サザン・ホスピタル 短編集

がーじゅーみやらび(我の強い美童)

8.上間（うえま）勉（つとむ）、返事を請求する

　At the Southern Hospital, Nakagusuku Village, Okinawa; June, 2000.
　The narrator of this story is Rika Aguni.

多恵子に課題を渡してくれと言われたので、あたしはそのまま、英作文をサザンに持ってきた。ナースステーションに来ると、テーブルの上にチョコレートがどっさり。
「あ、上間先生、戻られたんだ？」
「粟国さん、呼んだ？」
おおっと、上間先生がいる！　あたしはうれしくなって、つい上間先生を隣の部屋へ手招きした。テーブルの上に多恵子の書いた英作文を広げたのだ。

あたしは腰掛けた上間先生の後姿を注視した。最初は何でもなかったけど、だんだん、頭が細かく震え始めた。
……笑ってる！
「あのバカ！」
あ、多恵子と同じこと言ってる。
「考えてもみろよ。いつも顔あわせている奴にメールするのにさ、“Hello.”とか“How are you?”とか、書く？　書かないよな？」

うーん、上間先生、わかってないなー、女心ってやつを。と、あたしが言おうとしたときだ。
椅子から身を起こした上間先生が、去り際にこう言った。
「多恵子が来たら、こんな英作文書く前に、俺にちゃんと返事しろって伝えといて」

え、返事？　返事って？
ひょっとして上間先生、多恵子に、プロポーズしたの？　うっそー！　いつの間に？

あたしはドアを開けている上間先生を見た。耳が真っ赤っ赤だ。
「上間先生、耳が赤いですよ」
あたしがそう言うと、上間先生はすぐに両耳を押さえてそのまま退室していった。
か、かわいいー！一応、同級生なんですけど。でも、かわいい！
で、もちろん、責任を果たすべく多恵子に伝えました。多恵子も真っ赤になっていました。
あとはもう、話す必要ないよね？

え、あたしの恋愛事情ですか？
実は、上間先生からカッコイイ男性の方を紹介してもらいました。年下だけどすごく優しくっていい人です。そのうち、皆様にもご紹介しますね。では、また。

（がーじゅーみやらび　FIN）