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【1章】
【第四話】把握
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バルルーフからこの世界について説明を受けた後、私は彼と老人の住んでいる質素な小屋に住まわせてもらうことになった。
居候の身であるため、私は畑作業を手伝うことにした。
私は手伝いながらバルルーフや老人に質問を中心とした会話を積極的にして、少しずつこの世界のことを理解することに努めた。
文化・文明の水準は元いた世界に比べて低く、科学技術が発達していない中世頃に感じる。
その代わり、私が転位させられたことからもわかるように、この世界には魔法が存在する。
しかし大きな魔力をもつ者はごく僅かなようだ。
転位してから一週間ほどがたった。
私は今日もバルルーフと老人とで畑作業にいそしむ。
老人の名はカルティアというらしい。
「カルティア、質問がある。」
「はっはっは、また質問か。お主は質問の多い男だな。まあ異界から来たのであれば当然か。」
「あなたは魔法が使えるのですか?」
「なんでそんな質問をする?」
カルティアは質問に質問で返した。
「畑作業をするにしても、どうして魔法を使わないのかと思って。」
「私が答えよう。」
川から水を汲んできたバルルーフが肩で息をしながら言った。
「魔法はいつ使えなくなるとも限らないからだ。」
「魔法というのは限りある資源みたいなものなのか?」
「そういうものかもしれない。」
「なぜ断定しない?」
「永遠な存在と断言することもできないからだ。」
「そうか。」
まだこの世界の常識に疎い私はこれ以上何と聞けばよいかわからず、納得するしかなかった。
また別の日、私は質問をした。
「バルルーフ。」
「何だ、質問か?」
「ダメか?」
「いや良いことだ。」
バルルーフはにこやかに答えた。
「私は魔法を使えるのか?」
「興味があるのか?」
「ある。」
昔からファンタジー小説を読むことが好きだった私にとって、魔法の存在があると言われるだけで正直ワクワクする。
まして自分が使えるようになるのであれば尚更だ。
そのため私はやや食い気味で返事をした。
「使えるかわからない。」
「そうか。どうすればわかる?」
私はあきらめずに問い続けた。
「この世界の過去と対話をすればよい。」
「過去と対話?」
「キミの世界でも科学とやらを理解し扱う上で、過去の住民と対話をしたのだろう?」
「うーん、勉強のことか?」
「そうだ。」
「もっと簡潔に言ってくれればいいものを。」
「それもそうだな。」
バルルーフがあえてわかりにくく話すので、私は試されているように感じた。
その日以来、私は午前中の畑作業を終えるとバルルーフの部屋にある書物をひたすらに読んだ。
するとある日、一緒に畑作業をしているカルティアが神妙な面持ちで質問してきた。
「何がために魔法を学ぶ?」
「私の世界には無かったものだから興味があるんだ。」
「知的好奇心か。気をつけろよ。」
忠告しているのか、カルティアは心配そうに私の顔を見て言った。
「富。権力。名声。それらを求めて学ぶものが少なくない。」
隣で作物を収穫しているバルルーフが呟いた。
「確かに多そうだな。」
興味深い話題だったので、私は反応した。
「欲があることについて諫めるつもりはないが、欲にまみれて落ちぶれた者を多く知っている。」
そう言って、バルルーフはカルティアの方を見た。
「痛たた。今日はこのくらいにして休むとしようか。」
カルティアは腰をさすりながらそう言って小屋の中に入っていってしまった。
彼にとって都合の悪い話だったのだろうか。
居候の身であるため、私は畑作業を手伝うことにした。
私は手伝いながらバルルーフや老人に質問を中心とした会話を積極的にして、少しずつこの世界のことを理解することに努めた。
文化・文明の水準は元いた世界に比べて低く、科学技術が発達していない中世頃に感じる。
その代わり、私が転位させられたことからもわかるように、この世界には魔法が存在する。
しかし大きな魔力をもつ者はごく僅かなようだ。
転位してから一週間ほどがたった。
私は今日もバルルーフと老人とで畑作業にいそしむ。
老人の名はカルティアというらしい。
「カルティア、質問がある。」
「はっはっは、また質問か。お主は質問の多い男だな。まあ異界から来たのであれば当然か。」
「あなたは魔法が使えるのですか?」
「なんでそんな質問をする?」
カルティアは質問に質問で返した。
「畑作業をするにしても、どうして魔法を使わないのかと思って。」
「私が答えよう。」
川から水を汲んできたバルルーフが肩で息をしながら言った。
「魔法はいつ使えなくなるとも限らないからだ。」
「魔法というのは限りある資源みたいなものなのか?」
「そういうものかもしれない。」
「なぜ断定しない?」
「永遠な存在と断言することもできないからだ。」
「そうか。」
まだこの世界の常識に疎い私はこれ以上何と聞けばよいかわからず、納得するしかなかった。
また別の日、私は質問をした。
「バルルーフ。」
「何だ、質問か?」
「ダメか?」
「いや良いことだ。」
バルルーフはにこやかに答えた。
「私は魔法を使えるのか?」
「興味があるのか?」
「ある。」
昔からファンタジー小説を読むことが好きだった私にとって、魔法の存在があると言われるだけで正直ワクワクする。
まして自分が使えるようになるのであれば尚更だ。
そのため私はやや食い気味で返事をした。
「使えるかわからない。」
「そうか。どうすればわかる?」
私はあきらめずに問い続けた。
「この世界の過去と対話をすればよい。」
「過去と対話?」
「キミの世界でも科学とやらを理解し扱う上で、過去の住民と対話をしたのだろう?」
「うーん、勉強のことか?」
「そうだ。」
「もっと簡潔に言ってくれればいいものを。」
「それもそうだな。」
バルルーフがあえてわかりにくく話すので、私は試されているように感じた。
その日以来、私は午前中の畑作業を終えるとバルルーフの部屋にある書物をひたすらに読んだ。
するとある日、一緒に畑作業をしているカルティアが神妙な面持ちで質問してきた。
「何がために魔法を学ぶ?」
「私の世界には無かったものだから興味があるんだ。」
「知的好奇心か。気をつけろよ。」
忠告しているのか、カルティアは心配そうに私の顔を見て言った。
「富。権力。名声。それらを求めて学ぶものが少なくない。」
隣で作物を収穫しているバルルーフが呟いた。
「確かに多そうだな。」
興味深い話題だったので、私は反応した。
「欲があることについて諫めるつもりはないが、欲にまみれて落ちぶれた者を多く知っている。」
そう言って、バルルーフはカルティアの方を見た。
「痛たた。今日はこのくらいにして休むとしようか。」
カルティアは腰をさすりながらそう言って小屋の中に入っていってしまった。
彼にとって都合の悪い話だったのだろうか。
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