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しおりを挟むその日からのアスラルにはどこか鬼気迫るものがあった。
「シュリ、今日もやるぞ」
「……や、やらなきゃだめ…?」
「解さないと俺のは入れられない」
「………でも今日は訓練で疲れてて…」
「大丈夫だ。今日は解すときに途中でへばらないよう食べ物を持ってきた」
そういうことじゃないんだよな~…!!
どこからか得てきた知識で男同士の睦み合いの方法を学んだアスラルは、毎日毎日毎日毎日こうやって俺の尻の穴を解すために飽きずにやってくる。
やってくるって言っても寮が同室なので俺がベッドに寝転がってくつろいでいる時を見計らって俺の尻を弄りにくるのだ。
いやだ…。
着々と準備が進んでいる……。
もうすでにアスラルの手によって尻の洗浄方法まで教えられた俺は有無を言わさず道具と一緒に寮室内のバスルームに投げ込まれて、準備が終わったときには自分から獣の餌になりに行く気分だ。
俺だってこんなことはしたくない。
だって俺のお尻は出すためにあるわけで入れるためにはできてないんだ。
「ううっ…なんでこんなこと……」
泣きながら準備を終えてトイレの扉を開くとやる気満々のアスラルがベッドの上で待っていた。
自分で準備なんて、そんなことしたくなんかない。だけどちゃんと自分でやらないと次に待っているのはアスラルによる辱めである。
4日ほど前に準備を拒否って酷い目に合わされた。
あれはもう2度とごめんだ。
のそのそとベッドによじ登ってアスラルが置いていた枕を腹の下に敷き、うつ伏せに寝そべる。
もう何回もさせられている姿勢なのでへっちゃら、なわけがない。
恥ずかしいに決まってる。
「ぅう…っ……」
「シュリ、力を抜け、指が入らない」
「入れなくていいです……」
「指が入らないと俺のなんて一生入らないぞ」
それこそ入れなくていいです!!!
頑なに力を緩めようとしない俺に、アスラルは尻の肉を掴んで無理やり孔の入り口を開いたり閉じたりしてぬるつく液体をつけた親指の腹でくにくにと弄ってきた。
めちゃくちゃ尻がスースーする…。
いつも思うけどこういう道具って一体どこから持ってきてるんだこいつ…?
「…………あっ、ぅう」
少しだけ意識が逸れて緩んだそこに、見計らったかのようにアスラルの指が侵入してきた。
ゴツゴツとした太い指が案外すんなり入って行ったことに俺は絶望していた。
前までは第一関節くらいでギブアップしてたのに……!
ちゃくちゃくと開発が進んでしまっている。
「入ったな」
「言うなよぉ……!んっ、…」
喋った弾みで腹に力が入って、なんだか腰がゾワゾワするような感覚に鼻から息が抜けていった。
指を曲げながら中の感触を確かめるように動くアスラルの指が、腹側に折り曲げられた瞬間、ピリッとした刺激に腰が浮く。
昨日も後ろに指を入れられていじられたとき、最後に触れられた場所だ。
「そこ…昨日も…っ」
「ここが前立腺か。これを開発すれば中でも感じられるようになれるらしいから頑張ろうなシュリ」
「がんばろうなじゃねぇよぉ……」
秀才を無駄にするなよアスラル…!!
お前の優秀な頭脳は国の平和のために活用されるべきだろう!!
お前の父さんが、息子が友達の尻の構造についてどんどん詳しくなって行ってるって知ったら泣くぞ?!!
俺はアスラルのなかのとんでもない眠れる性欲の獅子を呼び覚ましてしまったのかもしれない。
罪深いことをしてしまった…。
「……っ、ふ、ぅ…んっ」
「腰が揺れてる。気持ちいいのか?」
「わかんないよ……、なんか変な感じがするな~くらいで…別に気持ち良くはっ」
ない。
そう言おうとした瞬間、強い力でぐにぃっとそこを押し込まれてビクンビクンと体が跳ねた。
え?なにいまの?
「っ~~~!…っ、な、なに…!」
「シュリが気持ち良くないと言うから強めにしてみたんだが、良くなかったか?」
良くねぇよ!!!!
ふるふると震えながら背後にいるアスラルを睨みつけると、あの無表情が少しだけ申し訳なさそうに眉を下げた。
最近ちょくちょく思うのだが、アスラルは俺の実家の犬に似ている。
親戚からもらったカッコよくて真っ黒な犬だ。
クウは普段は全く吠えたり甘えたりしないのだが、時々悪さをしては甘えたような声を出して項垂れていた。
家族では俺にしか懐かなくて、そういえばよく兄から文句を言われてたっけ。
しかしだ。
アスラルは人間で、犬じゃない!
その顔したら全部許してもらえると思ってるんじゃないかお前!!?
「嫌だったか…?」
はい嫌ですとも!指を入れられてるこの状況自体が!!
そう思ってはいてもなぜか言葉は口から出ていかない。
「……も、いいから早くやっちゃって………」
だめだ…。
クウがチラついてどーっしても無碍にできない…。
断ろう断ろうとする度にあの顔をされて、普段無表情な分イケメンの悲しそうな顔はだいぶ俺には効果的だった。
もしかして確信犯なんだろうかこの男…。
このまま押し通されたら本当にあの凶悪チンコを入れられる羽目になりそう……。
……いや、まだ戻れる。
だってまだ指一本だ。
大丈夫、大丈夫。
ここまできたらチンコ入れなきゃ無問題!!!
無理矢理な理論で嫌な事を考えてしまった自分を落ち着かせる。
そんな俺の気持ちなんて露知らず、アスラルはくちくちと順調に俺の後孔を解していく。
先程俺が少し怒ったからか、あの前立腺とやらはわざわざ避けて触れているようだった。
近くに行っては掠めて、近くに行っては掠めてを繰り返された俺は、じっくりことこと煮詰められているように言いようのないもどかしさに襲われる。
「……っ、おま、お前っ、それ、っわざとやってない…?」
「…?なんの話だ」
「うぅっ………」
「なんだ、もう疲れたのか?」
「…お前も、一回尻に指入れられてみればわかるんじゃないかな……」
「俺はシュリに入れたいからその必要はない」
「………」
なんか、こいつが俺以外に友達できない理由なんかわかった気がするわ…。
まあ唯一の友達である俺の尻に指突っ込んでる時点で俺も友達かどうか怪しいところだけど。
黙り込んだ俺を見て何を思ったのか、アスラルはベッド脇の机からなにやらボウルを取り上げて俺が寝そべる傍らにぽんと置いた。
「なにこれ…」
「イチゴだ。疲れが取れると聞いたから持ってきた」
ボウルから取り出したイチゴを一粒だけ口の前に持ってこられて混乱しながら食べていると、指の動きが再開する。
あ…イチゴ美味しい…。
……じゃない!!!
しっかりしろ俺!!
「…っ、ふ、ふぅ……」
「まだたくさんあるから食べていいぞ」
「尻に、指入れられてんのに、…っ食べれるわけないっ…!」
「…消化されるまで弄ったりはしないが」
「っそういう、ことじゃないぃぃっ…!!」
だめだ!全く話が通じない!
だれがイチゴが消化される心配するかよ!
気分的に尻弄られながらもの食べれないって言ってんの!!
しかし、次から次に溢れ出てくるアスラルへの文句は徐々に激しさを増す指の動きによって頭の片隅に置いやられていく。
くちゅくちゅくちゅ。
「んっ……ぐ、ぅ…っ」
部屋に響くのは、背後から聞こえてくる水音と、俺の口から出るくぐもった声だけで、アスラルはひたすら無言で指を動かす。
目の前にあるシーツを必死に手繰り寄せて罷り間違ってもおかしな声を出さないように口元を抑えていた俺に気づいたアスラルは、それを「口を塞いだら息がしづらいだろう」と馬鹿真面目な声で咎めた。
咎められたところで従う気はさらさらない。
いつもは10分くらい弄られてこの地獄のような時間は終わる。
あと多分5分くらいなはず…!
そう思ってぎゅうっと目を瞑った瞬間、今まで触られなかったあの場所をアスラルがすれ違いざまに指の腹で引っ掻いて、無意識に尻が高く上がった。
入れられている方とは違う手でやわやわと尻たぶを揉まれると、その刺激が中まで伝わってむず痒い。
「…っふ、ふぅ、ふーっ…!ふっ……、っ~~~!」
「……やっぱり気持ちよさそうだな、ここ」
「ぅっー!…っふ、ゔぅっ…、」
「さっきは嘘をついたのか?」
「ゔぅっ、うぅ…っん」
首をぶるぶるふって否定するけど、アスラルの手は止まってくれない。
俺は嘘なんてついてない。
気持ち良くなんかない。
ただちょっと変な感じがするだけだ。
「っぅ、ふぅ…っきもち、よくないっ…!そこ、やめろっ…!」
「……そうか。
大丈夫だ。今は気持ちよくないかもしれないが、ずっと触っていたらここで気持ち良くなれるはずだ。もうちょっと頑張ろうな、シュリ」
「ゔぅっ…!?」
なんにも大丈夫なんかじゃありませんが?!!?
もしかしてこれ、俺が気持ちいいって言うまで続ける感じ?!
いや!無理無理無理!!!
俺にはそんなん言えません!!
ぐりぃっ。
「あ゙っ…!…っ、ふ、ぅ」
「まだ時間が必要みたいだな。
今日は少し長めに解そう。…ここで快感を得られるまで」
やっぱりそうなんですねっ!!!
鬼畜かっ…?!!
いやだっ!
絶対言いたくないっ!
でも、これ……言わなきゃ絶対おわんないぃっ…!!
絶望感にじわりと浮かんできた涙が白いシーツに小さな染みを作っていく。
「あ゙ぅっ…、っ…ふ、ふーっ…!」
「どうだ?気持ちいいか?」
「ゔ、ぅ~~~っ…!」
「唸るだけじゃわからない。気持ちいいのかどうかちゃんと教えてくれ。
俺はシュリには気持ち良くなってもらいたい」
耳元でそう囁いたアスラルに、首筋から背中までを優しくスゥーッと撫でられて、発情期の猫みたいにお尻だけが持ち上がる。
それくらいの刺激に反応してしまうことへのとてつもない恥ずかしさに顔に熱が集まった。
「っ~~~、ぅ…うぁっ……!」
「もう少し強くしてみるか?そしたら次は気持ちよく感じるかもしれない」
「…っひ、…や、やめっ、…っわかった!言うからっ!それはやめてっ…!」
前立腺をコリコリと軽く上から触られたまれたまま、ここを強く押し潰されてしまったらどうなってしまうのか。
先程アスラルによって味わわせられた刺激を思い出して身がすくんだ。
……わかった、言えばいいんだろ!
言ってやるからそれだけはやめてくれ!!頼むから!!
俺は苦虫を噛み潰す思いで目をぎゅっと瞑りながらシーツに向かって口を開いた。
「……もっ、ち、ぃです…」
蚊が飛ぶような声でそう言った俺に、アスラルは聞こえなかったのか聞こえないふりをしているのか、全く声を発さない。
……え?言ったよ?
俺ちゃんと言っ、
ぐりぃっ!!!
「た、あ゙っ…!?ぅ、うぅっ、ふーっ…ふ、…っはぁあっ!!な、っで…ぇ!!?」
「すまない。聞こえなかった」
「ひ、ひど…や、っめ、あ゙あっ…んっ!!」
「もう一回言ってくれるか」
「や、や゙ぁっ…!」
ひどい!!!!!
言ったのに!!俺ちゃんと言ったのにぃっ!!!!
「き、きもぢぃっ!きも、っちいからっ!やめ、っ」
「そうか。良かった。じゃあもうしばらく慣れるように頑張ろうな」
「ひぃぃっ……!!」
英雄の息子?
実家の犬に似てる??
………いや、こいつは悪魔だ!!!!
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