結が解除された……」
「なるほど。シン王宮は上へ下への大騒ぎだったろうな」
「それはもう……」
ララが懐かしそうにクスリと笑う。
「でも私は、正直に言って喜びよりも怖さの方が優っていた。前王のおばあさまから、シン王の子どもがどれほど厳しい病に苦しむかは聞かされていたから」
ララが妊娠に気づいた時点では、王位を継いだ後の、最後に会った時の子どもだと思うのが自然だろう。
「でも、どうしても産みたかった」
ララはそれ以上、自分がどれほど不安と緊張に苛まれていたのか言わなかったが、察して余りあるものがある。そして、その時のララに寄り添えなかった自分の立場を思うと、ギリギリと内臓がよじれるほどの悔しさと情けなさに苛まれる。
「そばにいてやれなくて……」
「よしてくれ、ラウル。そなたはそなたで、命の危険に苛まれていたんじゃないか」
「ララ……」
命の危険に「怯えていた」と、ララは言わない。
ラウルが、命など惜しくないと知っているからだ。そんな命でも守らなければならない日常に、文字通り苛まれていたのだ。ララはそれを知っている。それだけでラウルは十分報われると思った。
「やがて、小さな双子が生まれて、日々丸々と太っていって、嬉しくてかわいくて、夢中になっているうちにどんどん大きくなっていって、今日まで幸せだったんだ、私は。だから、そなたが気に病むことなんかない」
「そうか、それならよかった……」
「でも、シンの王族病の懸念はあったから、あの子たちが産まれてからは何度も慎重に検査した。ところが不思議なことに、いくら調べてもシンの王脈が出てこない」
「へえ、検査でわかるものなのか……」
王脈は血液を調べればわかるのだそうだ。最近発明された、眼鏡のレンズを二つ組み合わせて使う顕微鏡という機械を使って、血液の中に含まれている成分を診るのだ。
「だから、あの子達はラウルの王脈は継いでも、私の、シンの王脈を継いでいない。クレーネの髪と目の色を見たろう?」
「ああ、出会った時のおまえと同じだった」
「王脈でも庶民色の者もいるが、クレーネもそれだ。その特徴は黒龍の王脈と同じだった。シンじゃない。何度も血液をとって調べたから間違いない。そしてトーマはさらに黒龍の特徴が強く出た」
「なぜ今まで黙っていた……?」
「……あの子達が生まれて少しすると、そなたが殺されかけて、瀕死の重傷を負ったという知らせが届いたからだ。実を言うと、いてもたってもいられなくて、その日のうちにシンでゴダール城に忍び込んだ。騒ぐ医師たちを説き伏せて、そなたの手術は私がしたんだ。とても危険な状態だった」
「え!? それは気づかなかった」
「ふふ、意識不明の重体だったからな。危険を脱したところを見計らって私はシンに帰った」
「そうだったのか……」
「でも、私は母として、どうしても、子どもたちをそんな危険なところへやれなかったんだ。すまない……」
「いいんだ。それが当然だ」
「そのうち、ジルベールというあの少年が、ラウル王の子だと発表されて、その後もそなたが次々に後宮に女を召し上げていると聞いて、てっきり幸せにやっているものだと思った」
「そうか。そういえば、トーマはなぜ今頃ここへやってきたんだ……?」
「ふふ、反動じゃないかな」
「反動……?」
ララが手に触れた毛布を引っ張り上げて言った。
「ところでラウル、この擦り切れた毛布、見覚えがあるんだが……」
「あ……」
「まさか私の寝間着をまだ持っているわけじゃないだろうな?」
「新しいのを送ってくれるなら、どっちも処分してもいいんだが……」
「あはは」
昔と同じ顔で笑うララに、ラウルがもう一度覆いかぶさった。
ラウルはララの手を引いたまま、ズカズカと広間に入ってゆくと、そこには、王やトーマたちの帰りを今か今かと気を揉みながら待っている、フォレスをはじめとする侍女たちや、側近の者達が集まっていた。
「まあ、陛下!! おかえりまさいまし! よくご無事で……」
「やあ、フォレスただいま」
フォレスがラウルの顔を見てホッと顔をほころばせると、ラウルは誰かを引きずりながら、脇目も振らずに王宮の奥へと向かって歩いてゆく。
「あの、陛下……? その方は……?」
「ちょ、ラウル、待て……」
ラウルが抱えるようにして引き連れているのは、銀髪をなびかせたあの懐かしくも美しいシンの姫だった。
「まあああ、ララ様!!」
「やあ、フォレス! 久しぶりだな! 元気だったか?」
言っている間も、ララはどんどんラウルに引きずられてゆく。
「はい、おかげさまで……」
フォレスがつられて後についてゆく。その後ろから、あっけにとられた臣下たちがゾロゾロと続く。
「ちょ、待って、ラウル! もう!」
なんとかララが抵抗して少し引き返してきたものの、ラウルはすぐ戻ってきて容赦無くララを引きずってゆく。
「や、もう! す、すまない、フォレス、なんかもう、ラウルはさっきからこんな調子で、年甲斐もなく聞く耳持たないんだ……」
「え、ええ、あの、ララ様、お元気そうで何よりですわ……ちっともお変わりにならない。今もお美しくて……」
フォレスも必死で後を追う。
ラウルはすでに、広間を抜けて長い廊下を歩いてゆく。
「あは、ありがとうフォレス……」
「フォレス、俺がいいというまで、俺の部屋には誰ひとり近づけるな」
「は、はい、陛下……」
「ああ、すまないフォレス! あとでゆっくり……ああそうだ、久しぶりにおまえの料理が食べ……」
「たい」という言葉を言い終える前に、ラウルはララを引っ張って廊下を曲がって姿を消した。
フォレスがしょうがないかというように、溜息をひとつついて立ち止まっても、他の臣下たちはわけがわからないというようにまだ王の後を追おうとしている。
慌ててフォレスがその前に立ちはだかった。
「みなさま、お待ちくださいませ!! これより先は、この老女の命に代えても行かせるわけには参りません!」
長年この王家に仕え続けてきた老女官長の言葉である。逆らえるものは誰もなかった。
ガランとした味気ない王の部屋の床に、服が転々と落ちている。それは、天蓋付きの大きなベッドまで続いていた。紗のカーテンの向こうでは、二人の人影が蠢いている。
「や、ちょ…」
「ラゥ…」
「待っ」
「んんっ……」
「ラウル」
「おまえ、は…」
「どうして…」
「いつも……」
「んん……」
「ぁ」
「うあ…」
「あん」
「やめっ」
「あ」
「あ」
「ああっ」
「ララ……」
「あぁ」
「ララ……」
「あうっ、ラウル……」
「ああ……」
ラウルの逞しい裸の背中が、細身の白い裸体を組み敷き、全身をぶつけるようにして貪っている。
ギシギシと軋む寝台の音が、ラウルの激しい思いを物語っている。
やがて、静かに止んだ。
「はぁ、気が済んだ……」
「はぁ、はぁ……そなたと言うやつは、ちっとも変わってないじゃないか」
ララが呆れたように言っている。
「私たちはもういい歳だぞ。こんな思春期の若造みたいな……」
ララの愚痴を聞いているのかいないのか、ラウルはララの頬を撫でながら、熱っぽい目でずっとララの顔を見つめている。
「……そ、そんな顔をされたら何も言えなくなってしまうじゃないか」
ララが照れたように目を逸らした。
そのララをラウルが抱き寄せる。
「……思うだけで触れられない。この20年ずっとだ。だから、目の前にしたら触れずにはいられない。俺は歯を食いしばるようにして耐えてきたんだ……」
「ラウル……」
「だから、おまえが俺を責めるな……」
ラウルがもう一度ララにキスした。
「あの子達は、そなたと別れて2年後に身籠っていることに気づいたんだ」
「信じられん……」
「ふふ、普通の恋人同士なら大ゲンカになるセリフだな」
「ああ、いや俺は……」
「うん、わかってる。私だって最初は信じられなかった。あまりにも非常識すぎる」
ララの指先が、ラウルの身体中の傷跡ひとつひとつにそっと触れる。
「でも、トーマのあの髪と眼を見れば、俺の子だと言うことは一目瞭然だ」
「うん。それに、並ぶとよく似てる」
「ああ、そういえば城でもよく言われたな。トーマが黒にするとしょっちゅう言われた。でも、俺からすればおまえに似てる気がしてたんだ」
「そうか……。おそらく、初めて抱き合ったあの泉で身籠ったんだ。つまり、私がシンと聖婚する直前だ」
その時の受精卵が、聖婚の衝撃で凍結したまま子宮の中で眠っていたのではないかとララは言う。
「そう言えば、そのあとから月のものがないと言ってたな」
「そう。そして、その後会うたびに飲んでいた避妊薬の銀鱗丸が凍結を長引かせていたのじゃないかと思う。そして、そなたと別れ、銀鱗丸を飲まなくなった途端、凍結が解除された……」
「なるほど。シン王宮は上へ下への大騒ぎだったろうな」
「それはもう……」
ララが懐かしそうにクスリと笑う。
「でも私は、正直に言って喜びよりも怖さの方が優っていた。前王のおばあさまから、シン王の子どもがどれほど厳しい病に苦しむかは聞かされていたから」
ララが妊娠に気づいた時点では、王位を継いだ後の、最後に会った時の子どもだと思うのが自然だろう。
「でも、どうしても産みたかった」
ララはそれ以上、自分がどれほど不安と緊張に苛まれていたのか言わなかったが、察して余りあるものがある。そして、その時のララに寄り添えなかった自分の立場を思うと、ギリギリと内臓がよじれるほどの悔しさと情けなさに苛まれる。
「そばにいてやれなくて……」
「よしてくれ、ラウル。そなたはそなたで、命の危険に苛まれていたんじゃないか」
「ララ……」
命の危険に「怯えていた」と、ララは言わない。
ラウルが、命など惜しくないと知っているからだ。そんな命でも守らなければならない日常に、文字通り苛まれていたのだ。ララはそれを知っている。それだけでラウルは十分報われると思った。
「やがて、小さな双子が生まれて、日々丸々と太っていって、嬉しくてかわいくて、夢中になっているうちにどんどん大きくなっていって、今日まで幸せだったんだ、私は。だから、そなたが気に病むことなんかない」
「そうか、それならよかった……」
「でも、シンの王族病の懸念はあったから、あの子たちが産まれてからは何度も慎重に検査した。ところが不思議なことに、いくら調べてもシンの王脈が出てこない」
「へえ、検査でわかるものなのか……」
王脈は血液を調べればわかるのだそうだ。最近発明された、眼鏡のレンズを二つ組み合わせて使う顕微鏡という機械を使って、血液の中に含まれている成分を診るのだ。
「だから、あの子達はラウルの王脈は継いでも、私の、シンの王脈を継いでいない。クレーネの髪と目の色を見たろう?」
「ああ、出会った時のおまえと同じだった」
「王脈でも庶民色の者もいるが、クレーネもそれだ。その特徴は黒龍の王脈と同じだった。シンじゃない。何度も血液をとって調べたから間違いない。そしてトーマはさらに黒龍の特徴が強く出た」
「なぜ今まで黙っていた……?」
「……あの子達が生まれて少しすると、そなたが殺されかけて、瀕死の重傷を負ったという知らせが届いたからだ。実を言うと、いてもたってもいられなくて、その日のうちにシンでゴダール城に忍び込んだ。騒ぐ医師たちを説き伏せて、そなたの手術は私がしたんだ。とても危険な状態だった」
「え!? それは気づかなかった」
「ふふ、意識不明の重体だったからな。危険を脱したところを見計らって私はシンに帰った」
「そうだったのか……」
「でも、私は母として、どうしても、子どもたちをそんな危険なところへやれなかったんだ。すまない……」
「いいんだ。それが当然だ」
「そのうち、ジルベールというあの少年が、ラウル王の子だと発表されて、その後もそなたが次々に後宮に女を召し上げていると聞いて、てっきり幸せにやっているものだと思った」
「そうか。そういえば、トーマはなぜ今頃ここへやってきたんだ……?」
「ふふ、反動じゃないかな」
「反動……?」
ララが手に触れた毛布を引っ張り上げて言った。
「ところでラウル、この擦り切れた毛布、見覚えがあるんだが……」
「あ……」
「まさか私の寝間着をまだ持っているわけじゃないだろうな?」
「新しいのを送ってくれるなら、どっちも処分してもいいんだが……」
「あはは」
昔と同じ顔で笑うララに、ラウルがもう一度覆いかぶさった。
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