サザン・ホスピタル byうるかみるく

くるみあるく

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Part3 The year of 2000

Chapter_08.子守唄(3)沖縄からの小包

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At UCLA and Westwood, Los Angeles, California; October, 2000.
This time, the narrator changes from Taeko Kochinda into Tsutomu Uema.
勉君のモノローグへ切り替わります。

ロサンゼルスへ来て一ヶ月が過ぎたが、メディカルセンターでは相変わらず会話の糸口をつかめずにいた。
僕は、自分が内気でぶっきらぼうな人間だということに改めて気づかされた。陽気でおしゃべりで闘争心をあらわにするアメリカの研修医レジデントを見ていると、僕は本当は外科医に向いてないんじゃないかとさえ思えてきた。
僕は孤独だった。うすら寒い気候と、やたら肉類と油物が多い乱れた食生活、そして表面的に流されていく日々の多忙さが、そんな気持ちに拍車を掛けていた。

そんな僕を支えていたのは、多恵子からのメールと小包の数々だ。彼女のメールは沖縄の温かさに溢れていたし、やってきた小包からは、懐かしい沖縄の香りがした。僕はゴーヤーチャンプルーを作り、塩せんべいをかじり、シークヮーサージュースを飲んで、明日からも訪れるであろう試練の日々に備えた。

ある土曜の夕方、大家さんがまた僕宛の小包を二つも持ってきた。今回の小包はやけに重い。表を見ると、BooksとかMagazineと書いてある。何だこりゃ?
部屋に着き、僕は段ボール箱を開けた。差出人は多恵子じゃなかった。Kei Shimabukuro、島ちゃんだ。
いやー、見事なまでにほとんど全部、エッチ本です。しかも、1980年代の『平凡』とか『明星』なんてものも混じっている。そして、ダンボールの底には、こんなメモが貼り付いていた。

 これだけあれば十分だろ。多恵子、泣かすなよ?

あのね、島ちゃん。これは好意と言うより、どう考えても君の部屋の処分物としか思えないんだけど。第一、石川秀美の水着姿って、いつの話だよ? 確かにこういう系統の女性、嫌いじゃないけどさ、むしろ好みかも、……って、ちょっと、何を言わせるんですか?
ええ、折角の贈り物ですから、ベッドの下にでも積んで大いに活用させていただきますわ。

その翌日。日曜の夕方のことだ。
チャイナタウン近郊にある大型ショッピングセンターの駐車場で発砲事件があり、黒人男性の患者さんが運び込まれた。その日僕は早朝からずっと対応に追われ、全く休憩を取ってなかった。ひっきりなしに患者さんが運び込まれ、食事どころではなかったのだ。空腹でいらつく心を鎮めながら、僕らは患者さんのバイタルを取り、気管挿入を行ってオペ室へ運び込んだ。一刻の猶予も許される状況ではなかった。

“Uema, why don't you take a little breather? Go ahead and leave this patient to us.”
(上間、外で休憩してこい。ここは任せろ!)

僕の指導医であるDr. Murdockから声が掛かる。

“It’s okay for me to take a break?”
(休めるんですか?)

“Today has been a hard day, hasn’t it? But come back in 15 minutes!”
(君は今日激務だろ、十五分で戻れよ!)

"Thank you!”
(わかりました!)

僕はゴム手袋を外し手術室の外へ出た。ようやく休める! ((4)へつづく)
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