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西原っ子純情
5.不良少年
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At Nishihara Town, Okinawa; February,1988 and July 6, 1988.
The narrator of this story is Akinobu Yagami.
二月の強い風に吹かれながら俺たちは校庭を突っ切り、ひなびた天ぷら屋へと向かった。
沖縄の天ぷら屋は、そのほとんどが魚屋の隣にある。沖縄は冬場でも、日中の気温が二十度を超える日が多い。食べ物がすぐダメになるから、新鮮でなくなり始めた魚やイカを、天ぷらに仕立てるのだ。イモ(沖縄でイモといえば例外なくサツマイモを指す)の天ぷらも人気が高い。それぞれ、一本三十円くらいで手に入る。
育ち盛りの男子(女子も?)中学生にとって、夕飯までのこの時間帯は天ぷらタイムなのだ。あちこーこー(熱々)の天ぷらにはソースが相場と決まっている。俺たちは黙々と天ぷらを食っていた。
この天ぷら屋の店内にはマンガ本も多く、加えて、店の隅っこに古いゲーム機をいくつか置いていた。時代遅れのインベーダーゲームやブロック崩しなどだ。だから、不良の溜まり場になっていた。
これくらい古い機種だと、実は隠れた裏ワザが使える。不正硬貨を受け付けるのだ。たとえば、百円でワンゲームという機種だと、すこし潰して大きくした五十円玉でもOK。さらに、コインの返却ボタンが壊れている場合は、一枚の硬貨で何回でもプレイできることがある。
この天ぷら屋の機械が、まさにそれだった。俺たちは何度か、不正硬貨を使ってゲームを楽しんだ。今日もそのつもりだった。特に、上間の件で俺はイライラしていた。
壊れかけたゲーム機の椅子に腰掛け、潰した五十円玉を入れたときだ。
「おい、そこの兄ちゃん」
軽めのトーンだが鋭さのある声が耳に刺さった。振り向いた俺は血の気が引いた。男は派手なデザインのメットを抱えていた。そういえば最近、このあたりでも暴走族が増えている。
「困るんだよねぇ、俺たちのシマでそんなもの使われちゃ」
楽しげに鳴り響くゲーム機の側で、俺はただ固まった。動けなかった。
三年生に上がった俺は、暴走族の下っ端として夜中にバイクを飛ばすようになった。
父親は浮気相手と出て行ったまま、何の連絡も寄越さない。母親はパートに出かけ、姉は中学を出た後インスタント食品をケースに詰める仕事についていたが、どっちにせよ、たいした収入は見込めなかった。
高校へなんか進学できそうもない。それならば、勉強しても意味が無い。
新しいクラスの雰囲気には全然なじめず、担任とは全く相容れなかった。次第に俺は荒れた。やがて不登校気味になり、町廻りと称して例の男と行動を共にするようになった。酒を飲み、煙草を吸い、意味もなく外泊を繰り返し、帰宅すれば家具や窓ガラスを叩いて壊した。母や姉は大声で泣き喚くだけだった。
The narrator of this story is Akinobu Yagami.
二月の強い風に吹かれながら俺たちは校庭を突っ切り、ひなびた天ぷら屋へと向かった。
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育ち盛りの男子(女子も?)中学生にとって、夕飯までのこの時間帯は天ぷらタイムなのだ。あちこーこー(熱々)の天ぷらにはソースが相場と決まっている。俺たちは黙々と天ぷらを食っていた。
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これくらい古い機種だと、実は隠れた裏ワザが使える。不正硬貨を受け付けるのだ。たとえば、百円でワンゲームという機種だと、すこし潰して大きくした五十円玉でもOK。さらに、コインの返却ボタンが壊れている場合は、一枚の硬貨で何回でもプレイできることがある。
この天ぷら屋の機械が、まさにそれだった。俺たちは何度か、不正硬貨を使ってゲームを楽しんだ。今日もそのつもりだった。特に、上間の件で俺はイライラしていた。
壊れかけたゲーム機の椅子に腰掛け、潰した五十円玉を入れたときだ。
「おい、そこの兄ちゃん」
軽めのトーンだが鋭さのある声が耳に刺さった。振り向いた俺は血の気が引いた。男は派手なデザインのメットを抱えていた。そういえば最近、このあたりでも暴走族が増えている。
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