英雄の息子が俺のこと孕ませようとしてくる!

戸沖たま

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「…っ、は、はぁっ…!アス、ラルっ…。あ゙…っ、そこ、もう…触んないで、ぇっ…!」
「ダメだ。答えろ。
………俺がシュリに触れられなかった間、あの男にどこまで触らせた。
入れられたのは指だけか」
「な、っん゙の、話っ…して…」


怒気を孕んだ低い声が問い詰めるように次から次に降ってくる。


アスラルがなんの話をしているのか、意味がわからない。
そもそも「あの男」というのがわからないし、どこまで触られただとか、何を言ってるんだろう。
無視して避けてたことに怒ってたんじゃないのか?


アスラルが何に怒ってるのかわからなくて怖い。何を謝ったら許してもらえるんだろう。
背後にいるのが知らない奴みたいで、触れられるのが恐ろしい。



「知らないっ!…っ」
「知らないわけがないだろう」
「やっ…ん゙ぅ?!……ぁ………!」


指を3本に増やされて腹の下に手を差し込まれる。
出した白濁が浮いた腰とシーツの間に橋を作って、そこで初めてアスラルは俺がどんな状態なのかを把握したようだった。


「ぁっ……う、うぁ、あ………っ!」
「………………シュリ、……もしかして、ナカだけで…」


サアッと顔が青ざめる。
沈黙が酷く重たい。


………自分のこれ以上ない痴態を、よりにもよってアスラルに見られた。
男なのに尻の中で感じて達するなんて、絶対気持ち悪いって思われた。
アスラルに嫌われた。
嫌われた…!
だってずっと怒ってるし。
俺が、なんで怒ってるかわかんないからだ。

いやだ、嫌われるのは…!



「っ………」
「…シュリ?」
「はっ、……はーっ、はーっ……はー…」



呆然としながら肩で息をする俺に、アスラルは指を引き抜いて俺の体をひっくり返した。

自分の精液で汚れた体を見られてこれ以上気持ち悪がられたくない。でも、隠したいのに体に力が入らない。

アスラルの顔を見るのが怖くてぎゅっと目を瞑っていると、アスラルの手が俺の額に張り付いた髪を払う。


「……っ、っ……~~~~!」
「おい、シュリ…」
「い、いやだ、み………………見な、……っいで。
……見ないでっ…!今、俺、気持ち悪いからっ、見ちゃだめ!!」
「…シュ、」
「ごめ…なさいっ。無視したのも、ごめんなさいっ…もうしない!ちゃんと元に戻るから、」



堰き止めていたものが溢れ出すように嗚咽とともに口から流れ出していく。



「……っアスラルが、好きなんだ。婚約者、いるのに、男なのにっ、……気持ち…っ悪くてごめんなさいっ。…だから、もうこれ以上触らないで。ちゃんと元に戻る。………ごめんなさい、怒らないでっ……嫌いにならないでっ…」



蹲って、これ以上気持ち悪いところを見られないように今すぐアスラルの前から消えてしまいたい。
以前アスラルが「シュリだけでいい」と言ってくれた頃の自分に戻りたい。

それなのにぼろぼろと涙で汚く顔を濡らしている間も、涙が顔を伝う感触にまで体を震わせて力が入らず、顔を隠すことすらできなかった。



「………俺のことが好き…」



小さく囁かれた言葉に身が竦む。
ごめんなさい、とうわ言のように呟き泣き続ける俺の目元をアスラルの指がすりすりと拭った。


「……………………シュリ、わかった。俺も勘違いしていた。もう謝らなくていい。目を開けろ」
「っ……、や、やだ、今お前の顔見たくないっ」
「俺のことが好きなのにか」
「…………っ、だから、気持ち悪くてごめんって、言ってるだろ…!!」
「謝らなくていいと言ってる。いいから目を開けろ」
「俺は今お前の顔見たくないって言ってるっ!!」



幼い子供の喧嘩のように進む会話にやけくそになりながら声を荒げていたらアスラルの手が頭に移動して、汗と涙で湿った髪を優しく梳く。

謝ったからもう許してもらえたんだろうかと思っていると、アスラルの追求はまだ終わってはいなかった。



「なんでだ」
「…………」
「なぜ今俺の顔を見たくないんだ」



……そんなの気持ち悪がられてる顔を見たくないからに決まってんだろ!分かれよボケが…!!


そう言える勇気が俺にあればよかったものの、アスラルに他人の気持ちや考えていることを察せというのも酷な話だ。
それができないからアスラルには友達が俺しかいない。


目を瞑ったまま、はぁ…、と延々体のなかから湧いてくる快感や泣いたせいで乱れた呼吸に胸を上下させてから俺はようやく口を開いた。


「………っ気持ち悪がられてるのを、見たがる奴がいるのかよっ……!」


絞り出したような声で呟いた俺に、頭を撫でていたアスラルはそのまま指先で髪を掻き混ぜながら、顔を近づけてくる。

アスラルの吐息が睫毛を揺らして、次の瞬間には俺の額やら瞼やら頬やらに無差別に唇を落としてきた。

俺が今言ったことをちゃんと聞いてたなら絶対そんなことしないだろ、と若干怒りの感情すら湧いてくるが、媚薬で無理矢理高められた性感がどんなに小さな刺激にも過剰に反応してしまう。



「…っ、ふ、……んぅ…っやめろ、話っ……聞いてたのか…?」
「聞いていた。だからこうしてる」
「…っ意味わかんない……」
「わからないことはない。
シュリは何か思い違いをしているようだが、俺はシュリのことを気持ち悪いだなんて思わないし、もし本当にシュリが気持ち悪いのだとしたら俺の方が随分気持ちが悪いと思うぞ」
「………はぁ…?」


何を言い出したのかと戸惑っていると、体を押し付けてきたアスラルに、太腿のあたりにゴリッとした感触がして体が小さく震える。

これ…。


「…シュリのなかに指を入れている間もずっとこうだ。泣いているのを見るたびに、ここに熱が集まって、仕方なくなる。
触れていない間もシュリの感触を思い出すだけで、こうなる」


腰を擦り付けて、一呼吸置いたアスラルはいつものただはっきりとした物言いをする声を澱ませて、掠れた声で続けた。


「……シュリが気持ちよくなっている姿を見ると、もっと奥を暴きたくなって…、ぐちゃぐちゃに乱してやりたくなるんだ」


アスラルの言葉に、元々赤らんだ頬にますます熱が集まって、口をパクパクさせていると生暖かい感触が目元を撫でた。


「…っ…舐めっ…?!」
「……っは、……。…俺は、今すぐシュリの身体を余すところなく、舐めまわしたいとも思っている。…………………これも」
「…ひっ?!」


腹の上に広がっている白濁を指で掬われ、思わず目を開いた。


「アスラルそれは舐めちゃダメだって!!」


叫んだのと同時に近くにあったアスラルの瞳と目が合う。
熱っぽい視線に射抜かれて目を逸らせずに固まっていると、ゆっくり近付いてきたアスラルに軽く開いていた口の端をペロリと舐められさらに目を見開いた。


「……なあシュリ、俺の方が遥かに気持ち悪いだろう?」


顔を離し、そう言って首を傾けたアスラルはもう怒ったような顔はしていなくて、眉間に深く刻まれていた皺も消えてなくなっている。そこには、俺のことを気持ち悪いと思っている表情もひとつもなかった。

もう完全にいつものアスラルだけど、ただ、言っていることは普通じゃない。


「………………たし…かに………」


思わず肯定してしまってハッと我に返っていると、アスラルの瞳が優しく細まる。

いやいや、そうじゃない。
気持ち悪さを競ってるんじゃなくって……、俺はアスラルのことが好きで…。


「全部シュリにだけだ」
「………………俺、だけ…」
「他は考えられない」
「…でも、それは、俺しかいないから…そうなだけで……」
「シュリしかいらない。他は必要ない」
「……へ………」


どういうこと…?
つまり……、うん……??
アスラルは、俺にだけ気持ち悪くて……俺しかいらなくて………それで…つまり………?


アスラルの言葉がどんどん俺の思考を都合のいいものに変えていく。
勘違いだったら、嘘だったら、そういう可能性が頭にちらついて理解できないふりをして誤魔化していると、次にかけられた言葉にそれも難しくなってくる。


「…好き同士ならいいんだろう?」
「……、……ぁっ」

 
かあぁっと熱くなった頬をアスラルの手が撫でた。
ピクンと腰が跳ねて、溢れる吐息がどんどん熱くなっていく。

媚薬のせいではなく、アスラルから向けられた気持ちに俺の全身が喜んでいた。
元々消えかかっていた理性が勢いを増して溶かされていくのが分かって慌てて口を開く。


「は、…ふぅ……っ…お、…お前、っ婚約者いるじゃん………、」
「それがどうした」
「どうしたって、俺、略奪は……潰されるっ…」
「…略奪………?
……………あぁ……なるほど、シュリは王都の婚姻制度を知らないのか」


合点がいったように呟かれたアスラルの言葉に疑問を抱いているとアスラルが上体を起こして開いたままの俺の両足を肩に抱えた。


「え…?あの……」
「後で説明する。とにかくそんなことを気にする必要はない。
……これから全て解決する」


こちらを見ながら前をくつろげたアスラルのものが、べちんと腹に当たってそこに視線が釘付けになる。

臍のあたりまで伸びたそれは、以前に見た時よりも遥かに凶暴な見た目をしていて、浮いた血管がとくとくと脈打つ感触が皮膚越しに伝わってきた。


…いや、無理だ、こんなの入るわけない。

でも、…これが俺のなかに入ったら、一体どこまで届いてしまうんだろう…。


目の前のものが自分に入れられるのを想像して、アスラルに解された場所がじわじわと疼く。
先程まで考えていたことがすぽんと頭から抜け落ちて、
浅く、早くなっていく自分の呼吸音が頭の中でどんどん大きくなっていった。


「…は、っは……、はぁ………」

「シュリ」

「へぁ………?」


呼びかけられておかしな声を上げた俺にアスラルがのしかかってくる。
熱の籠った視線が間近で俺のことを見ている。
自分の膝がぐっと近づいてお尻が上を向いている体勢になると、自然と視界にひくひくと収縮する自身の窄まりがちらついた。


「はぁ、ぅ……」
「体が柔らかいな。流石に鍛えているだけはある」
「……っ、…ぁ」



ああ、アスラルがすごく近くにいる。
かっこいい。
触れられてるところがあったかくて、気持ちいいな。
身体全部、くっつきたい。

待ちきれない期待に俺の口の端から垂れた唾液を見て、アスラルが息を飲んだのが見えた。

とんでもなくだらしない顔で、ひどく恥ずかしい格好をしているのに意識がそこへ向かないほど、あの脳を溶かす麻薬のような果実とじっと真っ直ぐにこちらを見てくるアスラルの黒い瞳に、俺の理性を完全に焼き切られてしまっていた。


「はっ、はっ……ぁ、………」


目の前にいるアスラルに、抱きついてキスをしたい、それなのに思い通りに力が入らず重たい腕がベッドから少し持ち上がってはぼとっと落ちていく。

それに気がついたアスラルが俺の腕を取って首に回してくれた。


「アスラル…」


力を借りてぎゅうっと肩口に顔を埋めた俺は、汗の匂いに混じったアスラル自身の香りにさらに頭がおかしくなってしまいそうなくらい興奮していた。


………すごい気持ち悪いな俺。アスラルとそうかわらないかも…、……でも、でも、……アスラル、すごくいいにおいがする……。


うっとりと目を閉じてアスラルを堪能していると、ひくついていた窄まりに熱を帯びた硬いものが当てがわれて、俺は招き入れるようにソレに吸い付いた。

ちゅく……。


やっと、やっと繋がれる。


「ぁ、んぅ…っは、………はやく、っ……」
「…あんまり、煽らないでくれ……」


聞いたことのないアスラルの情けない声に、胸が高鳴る。

以前、俺の見たことのない表情を見れて嬉しいとアスラルが言っていたのを思い出した。
そっか、好きな人のことを知れるって、こんなに嬉しいのか……。   


「はーっ……はー……、ふ、ぅっ………」


ぐぐぐっ……とゆっくり、時間をかけて埋まっていく剛直を出来るだけ息を吐いて受け入れていく。

初めは圧倒的な質量に苦しくなったものの、一番太い部分を過ぎれば思っていたよりも苦しさは軽くなった。

これはあの果実の効果なのか、なんにせよ苦しくないに越したことはない。


「ふぅ…っ、ふー…っ、」


ちゅ、ぐちっ。

ある程度まで飲み込んだところで、進んできた肉壁を慣らすようにアスラルが小さく動き出す。


「は、ぁ…っ~~~!…、は、ふ……」
「はっ……、っ…シュリ、もう少し、力を抜いてくれ…」


そんなこと言ったって…!
もう今が限界だ!


「む、……むりっ…ぃ…!」
「…っ腕、外すぞ」


抱きついていた腕を外されて、アスラルの体が離れていった。
寂しさはあったものの、体勢的な息苦しさから少しだけ解放されて俺が息を深く吐いた隙を狙ってずずずっと腰を進められていく。


「うぅっ…!も、もう入らないっ…、入らなっ…ああっ…!」
「あと、少しっ…」


逃げそうになる腰を掴まえられて、アスラルの小さな呻き声が漏れるのとほぼ同時に、アスラルの腰が隙間なく俺の尻に密着した。




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