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第二章 失って得たもの

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「クリストフのそれは、どうするの? 僕が手伝えることはない?」

 僕がクリストフの下腹部を見つめてそう尋ねると、クリストフは虚をつかれたように目を瞬いて、それからじとりと目を細めた。

「君は自分が何を言っているのか分かっていないだろう」
「分かってるつもりだけど……」
「では私がこんなことになっているのは何故だと思う。君の先程の姿体に性的興奮を得たから反応しているんだよ。それを当人から誘うようなことを言われたらどうなる。私でなければ君は滅茶苦茶にされてしまうよ」

 クリストフのその反論を得て、今度こそ僕は確信した。
 どくり、と胸の奥が激しく熱く震えている。体の奥から囁くように沸き立ってくるこの感覚、この衝動。
 クリストフが僕を見て、僕に触れたいと反応してくれたのだという悦びが、痺れるような快楽を僕に与えていた。
 贖罪欲なんて体のいい言い訳だ。僕は、興奮しているのだ。僕に対して性的な反応を示してくれたクリストフに。そして僕もまた、クリストフに触れたいと思っている。腰の内側に、どろりと熱い欲が湧いてくるのを感じる。

「何も知らない君にいきなり無体をするつもりはない。だが君も無邪気に煽るような発言は慎むことだ。私だって聖人君子ではないのだから」

 また保護者のようにしかつめらしく言い聞かせるクリストフに、僕は首を振る。

「クリストフになら滅茶苦茶にされたいと思う。僕だって、クリストフに触れたい」

 僕はもう何も知らない子どもではない。クリストフが教えてくれたのだ。
 クリストフに触れたい。クリストフにも快楽を与えたい。もっと深い所で繋がり合いたい。
 腰が痺れるようなこの熱が、僕を欲求のままに突き動かす。僕はクリストフの指に自分のそれを絡め、懇願するように見上げた。
 見開かれたクリストフの瞳には、あの蠱惑的な獣の炎が宿っており、僕はそれにぞくりと背を震わせたのだった。


 ベッドに座るクリストフの、投げ出された足の間に僕は収まっていた。眼前には衣服を脱いだクリストフの、僕とは比べようもないほど立派な陰茎が天を衝いている。最初はどうすればいいのか分からなくて戸惑ったけれど、僕の拙い手の動きにもクリストフが反応を示してくれるのが嬉しくて、もっとクリストフを喜ばせたいと夢中になって手を動かしていた。
 クリストフにしてもらったことを思い出してなぞろうとしていると、その時の感覚まで思い起こされて、僕は知らず腰を揺らしていた。溜息のようなクリストフの吐息が背中に掛かる。熱っぽい息遣いが僕の耳を通って頭の中まで溶かしてしまうようで、僕は現実味のない浮遊感を味わっていた。
 ぼんやりと見つめたクリストフの陰茎の先から、とろりとした液体が盛り上がる。僕は明確な意思も持たずに、誘い込まれるようにそこへ舌を伸ばしていた。

「……っ」

 触れた瞬間、クリストフが息を詰めた声を漏らした。
 その表情を窺い見ると、苦しそうに歪めた目で僕をじっと見つめている。獰猛で美しい瞳には、いっそ食べられてしまいたいと思わせる魅力があり、背徳的な悦びに僕の体が震えた。
 クリストフが僕の髪を撫でるだけで制止しないのをいいことに、果たしてこれは許されることなのかも分からぬまま、僕は更に舌を這わせた。クリストフの息が上がっている。僕の心臓もどきどきと大きく鳴っていた。

 その時、あらぬ場所に刺激を感じて、僕は驚いて体を揺らした。慌ててそこを振り向いてみれば、唾液で湿らせたのだろうクリストフの濡れた指が、僕の浮いた尻に触れていた。

「……クリストフ?」

 問いかけても返事はなく、ただ燃えるような瞳で見つめ返される。
 戸惑う僕には構わずに、クリストフの指が窪みをなぞる。

「あっ」

 つぷり、と指先を差し込まれて、僕はのけ反った。
 違和感が拭えない。体を強張らせていると、僕の肩にクリストフが口付けた。

「力を抜いて」

 どうしてクリストフがそんな所を弄っているのか理解はできなかったが、クリストフが言うのだからと力を抜いた。すると指はさらに奥へと進められた。
 未知の感触に鳥肌が立ったが、中をまさぐられる度に濡れ木が燻るようなぐずぐずとした熱を感じた。
 指がゆっくりと抜き差しされ、次第に本数を増やされて、微かな水音を立てる。
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