MIGEKAのとびら

第08話 “病める天才”は過信に注意

現在共感型について語ってきましたので、今回は「現在共感型」と「未来創造型」のハイブリットである「病める天才タイプ」について綴ります。
このタイプはみげか＝5:4:1 あるいは4:5:1 いずれかのタイプで、過去再現性の要素が1しかありません。過去ですとか既存の法律などの「定まった決まりごと」にあまり関心がなく、現在と未来を志向します。
ただ、たまに過去大好きタイプの「病める天才」もいます。この場合は未来志向な興味の対象がたまたま過去の出来事にあるケースです。一見「過去再現タイプ」との見分けがつきにくいのですが論理が飛躍しているのでそこで判断します。

「病める天才」代表例として、日本の民俗芸能論の草分け的存在である折口信夫があげられます。日本における芸能論をアミニズム思想から深く解き明かす手法は、当時の研究者たちに大きな衝撃を与えました。ただ論理展開があまりにぶっ飛んでいるため未だに英訳が出版されていません。独特の流れるような文体に象徴される揺れ動く論理の数々については、再現特化の柳田國男らから鋭いツッコミを何度となく受けてきましたし、折口自身が同性愛者（正確にはバイロマンティックゲイセクシュアル）であったことを含め、現在に至るまで一定の批判のもとにさらされ続けている存在です。
ですが折口はそのぶっ飛んだ論理を文学者として体現し続ける側面を生涯にわたって持ち続けました。彼が展開した詩歌や随筆は、古来の人々が「畏怖する精霊たち」を「まれびと」として招来し、もてなし、見送るという一連の思想体系を裏付ける作品群でもあります。芸能が人々の論理的思考と迷える情念のもとに成り立つものであるとした折口の考えは、再現型では導くことが困難なインスピレーションに支えられまとめられたのでした。

他に「病める天才」タイプには、第03話に登場した安達祐実さんがいます。天才的な演技力を持っているにもかかわらず現在共感型の不安定さが時折顔を出します。似たタイプには、軽妙なトークを展開しつつも番組のテンション全体で浮き沈みが激しい明石家さんまさん、抜群の歌唱力と優れた作詞センスでノンバイナリーとしての資質も丸ごと表現し人々の共感を獲得し続ける宇多田ヒカルさん、幾度もリストカットに苦しみつつ希望を歌い上げ熱烈な支持を誇るCoccoさんを上げることができます。

このタイプは「未来創造型」「現在共感型」の2要素を併せ持つため、その特異な才能で一般受けすると、自らを過信して暴走してしまうことがあります。それを防ぐには周囲に過去再現要素を持つマネージャーやスタッフの存在が不可欠です。
では例として「コント55号」や「視聴率100％男」として一世を風靡した萩本欽一さんをみてみましょう。
「コント55号」の相方は再現型の坂上二郎さん。舞台いっぱいに飛び跳ねる才気煥発な欽ちゃんをおおらかにリードした坂上さんの存在なくして「コント55号」の成功は語れません。「視聴率100％男」として成功して後、新しいお笑いブームで全ての番組終了を余儀なくされた欽ちゃんでしたが、持ち前のチャレンジ精神で演出家として現在も活躍し続けています。
猛勉強を重ね見事大学生となった姿に勇気づけられた人々も多いでしょうし、その後「自分はお笑いでまだやるべきことがある」と退学してYouTubeチャンネルを立ち上げ情報発信を続けていらっしゃる。その配信を支えているのはやはり再現性のあるスタッフたちです。
みげか診断を体現した生き方を身をもって示す欽ちゃん、これからの活躍にも期待大です。