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二人だけのドライブ&サウンド
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愛車に飛び乗った二人は、今日の目的地を県内にある大型アウトレットに定めた。
高速道路を使えば一時間ぐらいで到着するのだが、ドライブも兼ねて今日は下道で行く事にした。
「二人で少し遠出をするのって結構久し振りだよな」
今日は勇緋がハンドルを握っている。
「そうだね。2か月ぶり、ぐらい?」
助手席に座る夬皇は景色を見ながらそう言った。
「あ、そうだ。今日の為に、音楽のプレイリスト作ったんだけど」
「マジ? 聴きたい!」
「俺の上着のポケットに携帯入っているから、設定よろしく」
「おけ」
夬皇はスッと手を伸ばして、勇緋の上着の左ポケットに手を入れて携帯を取り出した。
「ねぇ、携帯にロック掛けないの?」
夬皇が画面をスワイプするとすぐに待ち受け画面に切り替わったのだ。
「えっ? なんで?」
「なんでって、落とした時とか知らない人に中見られて嫌じゃないの?」
「別に俺は落とさないし、それに…」
「それに?」
「夬皇には隠し事しないって言う証になるかなって」
少し照れながらもしっかりとした口調で答えた勇緋。
「何それ、かっけぇ。惚れるわ」
そう言いつつ、彼は音楽アプリを起動させる。
夬皇のリアクションに、思わず勇緋は笑ってしまった。
丁度赤信号になったので、車が停まった。
二人の大好きなバンドのイントロが流れ始める。
「俺は前に携帯を落とした前科があるから、画面ロックは外せないけど…」
それからすぐ、夬皇は勇緋の視界に自分の携帯の待ち受け画面を見せた。
「コレ…」
そこには去年のクリスマスの時に、都内のイルミネーションの前で撮った写真だった。
近距離で寄り添う二人。
夬皇の弾ける笑顔と、勇緋の少し硬い笑顔が収められていた。
「そ! いつも勇緋と一緒だよ♪」
「…うん。心配しなくても、俺はお前を疑ったりはしないよ」
そんな話をしていると、待ち受け画像が次の写真に変わった。
それは昨日彼に取られた物凄い不細工に映るあの恐怖写真だった。
すぐさま夬皇は携帯を引き上げた。
「お、おいッ! 今の!」
「なんでも、ないよ?」
「消せって言ったろ!」
「あー、勇緋、信号青! 青!」
慌てた流れで車は動き出す。どこか納得しない勇緋。
目に見えてむくれているのがわかる。
「どんな勇緋も好きだよって言ったでしょ? それに、なんかさ」
そして、少し無言になってから言葉を続ける。
「この写真があれば、魔除けみたいに俺の事、守ってくれそうじゃん!」
少年のようにニコッと笑いながら、あの写真を見せつけて来た。
丁度太陽が後光のように彼を照らす。
その笑顔があまりにも眩し過ぎた。
だが、冷静になって先程の言葉が思い出される。
「てかさ。今、魔除けって言った?」
「ん? 何?」
夬皇はあっけらかんとしており、自分の発言に対し何も疑いを抱いていないようだ。
(コイツ、天然パワーで乗り切りやがった)
それ以上、勇緋はその事に対して詰問する事はなかった。
その素敵な笑顔に免じて。
二人の大好きな音楽に包まれながら、車は引き続き目的地を目指す。
高速道路を使えば一時間ぐらいで到着するのだが、ドライブも兼ねて今日は下道で行く事にした。
「二人で少し遠出をするのって結構久し振りだよな」
今日は勇緋がハンドルを握っている。
「そうだね。2か月ぶり、ぐらい?」
助手席に座る夬皇は景色を見ながらそう言った。
「あ、そうだ。今日の為に、音楽のプレイリスト作ったんだけど」
「マジ? 聴きたい!」
「俺の上着のポケットに携帯入っているから、設定よろしく」
「おけ」
夬皇はスッと手を伸ばして、勇緋の上着の左ポケットに手を入れて携帯を取り出した。
「ねぇ、携帯にロック掛けないの?」
夬皇が画面をスワイプするとすぐに待ち受け画面に切り替わったのだ。
「えっ? なんで?」
「なんでって、落とした時とか知らない人に中見られて嫌じゃないの?」
「別に俺は落とさないし、それに…」
「それに?」
「夬皇には隠し事しないって言う証になるかなって」
少し照れながらもしっかりとした口調で答えた勇緋。
「何それ、かっけぇ。惚れるわ」
そう言いつつ、彼は音楽アプリを起動させる。
夬皇のリアクションに、思わず勇緋は笑ってしまった。
丁度赤信号になったので、車が停まった。
二人の大好きなバンドのイントロが流れ始める。
「俺は前に携帯を落とした前科があるから、画面ロックは外せないけど…」
それからすぐ、夬皇は勇緋の視界に自分の携帯の待ち受け画面を見せた。
「コレ…」
そこには去年のクリスマスの時に、都内のイルミネーションの前で撮った写真だった。
近距離で寄り添う二人。
夬皇の弾ける笑顔と、勇緋の少し硬い笑顔が収められていた。
「そ! いつも勇緋と一緒だよ♪」
「…うん。心配しなくても、俺はお前を疑ったりはしないよ」
そんな話をしていると、待ち受け画像が次の写真に変わった。
それは昨日彼に取られた物凄い不細工に映るあの恐怖写真だった。
すぐさま夬皇は携帯を引き上げた。
「お、おいッ! 今の!」
「なんでも、ないよ?」
「消せって言ったろ!」
「あー、勇緋、信号青! 青!」
慌てた流れで車は動き出す。どこか納得しない勇緋。
目に見えてむくれているのがわかる。
「どんな勇緋も好きだよって言ったでしょ? それに、なんかさ」
そして、少し無言になってから言葉を続ける。
「この写真があれば、魔除けみたいに俺の事、守ってくれそうじゃん!」
少年のようにニコッと笑いながら、あの写真を見せつけて来た。
丁度太陽が後光のように彼を照らす。
その笑顔があまりにも眩し過ぎた。
だが、冷静になって先程の言葉が思い出される。
「てかさ。今、魔除けって言った?」
「ん? 何?」
夬皇はあっけらかんとしており、自分の発言に対し何も疑いを抱いていないようだ。
(コイツ、天然パワーで乗り切りやがった)
それ以上、勇緋はその事に対して詰問する事はなかった。
その素敵な笑顔に免じて。
二人の大好きな音楽に包まれながら、車は引き続き目的地を目指す。
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