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第一章 孤児院時代
閑話 思春期マルクの苦悩 ※
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「よぉ、マルク。頼まれてた物、いくつか入ってるぜ。見てくか?」
いつもの遣いの帰りに繁華街を歩いていたマルクにそう声を掛けたのは大工の男だ。マルクが広げた人脈の中の一人で、たまに工房の手伝いなどもする親しい仲になっていた。
マルクはその大工に来春から住む家に置く家具の手配を依頼していた。とはいえマルクに家具を作ってもらうような潤沢な資金はない。大工が客のオーダー品を納品する際に、古い物を引き取り処分することがある。それを格安で譲ってもらえないかと頼んでいたのだ。大工としても使い古された家具は大して利用価値のない物だったから快く引き受けてくれていた。
「あぁ、ありがとう! ちなみに品は何だい?」
「今回は古いベッドが二つだな」
「ベッドか! それはいい。早速見せてもらうよ」
大工と共に工房の物置小屋に入って、マルクは雑に押し込まれた二台のベッドを比べ見た。一つは一人用にしては大きめのゆったりとしたもので、これならばまだ体の出来上がっていないマルクとアンリ二人が寝そべっても孤児院のベッドよりも窮屈さは感じないだろうと思える物だった。しかし相当年季が入っており、少し寄りかかっただけでぎしりと軋む音がした。
もう一つのベッドはかなり小さなものだった。もしかしたら裕福な家の子ども用のものかもしれないとさえ思える大きさだ。しかしこちらは質も状態も良く、サイズさえ大きければ中古でも充分売れそうな品だった。
マルクは腕を組んで悩んでしまった。どちらにも良さがあり、欠点がある。
たとえば小さなベッドは窮屈かもしれないが、毎日堂々とアンリにくっついて寝られるという利点がある。照れ屋なアンリのことだ、毎晩抱きしめて寝るのは恥ずかしがるだろう。
「マルク、そんなに近くでまじまじと寝顔を見られたら恥ずかしいよ」
「仕方ないだろ、ベッドが小さいんだから」
「それはそうだけど……でもこんなにぎゅっと抱きしめられると……」
「何?」
「マルクの……当たってるのが分かって恥ずかしい……」
マルクは既にはっきりと隆起していたものをアンリの下腹部にわざと押し当てた。
「仕方ないよ、ベッドが小さいんだからさ。それにアンリだって」
「あっ……」
マルクはアンリの中心へと手を伸ばした。兆しかけていたアンリのものは布越しにマルクの手に優しくなぞられてぴくりと震えた。マルクは気を良くしてやわやわと揉む。
「あ……んっ……マ、マルク」
「仕方ないよ、ベッドが小さいからね」
マルクの手はアンリの下履きの中に入り込み、健気に立ち上がったものをきゅっと握った。緩く擦るとアンリの体がびくんと大きく揺れた。
「あっ、あ……や……マルクぅ……んっあぁっ」
マルクが手に力を込めて擦り上げるとアンリの喉がのけぞる。緩急をつけて上下に扱き、時に先端の敏感な部分をくすぐればアンリの黒曜石のような瞳に涙が盛り上がる。赤い舌を僅かに覗かせ物言いたげにこちらを見つめる顔は、壮絶に妖艶に見えた。マルクは生唾を飲み込んで更に擦る速度を上げた。
「もうダメ、離し……やぁっ、マルク、あっ、あんっんっ……アァッ!」
悪くない。
マルクは想像したアンリの姿に頷いた。顎に手を遣り目を瞑って、未来のアンリの嬌態をあれこれと妄想する。
小さいベッドは悪くない選択だ。しかも頑丈そうだからちょっとやそっと激しくしても問題ないだろう、などと考えていた。
やはりこちらのベッドにするべきかと思ったが、隣に置かれた大きなベッドもなかなかに捨てがたい。広いということは好きな姿勢をとれるということだ。姿勢というのはもちろん寝る姿のことではない。体位のことだ。
「あ、あっ、あっ、んっ、あぁっ」
アンリの細い腰を掴み、思い切り突く度にアンリの口からは嬌声が漏れる。甘く蕩けるような響きにマルクの脳は痺れそうだった。足を大きく開かされたあられもない格好で仰向けに寝そべり、こちらを見上げるアンリの額に浮かぶ汗と、それに濡れた黒い前髪が艶かしい。
「やっ、マルク、はげしっ……音、聞こえちゃぅっ」
ベッドが古い為に、マルクが腰を打ちつける度にぎしぎしと大きな音が鳴る。静かな夜にこれほど軋む音を立てていれば隣家にも聞こえているかもしれない。アンリはいつもそれを酷く恥ずかしがったが、マルクはそうしたアンリを敢えて虐めることに淫靡な愉楽を感じていた。
「ベッドの音よりアンリの声が聞こえてたりして、ね」
耳元に顔を近づけ、ぐちゅぐちゅと腰を動かしながらそう囁けば、アンリは目を見開いて慌てて両手で口を塞ごうとした。だがマルクはそれを許さずアンリの両手首を掴んで更に深く奥を穿つ。
「あぁっ! やぁ……んんっ、あッ」
肌の激しくぶつかる音とベッドの軋む音、それにアンリの抑えようとしても漏れる声が小さな部屋の中に響いていた。
マルクはアンリの手首を掴んだまま広いベッドの反対側へ仰向けになった。二人は繋がったまま、マルクの上にアンリが跨ることになった。突然のことに驚いているアンリにマルクが言う。
「ベッドが軋まないようにアンリが動いてみたら?」
「や、こんな格好、恥ずかしい……」
快楽と羞恥で真っ赤に染まったアンリの体の中心は、天を向いて涙を溢している。その姿を下から見上げるのは、壮絶に卑猥な光景だった。
マルクはアンリの腰を掴んで浮かせ、手を離すと同時に下からも一気に突き上げた。
「ひぁっ」
一際高い声が漏れてアンリが震えた。お構いなしに何度もマルクは腰を突き上げる。
「や、これだめ、深いっ……あっ、あんっ、あぁぁっ!」
こちらも悪くない。
マルクは指で顎を撫でながら悩んだ。
どちらのベッドでもアンリはいやらしく可愛い。一体どちらを選ぶべきか。悩めば悩むほどどちらも捨てがたく、マルクは頭を抱えた。
「随分真剣だな。お前さんのことだから小難しいことを考えてんだろうな。まぁゆっくり決めてくれ」
そう言って、まさかマルクの頭の中は小難しいことどころかピンク一色とは知りもしない大工は物置小屋を出て行った。
一人残されたマルクはうんうんと唸りながら熟考し、その日は陽が傾くまで物置から出てこなかったという。
いつもの遣いの帰りに繁華街を歩いていたマルクにそう声を掛けたのは大工の男だ。マルクが広げた人脈の中の一人で、たまに工房の手伝いなどもする親しい仲になっていた。
マルクはその大工に来春から住む家に置く家具の手配を依頼していた。とはいえマルクに家具を作ってもらうような潤沢な資金はない。大工が客のオーダー品を納品する際に、古い物を引き取り処分することがある。それを格安で譲ってもらえないかと頼んでいたのだ。大工としても使い古された家具は大して利用価値のない物だったから快く引き受けてくれていた。
「あぁ、ありがとう! ちなみに品は何だい?」
「今回は古いベッドが二つだな」
「ベッドか! それはいい。早速見せてもらうよ」
大工と共に工房の物置小屋に入って、マルクは雑に押し込まれた二台のベッドを比べ見た。一つは一人用にしては大きめのゆったりとしたもので、これならばまだ体の出来上がっていないマルクとアンリ二人が寝そべっても孤児院のベッドよりも窮屈さは感じないだろうと思える物だった。しかし相当年季が入っており、少し寄りかかっただけでぎしりと軋む音がした。
もう一つのベッドはかなり小さなものだった。もしかしたら裕福な家の子ども用のものかもしれないとさえ思える大きさだ。しかしこちらは質も状態も良く、サイズさえ大きければ中古でも充分売れそうな品だった。
マルクは腕を組んで悩んでしまった。どちらにも良さがあり、欠点がある。
たとえば小さなベッドは窮屈かもしれないが、毎日堂々とアンリにくっついて寝られるという利点がある。照れ屋なアンリのことだ、毎晩抱きしめて寝るのは恥ずかしがるだろう。
「マルク、そんなに近くでまじまじと寝顔を見られたら恥ずかしいよ」
「仕方ないだろ、ベッドが小さいんだから」
「それはそうだけど……でもこんなにぎゅっと抱きしめられると……」
「何?」
「マルクの……当たってるのが分かって恥ずかしい……」
マルクは既にはっきりと隆起していたものをアンリの下腹部にわざと押し当てた。
「仕方ないよ、ベッドが小さいんだからさ。それにアンリだって」
「あっ……」
マルクはアンリの中心へと手を伸ばした。兆しかけていたアンリのものは布越しにマルクの手に優しくなぞられてぴくりと震えた。マルクは気を良くしてやわやわと揉む。
「あ……んっ……マ、マルク」
「仕方ないよ、ベッドが小さいからね」
マルクの手はアンリの下履きの中に入り込み、健気に立ち上がったものをきゅっと握った。緩く擦るとアンリの体がびくんと大きく揺れた。
「あっ、あ……や……マルクぅ……んっあぁっ」
マルクが手に力を込めて擦り上げるとアンリの喉がのけぞる。緩急をつけて上下に扱き、時に先端の敏感な部分をくすぐればアンリの黒曜石のような瞳に涙が盛り上がる。赤い舌を僅かに覗かせ物言いたげにこちらを見つめる顔は、壮絶に妖艶に見えた。マルクは生唾を飲み込んで更に擦る速度を上げた。
「もうダメ、離し……やぁっ、マルク、あっ、あんっんっ……アァッ!」
悪くない。
マルクは想像したアンリの姿に頷いた。顎に手を遣り目を瞑って、未来のアンリの嬌態をあれこれと妄想する。
小さいベッドは悪くない選択だ。しかも頑丈そうだからちょっとやそっと激しくしても問題ないだろう、などと考えていた。
やはりこちらのベッドにするべきかと思ったが、隣に置かれた大きなベッドもなかなかに捨てがたい。広いということは好きな姿勢をとれるということだ。姿勢というのはもちろん寝る姿のことではない。体位のことだ。
「あ、あっ、あっ、んっ、あぁっ」
アンリの細い腰を掴み、思い切り突く度にアンリの口からは嬌声が漏れる。甘く蕩けるような響きにマルクの脳は痺れそうだった。足を大きく開かされたあられもない格好で仰向けに寝そべり、こちらを見上げるアンリの額に浮かぶ汗と、それに濡れた黒い前髪が艶かしい。
「やっ、マルク、はげしっ……音、聞こえちゃぅっ」
ベッドが古い為に、マルクが腰を打ちつける度にぎしぎしと大きな音が鳴る。静かな夜にこれほど軋む音を立てていれば隣家にも聞こえているかもしれない。アンリはいつもそれを酷く恥ずかしがったが、マルクはそうしたアンリを敢えて虐めることに淫靡な愉楽を感じていた。
「ベッドの音よりアンリの声が聞こえてたりして、ね」
耳元に顔を近づけ、ぐちゅぐちゅと腰を動かしながらそう囁けば、アンリは目を見開いて慌てて両手で口を塞ごうとした。だがマルクはそれを許さずアンリの両手首を掴んで更に深く奥を穿つ。
「あぁっ! やぁ……んんっ、あッ」
肌の激しくぶつかる音とベッドの軋む音、それにアンリの抑えようとしても漏れる声が小さな部屋の中に響いていた。
マルクはアンリの手首を掴んだまま広いベッドの反対側へ仰向けになった。二人は繋がったまま、マルクの上にアンリが跨ることになった。突然のことに驚いているアンリにマルクが言う。
「ベッドが軋まないようにアンリが動いてみたら?」
「や、こんな格好、恥ずかしい……」
快楽と羞恥で真っ赤に染まったアンリの体の中心は、天を向いて涙を溢している。その姿を下から見上げるのは、壮絶に卑猥な光景だった。
マルクはアンリの腰を掴んで浮かせ、手を離すと同時に下からも一気に突き上げた。
「ひぁっ」
一際高い声が漏れてアンリが震えた。お構いなしに何度もマルクは腰を突き上げる。
「や、これだめ、深いっ……あっ、あんっ、あぁぁっ!」
こちらも悪くない。
マルクは指で顎を撫でながら悩んだ。
どちらのベッドでもアンリはいやらしく可愛い。一体どちらを選ぶべきか。悩めば悩むほどどちらも捨てがたく、マルクは頭を抱えた。
「随分真剣だな。お前さんのことだから小難しいことを考えてんだろうな。まぁゆっくり決めてくれ」
そう言って、まさかマルクの頭の中は小難しいことどころかピンク一色とは知りもしない大工は物置小屋を出て行った。
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