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第15話 共感型男性と再現型女性のコンビ 与謝野鉄幹・晶子夫妻
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妻をめとらば才たけて/みめうるわしく情ある
こんな出だしで始まる歌をご存知でしょうか。「人を恋うる歌」と言い、明治後期~大正文化の旗手とも言われる与謝野鉄幹の作です。
鉄幹は本名は寛(ひろし)といい1873(明治6)年京都生まれ。教師をしていたのですが上京して文学を学び、1900(明治33)年には『明星』を創刊します。みげか=3:5:2な彼は共感型らしく自由浪漫主義を掲げ新しい風を吹き込みます。そんな彼の元へはさまざまな人々がやってきました。のちに妻となる鳳晶(ほう・しょう)もその一人です。
やがて彼女は晶子(あきこ)と名乗り、当時妻子のあった鉄幹と不倫関係に陥ります。晶子は典型的な、みげか=1:3:6の再現特化型です。再現型は普段は社会のルールに準じた行動をとるのですが、これぞと思った人物とは脇目もふらず熱心に求愛し続けます。彼女の類まれな才能と熱烈なアタックに鉄幹も飲まれる一方、これまた彼に恋する弟子・山川登美子の才能にも惹かれていきます。
「今」を生きる共感型は目の前の誘惑に弱く、自らを律することが苦手です。話が脱線しますが、女性関係に苦しんだ有名な作家としてみげか=3:6:1の太宰治がいます。共感特化型の太宰は複数の女性と関係を持ちそれぞれに子供までもうけ、芥川賞を切望しながら結局自らの子供の母親たちとは全く別の女性と入水自殺をしてしまいます。乱れた私生活はいまだに大衆の興味の的でありますが、人間の弱さや心の動きを巧みにつづった太宰の代表作「走れメロス」「斜陽」「人間失格」などは現在も根強い人気を誇っています。
話を与謝野鉄幹・晶子夫妻に戻しましょう。
晶子と登美子は互いをライバル視しつつも仲が良く、「白萩」「白百合」と呼び合って青春を共にしています。そんな二人を鉄幹はどちらも愛しつつ、歌風の違い、性格の違いや実際のやり取りなどを『明星』で赤裸々にネタにしセンセーショナルに発表しました。現代風に言えばあえて炎上させることで『明星』の売り上げを図ったのです。
ちなみにこの三角関係(実際には鉄幹の当時の妻も交えると四角になってしまうのですがそれは置いといて)、鉄幹が創造少々ふくむ共感型で晶子が再現特化型、登美子は典型的な共感型と思われます。みげかのバランス的にもバズりやすかったと言えます。クルミアルクは以前「共感型同士は不安定」という話もしたことがありました。鉄幹が登美子でなく晶子を選んだ理由はそれもあったのでしょうか。
やがて晶子は『みだれ髪』を発表、鉄幹の正式な妻となったのちも自らの弟へ向けた反戦歌「君死にたまふことなかれ」を発表し世間の注目を集めました。家庭ではなんと6男6女の母として育児と家庭の両立に奮闘し立派に育て上げています。
1908(明治41)年に『明星』は廃刊します。失意の鉄幹は名前を本名である寛に改めますがなかなか良い作品を生み出せずスランプに陥ります。そんな夫を精神的にも経済的にも支えたのは妻の晶子でした。夫を励ます方法として彼女はフランス留学を持ちかけパーティーまで開いて資金集めに奔走します。
そして寛は1911(明治44)年フランスへ旅立ち、新聞記事などを執筆することで自らの存在を再び世間にアピールしました。「今」を生きる共感型にとって現地取材はお手のもので、与謝野寛の海外レポートは好評を博します。
共感型の寛は晶子への恩返しも忘れていません。翌年、寛は晶子に、フランスへ来るように呼びかけたのです。
まだ封建社会の影響が色こく残る明治の時代に、日本から女性単身で出てくるよう、それも公に呼びかけた。女性が単身旅行は非常に困難な時代、しかも前年に晶子は4女を出産し、彼女はまだ1歳になったばかり。それでも寛は妻の才能を世間の慣習で縛ることなく、ちゃんと晶子が翔ける舞台を用意したのです。
その後の晶子の活躍ぶりは明治期に劣らぬものであります。寛も文学的には不振を続けたのですが、慶應大学の教授となりさまざまな人材を育てています。
互いに相手を生かし、発展していく。まさに「みげか」のチカラを生かし切った夫妻でした。
こんな出だしで始まる歌をご存知でしょうか。「人を恋うる歌」と言い、明治後期~大正文化の旗手とも言われる与謝野鉄幹の作です。
鉄幹は本名は寛(ひろし)といい1873(明治6)年京都生まれ。教師をしていたのですが上京して文学を学び、1900(明治33)年には『明星』を創刊します。みげか=3:5:2な彼は共感型らしく自由浪漫主義を掲げ新しい風を吹き込みます。そんな彼の元へはさまざまな人々がやってきました。のちに妻となる鳳晶(ほう・しょう)もその一人です。
やがて彼女は晶子(あきこ)と名乗り、当時妻子のあった鉄幹と不倫関係に陥ります。晶子は典型的な、みげか=1:3:6の再現特化型です。再現型は普段は社会のルールに準じた行動をとるのですが、これぞと思った人物とは脇目もふらず熱心に求愛し続けます。彼女の類まれな才能と熱烈なアタックに鉄幹も飲まれる一方、これまた彼に恋する弟子・山川登美子の才能にも惹かれていきます。
「今」を生きる共感型は目の前の誘惑に弱く、自らを律することが苦手です。話が脱線しますが、女性関係に苦しんだ有名な作家としてみげか=3:6:1の太宰治がいます。共感特化型の太宰は複数の女性と関係を持ちそれぞれに子供までもうけ、芥川賞を切望しながら結局自らの子供の母親たちとは全く別の女性と入水自殺をしてしまいます。乱れた私生活はいまだに大衆の興味の的でありますが、人間の弱さや心の動きを巧みにつづった太宰の代表作「走れメロス」「斜陽」「人間失格」などは現在も根強い人気を誇っています。
話を与謝野鉄幹・晶子夫妻に戻しましょう。
晶子と登美子は互いをライバル視しつつも仲が良く、「白萩」「白百合」と呼び合って青春を共にしています。そんな二人を鉄幹はどちらも愛しつつ、歌風の違い、性格の違いや実際のやり取りなどを『明星』で赤裸々にネタにしセンセーショナルに発表しました。現代風に言えばあえて炎上させることで『明星』の売り上げを図ったのです。
ちなみにこの三角関係(実際には鉄幹の当時の妻も交えると四角になってしまうのですがそれは置いといて)、鉄幹が創造少々ふくむ共感型で晶子が再現特化型、登美子は典型的な共感型と思われます。みげかのバランス的にもバズりやすかったと言えます。クルミアルクは以前「共感型同士は不安定」という話もしたことがありました。鉄幹が登美子でなく晶子を選んだ理由はそれもあったのでしょうか。
やがて晶子は『みだれ髪』を発表、鉄幹の正式な妻となったのちも自らの弟へ向けた反戦歌「君死にたまふことなかれ」を発表し世間の注目を集めました。家庭ではなんと6男6女の母として育児と家庭の両立に奮闘し立派に育て上げています。
1908(明治41)年に『明星』は廃刊します。失意の鉄幹は名前を本名である寛に改めますがなかなか良い作品を生み出せずスランプに陥ります。そんな夫を精神的にも経済的にも支えたのは妻の晶子でした。夫を励ます方法として彼女はフランス留学を持ちかけパーティーまで開いて資金集めに奔走します。
そして寛は1911(明治44)年フランスへ旅立ち、新聞記事などを執筆することで自らの存在を再び世間にアピールしました。「今」を生きる共感型にとって現地取材はお手のもので、与謝野寛の海外レポートは好評を博します。
共感型の寛は晶子への恩返しも忘れていません。翌年、寛は晶子に、フランスへ来るように呼びかけたのです。
まだ封建社会の影響が色こく残る明治の時代に、日本から女性単身で出てくるよう、それも公に呼びかけた。女性が単身旅行は非常に困難な時代、しかも前年に晶子は4女を出産し、彼女はまだ1歳になったばかり。それでも寛は妻の才能を世間の慣習で縛ることなく、ちゃんと晶子が翔ける舞台を用意したのです。
その後の晶子の活躍ぶりは明治期に劣らぬものであります。寛も文学的には不振を続けたのですが、慶應大学の教授となりさまざまな人材を育てています。
互いに相手を生かし、発展していく。まさに「みげか」のチカラを生かし切った夫妻でした。
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