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上間勉についての一考察

7.島袋(しまぶくろ)桂(けい)、目撃する

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At Nishihara Town, Okinawa; October, 1991
The narrator of this story is Kei Shimabukuro.

そして、十月下旬の火曜日。
昼休み、俺は偶然、その光景を目の当たりにした。
上間が廊下の端で女の子と話していた。相手は、東風平 こちんだ多恵子だ。
興味深く見守っていると、突然、上間が多恵子にハンカチを渡し、多恵子はそのハンカチで涙を拭いている。

なんだ、この二人?
いや、申し訳ないけど、全然釣り合わないよ?
片や貧乏だけど金髪の秀才、片や学校一のウーマクー女。接点がなさすぎる。

……と、正直、そのときは思った。

上間は一度、階下へと降りていったが、戻ってきたので、聞いてみた。
「おい、今、多恵子といい感じだったね?」
「なんだ、見てたのか」
上間は顔色一つ変えなかった。
「島ちゃんが考えているような、そんなんじゃないよ」
そう言って頭の後ろに両手を組むと、天井を仰いだ。
「サンシンの師匠のお嬢さんだ。そんだけ」
「サンシン? 多恵子のお父さんが?」
「そういうこと。そんなんでも、やたら騒ぐ奴、いるだろ?」

なるほど。たしかに、いるね。そういうヒマな奴。
否定するのに中途半端な噂話は、受験勉強の邪魔だよな。
ただでさえ上間は金髪で、目立つ。むやみやたらと騒がれたくない気持ちは、俺にもよーくわかった。
「水曜は稽古日なんだ。受験で忙しいけど、サンシンだけは、続けたくってね」

ははーん、そういうことだったの。ふーん。
と、そのときはそれで、納得したつもりだった。
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