誕生日のプレゼント

くるみあるく

文字の大きさ
上 下
9 / 9

8.その後の話

しおりを挟む
島袋さんが二枚の写真からあたしたちを探し出した話。翌月、ちゃっかりダチビン出版社の情報誌『とぅっくいぐゎー』に掲載されました。ええ、例の家族写真と、あたしと裕太の披露宴風景とともに。東風平こちんだのおじさんが上間先生とサンシン弾いて、妹の由希が「かぎやで風」を踊ってるところも。由希ってば素直に喜んでいるの。
「これで、あたしを探しに王子様が来てくれるんだわー!」

な、何か違ってる気がするんだけど。まあいいか。確かこれファンタジー小説だったわよね?

え、あたしたちの現況ですか?

(写真はダンディー中心部の丘 ダンディーロウからテイ川を見下ろしたところ)

あたし、本当はスコットランド着いてすぐにバイクに乗るつもりだったの。だって、イギリスは日本と同じ左側通行だから交通ルール間違えることもないし。ツーリングのイメトレとかもしてたんだよ。でも、裕太が猛反対した。
「妊婦さんになるかもしれないのに、バイクなんてとんでもない!」
「えー? だって、妊娠する前に思い出作りたいもん、いいでしょ?」
「だめ、とにかく絶対、だめ!」

最初、どうしてこんなに大反対するんだろうって正直腹が立った。
でも、すぐ理由がわかりました。
スコットランド、寒いんです。首都エディンバラの十月の平均気温は9度。え? 沖縄で9度なんて冬でもありえないし! それに雨がぱらつくんですよ。もう考えただけで寒くて。昼間まだ暖かいうちに(それでも最高気温15度って沖縄の真冬!)買い物とかささっと済ませておうちの片付けとかしたらすぐ日暮れで、裕太が研究室から戻ったら夕ご飯食べてベッドへ直行して。
はい、妊娠してしまいました。だって寒いんだもん! 新婚なんだもん! しかも、妊娠発覚したのが裕太の誕生日。きゃー、これが本当の誕生日プレゼントだよ!

でね。あたしは全然平気なんだけど裕太がつわりになっちゃって。男の人もつわりになるんだね、かわいそうな裕太。一応、イングランドのあきらさんご夫妻に来てもらっているから大丈夫なんだけどさ。
と言うわけで、あたしはしばらく妊婦生活エンジョイしますよー。

物語はここまで。読者の皆様にもいいことありますように! See  You!
(誕生日のプレゼント FIN)
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

東京の人

くるみあるく
恋愛
BLなのかもしれませんし、そうでないかもしれません。 沖縄からたまたま東京に来ていた警官・矢上明信(やがみ・あきのぶ)は、悲鳴を聞きつけある女性を助けました、が、彼女は言いました。「私、男です」 あっけにとられる矢上に彼女いや彼は自分も沖縄の人間だと告げ、勤め先であるミックスバーの名刺を渡して立ち去りました。彼女いや彼は金城明生(きんじょう・あきお)という名前なのですが読み方を変えて‘あけみ’と名乗っています。同じ明の字を持つ同郷の矢上を、‘あけみさん’は「ノブさん」と親しく呼びました。 矢上はやがて上京の度に、彼女いや彼こと‘あけみさん’やミックスバーの面々と親しく交流するようになります。矢上自身はやくに妻と死に別れ、孤独を紛らわせる場を探していたのでした。 ところが矢上の中学生の息子が母親の遺品で化粧を始めるようになります。息子は小さな頃から女の子のものを欲しがることが多かったのです。今はなんとか保健室登校をしていますが、「高校へ行きたくない、制服を着たくない」と泣き叫びます。悩んだ矢上は‘あけみさん’に相談すると、彼女いや彼は自分の高校の女子服を譲ってもいいと申し出ます。 そして二人は制服の受け渡しのためデートをすることに。‘あけみさん’が男であることをわかっているのに胸の高鳴りをおぼえる自分に矢上は戸惑いを隠せなくて……。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

サザン・ホスピタル 短編集

くるみあるく
青春
2005年からしばらくWeb上で発表していた作品群。 本編は1980~2000年の沖縄を舞台に貧乏金髪少年が医者を目指す物語。アルファポリスに連載中です。 この短編は本編(長編)のスピンオフ作品で、沖縄語が時折出てきます。 主要登場人物は6名。  上間勉(うえま・つとむ 整形外科医)  東風平多恵子(こちんだ・たえこ 看護師)  島袋桂(しまぶくろ・けい 勉と多恵子の同級生 出版社勤務)  矢上明信(やがみ・あきのぶ 勉と多恵子の同級生 警察官)  粟国里香(あぐに・りか 多恵子の親友で看護師)  照喜名裕太(てるきな・ゆうた 整形外科医) 主人公カップルの子供である壮宏(たけひろ)と理那(りな)、多恵子の父母、サザン・ホスピタルの同僚たちが出たりします。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

ようこそ、悲劇のヒロインへ

一宮 沙耶
大衆娯楽
女性にとっては普通の毎日のことでも、男性にとっては知らないことばかりかも。 そんな世界を覗いてみてください。

処理中です...