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Part3 The year of 2000
Chapter_10.Dr. Uemaの悲惨な一日 L.A.編(1)直腸診
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At UCLA, Los Angeles, California; November 23, 6:42AM PST, 2000.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
この章は下品な表現を一部含んでいます。お食事前の方はご注意ください。
どこにいても、たとえ祝日であろうと、悲惨な一日ってのはやって来る。
十一月二十三日。勤労感謝の日だ。いや、たまたま、今年は日本と同じ日だね。十一月の第四木曜日だから。この日前後からクリスマス明けの新年早々まで、アメリカ中がお祭ムードに包まれさまざまな催しやバーゲンなどが開催されるのだ。ちなみに、一年のうちでもっとも太りやすい時期とも言われている。
その日、ロサンゼルスはよく晴れていた。たしかにERは戦場みたいな日もあるが、今日は祝日だし、平穏に始まる予感がした。short勤務の僕はいつものように朝六時半には出勤すると、ロッカールームで着替えを始めた。
あれ? 何か今、うめき声がしなかったっけ?
僕は白衣を引っ掛けると、ボタンを止めながら声のする方向へ向かった。……ここはたしか、Ultrasonography Laboratory (超音波検査室)だよね? 使用中という表示はないが、一応ノックした。コツコツコツ。
反応は、ない。さては、気のせいでしたか。踵を返そうとしたとき、ドアが開いた。
“Hey, intern! ”
(やあ、研修医!)
太い声に振り返ると、たしか歓迎会の時に一度だけ挨拶した先生だ。彼は眼科、いや、精神科のドクターだったかな?
“Come in here!”
(入りたまえ!)
呼ばれて素直に検査室へ入ったのがいけなかった。中に招かれた僕が見たのは、見事に縛られベッドにうつぶせになってわめいている、太ったユダヤ系らしき中年男性。しかも、彼は下半身を脱がされ、猿ぐつわのように枕で口を覆われていた。うめき声と同時に大きな白いお尻がプルプル震えている。
あの、これって、七面鳥の代わりにお仕置されているんですか? それとも、男性同士の、そういう世界ってことですか?
そういえば、アメリカにはホモセクシュアルの方が多いんです。市民権も認知される傾向にあります。目が点になっている僕の側で、例の同僚が僕の顔を眺め含み笑いをしている。
「あ、あはは……」
思わず僕は後ずさりした。ちょっと、ぼ、僕はそういうの全く興味なんかないんですけど?! え、レズビアンと付き合ったことがあるだろうって? でも、フィッシュはあれでも一応、女だったぞ?
焦る僕に、同僚は意味深な笑いを浮かべながらゴム手袋を指し示した。
“This is a good opportunity to improve your rectal examination skills.”
(これは君にとって、直腸診のスキルを磨くいい機会だ)
い? 直腸診、ですか? そりゃ、できますよ。できますけどね。なぜです?
するとこの同僚は忌々しげに患者さんを指差し、つぶやいたのです。こんな具合に。
“He called me a tight-ass.”
(こいつは私をケツの穴の小さい野郎とぬかしやがった)
詳しいことは判りませんが、きっと、この患者さん(?)と、何か言い争いをされたのでしょう。で、そうののしられたのでしょう。
“I guess that means he has a loose one, so you won't need any lubricant.”
(きっと、奴のケツの穴はでかいだろうから潤滑剤はいらんよ)
“What?!”
(何ですって?)
いや、あの、そんな無茶な?! たじろぐ僕の顔を、同僚は鬼気迫る声とともに睨みつけた。
“Let's begin! Hurry up!”
(始めなさい、早く!)
というわけで、しました。直腸診。ええ。指示に従いましてワセリンなしで。患者さんかどうか知りませんが、一瞬うめいて、気絶されました。
みなさん、こんな具合に気絶したくなかったら、医者にけんかを売るのは止めましょう。
勤労感謝の日だというのに、朝一番から、直腸診。それも、患者さんでもない(と思われる)、こんな太ったおっさんのを、ねぇ。診るならもうちょっとprettyなお尻の方が僕は好みだけどなー。
ああ、今日は波乱の幕開けだ。先が思いやられるぞ。 ((2)へつづく)
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
この章は下品な表現を一部含んでいます。お食事前の方はご注意ください。
どこにいても、たとえ祝日であろうと、悲惨な一日ってのはやって来る。
十一月二十三日。勤労感謝の日だ。いや、たまたま、今年は日本と同じ日だね。十一月の第四木曜日だから。この日前後からクリスマス明けの新年早々まで、アメリカ中がお祭ムードに包まれさまざまな催しやバーゲンなどが開催されるのだ。ちなみに、一年のうちでもっとも太りやすい時期とも言われている。
その日、ロサンゼルスはよく晴れていた。たしかにERは戦場みたいな日もあるが、今日は祝日だし、平穏に始まる予感がした。short勤務の僕はいつものように朝六時半には出勤すると、ロッカールームで着替えを始めた。
あれ? 何か今、うめき声がしなかったっけ?
僕は白衣を引っ掛けると、ボタンを止めながら声のする方向へ向かった。……ここはたしか、Ultrasonography Laboratory (超音波検査室)だよね? 使用中という表示はないが、一応ノックした。コツコツコツ。
反応は、ない。さては、気のせいでしたか。踵を返そうとしたとき、ドアが開いた。
“Hey, intern! ”
(やあ、研修医!)
太い声に振り返ると、たしか歓迎会の時に一度だけ挨拶した先生だ。彼は眼科、いや、精神科のドクターだったかな?
“Come in here!”
(入りたまえ!)
呼ばれて素直に検査室へ入ったのがいけなかった。中に招かれた僕が見たのは、見事に縛られベッドにうつぶせになってわめいている、太ったユダヤ系らしき中年男性。しかも、彼は下半身を脱がされ、猿ぐつわのように枕で口を覆われていた。うめき声と同時に大きな白いお尻がプルプル震えている。
あの、これって、七面鳥の代わりにお仕置されているんですか? それとも、男性同士の、そういう世界ってことですか?
そういえば、アメリカにはホモセクシュアルの方が多いんです。市民権も認知される傾向にあります。目が点になっている僕の側で、例の同僚が僕の顔を眺め含み笑いをしている。
「あ、あはは……」
思わず僕は後ずさりした。ちょっと、ぼ、僕はそういうの全く興味なんかないんですけど?! え、レズビアンと付き合ったことがあるだろうって? でも、フィッシュはあれでも一応、女だったぞ?
焦る僕に、同僚は意味深な笑いを浮かべながらゴム手袋を指し示した。
“This is a good opportunity to improve your rectal examination skills.”
(これは君にとって、直腸診のスキルを磨くいい機会だ)
い? 直腸診、ですか? そりゃ、できますよ。できますけどね。なぜです?
するとこの同僚は忌々しげに患者さんを指差し、つぶやいたのです。こんな具合に。
“He called me a tight-ass.”
(こいつは私をケツの穴の小さい野郎とぬかしやがった)
詳しいことは判りませんが、きっと、この患者さん(?)と、何か言い争いをされたのでしょう。で、そうののしられたのでしょう。
“I guess that means he has a loose one, so you won't need any lubricant.”
(きっと、奴のケツの穴はでかいだろうから潤滑剤はいらんよ)
“What?!”
(何ですって?)
いや、あの、そんな無茶な?! たじろぐ僕の顔を、同僚は鬼気迫る声とともに睨みつけた。
“Let's begin! Hurry up!”
(始めなさい、早く!)
というわけで、しました。直腸診。ええ。指示に従いましてワセリンなしで。患者さんかどうか知りませんが、一瞬うめいて、気絶されました。
みなさん、こんな具合に気絶したくなかったら、医者にけんかを売るのは止めましょう。
勤労感謝の日だというのに、朝一番から、直腸診。それも、患者さんでもない(と思われる)、こんな太ったおっさんのを、ねぇ。診るならもうちょっとprettyなお尻の方が僕は好みだけどなー。
ああ、今日は波乱の幕開けだ。先が思いやられるぞ。 ((2)へつづく)
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