よがり狂って徒花

遭綺

文字の大きさ
15 / 18

舞い散る椿に身を焦がして

しおりを挟む
どれくらいの時間、抱き合っていたかはわからない。
顔を離し、視線が合うと、思わず二人は恥ずかしくなったのか、顔を背ける。
しかし、克伊の目は未だ闘志を帯びているような、何かを渇望するような雰囲気を見せていた。
零は熱い粘液で汚れた手を拭こうと、遠くに投げ捨てられていた作業で使っていたタオルに目を向け、立ち上がろうとした。
その時。
克伊のぬるついた手で腕を掴まれた。
「克伊、さん?」
「零さん…。俺、まだ…」
上目づかいのまま、顔を上気させ零の顔をじっと見つめている。
すでに彼の陰部は再び熱を帯びていて、浮き出た腹筋も赤く高揚していた。
余りにも卑猥な光景に零は息を呑み、恐怖すら感じていた。
一体彼はどうしてしまったのだろうか。
この部屋には秘密の徒花である  は置いていない。
何が彼をここまで性に、快楽に、貪欲で野性的にさせているのか。
「もっと、触って、下さい…」
克伊に言われるがまま、手を引かれ、零は彼の怒張を握らされた。
ただ触れただけで彼の口からは吐息が漏れ、下腹部からは厭らしい擬音が溢れ出す。
零もその手を放そうとするが、身体が言う事を聞かない。
床に埋め尽くされた花々がまるで、漣のように花弁を揺らし始める。
そして、遠くに見える解放された天使の姿が映るあの作品からも、ぼんやりと光を放っているように見えた。

(まさか…)

零ははっきりと理解した。
作品と花々の未知の力が、自分達を快楽と言う究極の異空間へ突き落としたのだと。

(嗚呼。これが僕の求めていた理想郷、なのか…)

究極の美醜を追い求め、作品作りに邁進して来たが、この瞬間、上手く説明出来ないが、境地とやらに足を踏み入れたような感覚に包まれた。

「もっと、もっと…」

克伊は呂律が回らないくらい、快楽の波にどっぷり浸かっていた。
零の手が彼の陰部を扱く度に、身体が痙攣するように震え、全身で喜びを表現しているようだった。

(なんて、卑猥なんだ)

零はそう思いながらも、獣になった克伊の姿から目を離す事が出来なかった。
見逃してなるものかと、身体の奥底から訴えかけてくるから。

「ほら、零さんも…」

荒い呼吸の中、克伊がそう言いながら、零の陰部に手を伸ばす。
「あっ!」
彼の手が余りにも熱い。
そして、その温もりが形容し難い程に、気持ち良い。
心で跳ね付けようとしても、身体がそれを受け入れてしまう。
零自身も簡単に、再び押し寄せて来た性の戒めに縛られてしまった。

「零さんも、気持ち良くなって?」

彼の口から今まで聞いた事のない、声のトーンだった。
脳が痺れるような甘ったるく、耳に纏わりつく厭らしい声だ。
そのまま克伊は、体勢を変え、色々な粘液で汚れている零のモノを、あろうことか口に含んだのだ。
「あっ、ああっ!」
零は今まで感じた事のない快感に包まれた。
彼の口内が熱せられた鉄のように熱く、蠢く舌が的確に零を絶頂へと歩を進ませる。
「克伊さん、口を、離して…」
零が彼の頭に手をやり、そこから引き離そうとする。


「…やだ」


そう言って、克伊は色々な粘液で口元を汚したまま、零をじっと見つめた。
怪しげな笑みを見せながら。
なおも、彼は零への攻めの手を緩めない。

だが、その表情は零の心に、さらに火を付けることとなる。

そのまま克伊の頭を掴み、無理やり己の怒張を喉奥へと突き立てた。
「んんっ…」
突然の事に、克伊は苦しくなり口を離してしまった。
零はそのまま、彼を重厚感のある扉へ押し倒し、ドロドロの彼の陰茎を口に収めてしまった。
「ああっ! ああっ!」
強烈な刺激に、克伊は身体を震わせる。
零を本気にさせた彼に、もう逃げ場は残されて居なかった。

「だ、だめ…。零、さん」

克伊は余りの気持ち良さに顔をゆがめながら、天を仰ぐ。



今更そんな事を言っても遅い。
もっとよがり狂えよ。
僕を満足させるくらい、喘いで厭らしい顔を見せろ。
そうして、綺麗な身体を晒しながら、僕の前で逝くんだよ。



零は心の中で叫びながら、彼への激しい愛撫を止めない。
そんな克伊は、零の内に秘めていたサディスティックな一面を感じ取っていて、恐怖に似た興奮を覚えた。

箍が外れた零自身も、自らの手で己の陰部を扱き始める。
呼吸を荒げながらも、口元と舌先で克伊へ強烈な刺激を与え続ける。
そんな克伊も自らの指を鍛え上げられた胸筋の先端へ向かわせる。
それが自殺行為である事が分かっていながらも、身体が勝手にそうさせる。
指がそこに触れた瞬間、電撃が走るかのような感覚に陥り、頭の奥が蕩け始めた。

「うあっ! ああッ!」

甘ったるいあの声で叫び出す克伊。
体重を預けている扉がギシギシと軋む程、彼の身体は激しく震え始める。
その度に、零の口に注がれる彼の粘液。
「ん、ふっ…」
呼吸を確保しながらも、再び絶頂へと向かうため、零は手で扱くスピードを早める。

周りの花々は揺らぎながら、この異空間で繰り広げられる、二人のケダモノのような逢瀬を静かに見守っていた。

「ああっ…。零、さん…。い、イくッ!」

克伊は思わず零の頭を押さえつけながら、彼の口の中で果て、何度も熱い液体を打ち付けた。
そして零も克伊のモノから口を離し、張り詰めた陰部を扱き上げ、そのまま克伊の腹部へ精を放った。


その瞬間だった。


バキッと言う鈍い音と共に、ドアの鍵が外れた(正確に言うと壊れた)。
ドアが床を擦りながら、ゆっくりと開いた。

吹き込んだ風に敷き詰められた花々がフワリと舞う。
そこには作品の前で、美しい花々に囲まれた二人の使が居た。


「ねえ、気持ち良かった?」


口から白い血のような液体を溢しながら、零は床に倒れたまま動かない克伊を見下ろし、そう言ってみせた。
その凛々しい顔に怪しい笑みを残しながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...