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Dr. Uemaの野球狂な半日
2.行列のできる医者
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( I dedicate this story to all of SAS-Fans. m(..)m )
At Urasoe City, Okinawa; November 16, 2003.
The narrator of this story is Tsutomu Kochinda(Uema).
「あ、どもども、いやー、うちのピッチャーがですねー」
こいつら、微笑みながら頭下げてるぜ。レフトばかり狙って打ってきたくせに。
「ちょっと、見せてもらえますか? アイスあったら用意してください」
とはいえ、僕も笑顔で応対します。今回はサザン・ホスピタルの名前を背負って歩いてますから、むげにはできません。
えー、簡単に診察しましたが、まぎれもなく軽い突き指です。十中八九、折れてはないでしょう。冷やしてきちんとテーピングすれば、まずは大丈夫。
「もし痛みが続くようでしたら、うちの病院に来てくださいね。レントゲンとりますから」
名刺を渡して立ち去ろうとしたら、なぜかそこには行列が……。あの、ここは診察室じゃありませんよ?
「どうせ雨ですから、ゆっくりしてってくださいよー」
そういう問題ではないと思うのですが。戸惑う僕には構わず、みなさん、相談を持ちかけてきます。
「いやー、最近、肩が痛いんですよ。四十肩ですかね?」
四十肩の人間が野球でキャッチャーするなよ!
ま、お困りのようなので、ちょっといくつかの動作を試してもらいましょうか。両腕を上げたり、後ろで組んだりしてもらう。
うーむ、この方のケースは判断に微妙なところですね。安静を保てば、四十肩は自然治癒する確率が高いのです。整形外科にいらしても消炎剤くらいしか処方できませんし、ストレッチですとか、お風呂のシャワーの水圧を使って気長に治すのが一番と思われます。くれぐれも肩を冷やさないようにね。お大事に。
「先生、酒の飲みすぎで通風を起こして、時々、つま先が痛いんですよ。なんとかなりませんか?」
薬よりなにより、お酒を控えるのが一番です。僕は整形外科医なので、詳しくは内科にご相談ください。
「先生、実は、うちのカミさんと最近、夜の生活が……」
だ、か、ら、僕は整形外科医だってばー!
雨は止みそうもないねー。え、中止ですか。それはそれは。では、失礼しましょうか。
「それじゃ、また一緒に試合しましょうねー」
しましょーねー、って。これまた「呼びかけ文を装った自発行動肯定文」だ! 冗談じゃないよ。本当にもう。これ以上食いものにされてたまるかってんだ。
あいまいに頷いて、そそくさとその場を後にした。
ふーっ、ようやく自分のベンチへ帰ってきたぞ。やれやれ。うちのチームーメイトはみな、早々と片づけを終えたようです。
「上間先生、お疲れ様でしたー」
なんで大差で負けたのに(ほとんど三回コールドみたいなものですよ!)、皆さんこんなにニコニコしているんですかね?
「お疲れ様でしたー」
答えながら僕は不自由な右足からAFO装具を外した。ああ、この雨のせいか、動きすぎたせいか、右足がむくんで痛みはじめたぞ。
軽くマッサージしながらつぶやく。この雨の中を、荷物もあるのに松葉杖突きながら、どうやって傘をさせってんだ? 無理だよ、無理!
それに、こんなむくんだ足を見せたら、また多恵子に怒られる。彼女は来年の一月に出産予定だ。あまり怒ったら胎教によくないんだけどなー。畜生、これこそ本当の「散々オールスターズ」じゃねーか。
そうだ。雨が止んだら、牧港のブルーシール寄って、あいつの好きなバニラでも買って帰るか。師匠も、東風平のお母さんも、バニラは好きだったよな?
ついでに僕も、S.F.(サンフランシスコ)ミントチョコを、ダブルで。そうだ。そうしようっと。
(Dr. Uemaの野球狂な半日:FIN)
At Urasoe City, Okinawa; November 16, 2003.
The narrator of this story is Tsutomu Kochinda(Uema).
「あ、どもども、いやー、うちのピッチャーがですねー」
こいつら、微笑みながら頭下げてるぜ。レフトばかり狙って打ってきたくせに。
「ちょっと、見せてもらえますか? アイスあったら用意してください」
とはいえ、僕も笑顔で応対します。今回はサザン・ホスピタルの名前を背負って歩いてますから、むげにはできません。
えー、簡単に診察しましたが、まぎれもなく軽い突き指です。十中八九、折れてはないでしょう。冷やしてきちんとテーピングすれば、まずは大丈夫。
「もし痛みが続くようでしたら、うちの病院に来てくださいね。レントゲンとりますから」
名刺を渡して立ち去ろうとしたら、なぜかそこには行列が……。あの、ここは診察室じゃありませんよ?
「どうせ雨ですから、ゆっくりしてってくださいよー」
そういう問題ではないと思うのですが。戸惑う僕には構わず、みなさん、相談を持ちかけてきます。
「いやー、最近、肩が痛いんですよ。四十肩ですかね?」
四十肩の人間が野球でキャッチャーするなよ!
ま、お困りのようなので、ちょっといくつかの動作を試してもらいましょうか。両腕を上げたり、後ろで組んだりしてもらう。
うーむ、この方のケースは判断に微妙なところですね。安静を保てば、四十肩は自然治癒する確率が高いのです。整形外科にいらしても消炎剤くらいしか処方できませんし、ストレッチですとか、お風呂のシャワーの水圧を使って気長に治すのが一番と思われます。くれぐれも肩を冷やさないようにね。お大事に。
「先生、酒の飲みすぎで通風を起こして、時々、つま先が痛いんですよ。なんとかなりませんか?」
薬よりなにより、お酒を控えるのが一番です。僕は整形外科医なので、詳しくは内科にご相談ください。
「先生、実は、うちのカミさんと最近、夜の生活が……」
だ、か、ら、僕は整形外科医だってばー!
雨は止みそうもないねー。え、中止ですか。それはそれは。では、失礼しましょうか。
「それじゃ、また一緒に試合しましょうねー」
しましょーねー、って。これまた「呼びかけ文を装った自発行動肯定文」だ! 冗談じゃないよ。本当にもう。これ以上食いものにされてたまるかってんだ。
あいまいに頷いて、そそくさとその場を後にした。
ふーっ、ようやく自分のベンチへ帰ってきたぞ。やれやれ。うちのチームーメイトはみな、早々と片づけを終えたようです。
「上間先生、お疲れ様でしたー」
なんで大差で負けたのに(ほとんど三回コールドみたいなものですよ!)、皆さんこんなにニコニコしているんですかね?
「お疲れ様でしたー」
答えながら僕は不自由な右足からAFO装具を外した。ああ、この雨のせいか、動きすぎたせいか、右足がむくんで痛みはじめたぞ。
軽くマッサージしながらつぶやく。この雨の中を、荷物もあるのに松葉杖突きながら、どうやって傘をさせってんだ? 無理だよ、無理!
それに、こんなむくんだ足を見せたら、また多恵子に怒られる。彼女は来年の一月に出産予定だ。あまり怒ったら胎教によくないんだけどなー。畜生、これこそ本当の「散々オールスターズ」じゃねーか。
そうだ。雨が止んだら、牧港のブルーシール寄って、あいつの好きなバニラでも買って帰るか。師匠も、東風平のお母さんも、バニラは好きだったよな?
ついでに僕も、S.F.(サンフランシスコ)ミントチョコを、ダブルで。そうだ。そうしようっと。
(Dr. Uemaの野球狂な半日:FIN)
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