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しおりを挟む凄まじい痛みの後、呆気なく消えた痣を呆然と見ながら、僕の心は空っぽになっていた。
ガルとの繋がりがなくなったことがはっきりわかる。
「……ぁ、ああっ…あ……」
「終わったよ。ガル君、もうユパ君から離れなさい」
「………」
ハロルドさんに言われて体を離そうとしたガルの腕にしがみついて縋り付く。
いやだ、行かないで、僕とずっと一緒にいるって言ったじゃないか。
もう何も考えなくないんだ、ガルが忘れさせてくれるんだろう?
もう僕の居場所はここしかない。ガルのそばじゃないとダメだ。
そう言って泣きついても、ガルは何も言ってくれなかった。
ハロルドさんに連れられて部屋を出ていくガルを止めることはできなかった。
なんで、君が言ったんじゃないか。
僕じゃなきゃダメだって、ずっと一緒にいるって。
ここまで僕を振り回しておいて、後はもう知らないって?
自分勝手にも程がある。
沸々と湧いてくる怒りに、床に蹲って泣いているとドタバタと階段を駆け上がってくる音がしてバッと顔を上げる。
ガル、ガルが帰ってきた?
四つん這いで部屋の扉を見上げていると、勢いよく開けられた扉から、見覚えのある人たちが飛び込んできた。
「ユパっ…!」
母さん、父さん…?
「心配したんだぞっ…」
二人に抱きつかれてぼんやりと扉の方を見つめる。
……ガルじゃなかった。
ちがう。
この温もりじゃない。
ガルの手はもっと冷たくて、あの手に触れられると頭を空っぽにできて幸せになれる。
ちがうちがうちがう。
これじゃない!
勢いよく二人を突き飛ばして体に巻き付いたブランケットに足を取られそうになりながら、部屋から飛び出す。
転がるように降りた階段から家の扉を開けて外に出ると、早朝のまだ薄暗い街のなか、ハロルドさんに連れられてどこかへ行っているガルの姿を見つけた。
裸足で皮膚が小石に裂かれたのも気にせず走って追いつこうとしたら、背後から誰かに押さえつけられてガルがどんどん遠くなっていく。
なんで僕を置いていくんだ。
行かないでガル。
僕の方を見てよ。
「ガルっ……!!」
呼んでも呼んでもガルは全く僕の方を振り返ることはなく、その日から街ではガルの姿を見なくなった。
◇
僕は失踪していることになっていた。
両親はいつのまにか店を畳んでいて、自宅の一階は薬局ではなくなっていて、
目の前にあったハロルドさんの帽子屋は跡形もなく消えていた。
両親からはあの日以来僕が家を出ようとする度に付いてこようとしたり、「今は家にいてくれ」と泣きつかれて、僕は家に篭りがちになった。
ガルの話を聞いても誰も答えてくれない。
一度うちに謝りに来た領主様も、ガルのことを聞くと気まずそうに押し黙ってしまった。
「……ガルのことは忘れてくれ。その方が君にとってもいいはずだ」
ガルを忘れる?
そんなことできるはずがないだろう。
僕に幸せをくれたのはガルだけだ。
それなのに周りの大人たちはみんなして僕とガルを遠ざけようとする。
今まで散々僕を詰っていたはずの人たちが、次は手のひらを返したようにガルを罵っている。
この街はみんなみんな、根っからの嘘つきばっかりだった。
そして僕は気づいた。
僕が街で酷い扱いを受けていたのはガルのせいなんかじゃない。
こいつらのせいだ。
全部こいつらが悪い。
そうだ、そうだったんだ。
それなのに、僕を心配するフリをして、ガルと僕を引き離すなんて、許せない。
会わせてよ、ガルに会わせて。
そう何度も父さんに告げていたら、ある日以前のように腹や頭を殴られた。
「もうやめてくれ、忘れてくれ」と泣きながら僕を殴る父さんに、僕は生まれて初めて反抗した。
父さんの上に馬乗りになって殴り続ける僕の姿を、母さんは放心したような表情で見ながら床にへたり込んでいる。
動かなくなった父さんからようやく離れた頃には自分の手も真っ赤になってところどころ裂けていて、父さんはぐちゃぐちゃの顔でひゅーひゅーと息をしながら虚な目で天井を見上げていた。
僕はそれをぼんやり見ながらふらふらと家から出て、ガルと約束したあの小屋に吸い寄せられるみたいにして山に入っていった。
ガル、どこに行ったの。
僕をこんなにおかしくさせたのに、自分だけどこかに行くなんて許さない。
あの赤い瞳で僕を見て。
死にそうになるまで僕を抱いて、ガル以外のことを僕のなかから消して欲しい。
小屋のなかであの日散々快感を覚え込まされたソファーに横たわり、血まみれの手で後孔に指を沿わせる。
ガルが消えた日からずっと、ガルの感触を思い出しながら自分を慰めていたけれど、それも段々と薄れていく。
ヤケにになってぐちゃぐちゃと中を掻き回しても、ガルが触れてくれた場所には届かない。
もうすでにガルの手によってぷっくりと縦に割れた孔はガルじゃないと快感を得られない性器に作り替えられていた。
「……っ、ふ、がる、ガルっ…届かないぃ…、ぐすっ、…ガルぅ…」
ガルの名前を呼びながらあと少しで得られるはずの刺激を得られずに啜り泣いていると、ふと外から足音がした。
カサカサと草を掻き分ける音に、小枝がパキッと折れる音。
父さんか母さんが追いかけてきたのかもしれないと思ったけど、もう誰に見られたって、なんでもよかった。
目の前にぶら下がっている快感を必死に追いかけて、獣のように息を荒げる。
「んっ、ふ、ふぅ……は、ぁっ…あっ…」
音は段々近づいてきて、もうきっとそれは扉の前まで来ていた。
「……っ、がる、ガルっ……」
自分だけでは後ろで達せない分、前を触って刺激するけど、これじゃない。
ガル、ガル、ガルっ。
ぱたた、と白濁がソファーに散らばった瞬間、ガチャリと扉が開いて外の光が全てを明るみに晒した。
「……っ、は、はぁ…は、ぁ…んっ…」
誰かが入ってくる足音にも反応せず達した余韻に浸っていると、その足音が僕のすぐ傍で立ち止まった。
「父親殴った直後にオナニーかよ」
「……………っ、へ…?」
聞き覚えのある低い低音、お尻だけを高く上げたままの姿勢で声の主を見上げていくと、
ずっとずっと待ち侘びていた、
ゾッとするほど美しくて、宝石のようなあの赤色の瞳がこちらを静かに見下ろしていた。
ガルだ。
ガルだ、ガルだ、ガルだ!!!
「が、…がるっ!ガルっ!!!」
喜びに打ち震えながら孔に入れたままだった指を引き抜いてガルの体に縋り付く。
懐かしい匂い。
ガルだ、本物だ。やっと会えた。
嬉しい。
嬉しい!
「あ、おいっ」
ガルの腕を引っ張ってソファーに押し倒す。
モタモタとガルの上に跨って、ガルの唇に吸いついた。
僕のよりも少しだけ厚い唇をペロペロと舐めて中に入れてと催促すると、案外簡単に、ガルは唇を開いて舌を絡めて来た。
いつの間にか大きな手のひらで後頭部を押さえられて、息継ぎなしで舌を噛まれたり吸われたりしていると、全身から力が抜けてガルの上にベッタリ横たわっていた。
「は、はぁ、ぁ…がるぅ…」
疼く腰をガルに擦り付けて泣いていると、尻の下に感じる硬い剛直に胸が高鳴った。
「お前、…会って早々これかよ…だいぶおかしくなってるな」
「はぁっ…はぁっ…入れたい、入れちゃダメ?ガルっ…」
「まだダメ。話さなきゃいけないから」
「はなし…?」
「そう」
やわやわと尻の肉を揉まれながらへこへこと腰を振っていると、ガルがその様子を見ながら呆れたように息を吐いた。
「発情期の雌犬かよ。話くらいちゃんと聞け」
「ガル、まだぁっ?…はやく、はやく…」
「まだだっつってんだろ」
「っ……んぅ…」
尻に爪を立てられて、ちくりとした痛みに一旦動きを止める。
それを見たガルがようやく口を開いた。
「俺はこの街を出て王都に行くことになった。あの帽子屋に魔法持ちについて勉強しろって言われたから仕方なくだ」
「…王都…」
「この街にはもう帰ってこれない」
「………え…?」
「だから最後にお前に会いにきたんだ」
ガルが、この街からいなくなる…?
「僕は、ついていっちゃいけないの…?」
「街の奴らが止めるだろうな」
「なんで?」
「お前が俺に攫われて犯されてたからだろ」
「でも、幸せだったよ…?」
「お前の気持ちなんて関係ねぇよ。あいつらから俺らがどう見えてるかが問題なんだ」
思い浮かぶのは、ガルの名前を出す度に歪む父さんや母さん、そして近所の街の人間の顔だ。
つい最近まで僕を平気で詰ってた人が、今日は僕を憐れむような目で見てくる。
それに、僕はガルに会いたいって言ってるのに、お前のためだとか言って無理矢理部屋に閉じ込められた。
僕はガルといる方が何倍も幸せなのに。
「気持ち悪い……。なんでみんなほっといてくれないんだ。…ねえ、街のみんなが僕を止めなかったらガルは僕を連れて行ってくれるの?」
じっとガルの瞳を見つめると、一瞬見開かれた目が徐々に笑みで細くなった。
「いいよ、連れてってやる」
「………そっかぁ、わかった。僕、頑張るね、ガル」
ガルの体温に体を預けてうっとりしていたら、ガルの指が先ほどまで自分の指を咥えていた孔に刺し入れられて、腰が浮いた。
ごつごつとしたガルの指が慣れたように的確に僕が気持ちいいところをこすって孔を広げていく。自分の指では届かなかったところもくにくにと押されて体が喜ぶようにぶるっと震えた。
「入れたい…ガル…」
すでに張り詰めているガルのものに手を這わせると、ガルが頷いたので体を起こしてガルのズボンを寛げる。
ぶるんと飛び出した性器を後ろ手に掴んでまだガルが指で弄っている孔にそれを当てがった。
「まだ指で弄ってるんだからあとちょっと待ってろよ」
「はやくいれたい……」
「だから待て、って」
待ちきれずにガルの指が抜け切る前にずぷぷっと亀頭を飲み込んだ。
待ち侘びていた侵入にはぁっと熱く息が漏れる。
ガルは僕の下で眉を顰めてこちらを見上げていた。
ちゅぽん、とガルの指が抜けていったのを見計らって一気にガルの剛直を飲み込むと、ガルの指で刺激されてぷっくり腫れたあの場所にゴリッと当たって腰が抜けた。
「ぁっ、……はぁ、は、」
「もしかして、毎日後ろ弄ってた?」
「ぅ……ん」
「へぇ……。本当にこっちの才能だけはあるみたいだな」
「うん…お尻きも、ちぃ…」
「っはは、街の奴らが見たらなんて言うかな。これ見てもまだユパが可哀想だからとか言うと思うか?」
「…っかわいそいじゃ、ないっ…!今、しあわせだから…っ、邪魔する人、みんな、みんな消えればいいっ…」
僕の幸せを邪魔する奴は、みんな消えろ。
父さんも母さんも、
友達だった奴らも、
全部全部、
僕とガル以外全部。
森に立てたお家で、ガルと二人だけで、毎日毎日気持ちいいことだけ。
余計なことや、僕の幸せに必要ない人たちがいない場所で、ガルと二人で暮らすんだ。
そしたらきっと、僕はすごく幸せになれる。
「ねぇガル…」
「…なに?」
「僕、愚図でノロマで何にもできない木偶の坊だけど、ガルと一緒にいるためならなんでもするよ」
「ーーーー…だから僕のことちゃあんと見ててね」
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ふうま様
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ありがとうございます!
戸沖
最高すぎますね
妄想捗ります。
転生ストーリー大好物様
コメントありがとうございます!
いったいどんな妄想なのか気になりますね……😏
たま