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選ばれし鑑賞者
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(さてと。今日は素敵なカップル、居るかしら)
フォックスセイムがある場所から遠く離れた場所。
スマホ画面を見つめながら、とあるアプリを起動させた一人の女性。
【フォックステイマー】
このアプリの名前である。
すぐに認証機能が作動し、彼女は自身の個人情報を打ち込んでいく。
それから少し時間が経つと、無事認証が下り、ログインを済ませる事が出来た。
すると画面上に、フォックスセイムの部屋番号が20個表示されたのだ。
(どれにしようかしら…)
心臓の鼓動が早くなるのが分かる。
毎回この選択が楽しみで仕方がないのだ。
直感で決めた部屋番号の一つをタップすると、少し時間を置いてから画面が切り替わったのだ。
画面の右下には【UP】のボタンと【SIDE】のボタンが表示され以外は真っ暗である。
女性は慣れた手つきで【SIDE】のボタンを押す。
パッと画面が切り替わると、突如、ベッドの上で裸体のまま愛し合っている二人の男性の映像が映り込んだのだ。
至近距離で、二人の情事を眺めているような感覚に陥る。
「ああっ!そこ、気持ちいい!」
優しそうな青年はそう声を上げる。
「〇〇くん、感じてるんだね。良いよ、もっと感じて!」
少し歳の行った男性は責め立てる手を緩めない。
臨場感溢れる嬌声が次々と漏れ出て来るが、一部、名前だろうか、ピーと言う音で掻き消されていた。
(高性能AIによる自動音声認識システムで、彼らの個人情報(特に名前)と思われる言葉が発せられた場合は自動でその音を伏せる仕組みとなっている)
二人の青年は全くこちらに気付いていない様子である。
何故なら、ベッド脇の鏡はマジックミラー加工が施されており、彼らには覗かれている事が分からないようになっているからだ。
鏡に映るのは自分達の獣のような姿だけ。
そんな快感で悶える二人の姿を見る女性の視線は、一切ブレることなく、寧ろ、愛でるような優しい目で見つめ続けていた。
一通り、側面からの一部始終を楽しんだ後、今度は【UP】のボタンを押した。
すると、画面が切り替わり、天井から覗いているような視点になった。
強すぎる快楽に顔を歪めながらも、喜ぶ受けの青年の表情と、汗を浮かばせながら腰を振り続ける攻めの青年の背中から腰のラインを伺う事が出来る。
これは映像作品ではない。
今まさにあのホテルで繰り広げられているライブ映像なのだ。
さながらそれは究極の性の時間芸術。
そう、この女性は選ばれし鑑賞者なのだ。
彼女達のような者は総称して、指導者と呼ばれている。
身分証明と個人情報を事前にアプリに登録する必要がある。
(女性だけでなく、男性も登録すれば視聴可能である)
月額制で所謂、サブスクリプション。
音声の録音、映像の録画は出来ないような仕組みになっており、勿論、アーカイブも残らないしSNSにその感想をアップする事も出来ない。
決まった時間に配信される訳でもないし、仮に映像が見れたとしても、自分の思い描く結果になるとも限らない。
奇跡のようなタイミングと登場人物が重なった時にだけ見られる最高の時間芸術。
それがこのアプリの最大の魅力なのだ。
登録者数は5000人を超えていると言う噂もあるらしい。
「ああっ! ダメッ!」
「俺もそろそろ…」
彼女の視線の先で、二人の青年は身体を震わせながら甘い声を上げながら、白い液体を撒き散らしていた。
果てた後の荒い息使いが聴こえて来る。
「気持ち良かったよ…」
「…はい」
余韻に浸る二人はそのままキスを交わし、ベッドに身体を落とした。
(なかなか良かったわね。今日は良いモノが見れたわ)
そう思った彼女は心の中で拍手を送ると、左下にあるハートのボタンを押したのだった。
それだけではなく、沢山のコメントが溢れかえっていた。
(アプリ内でのみ、この映像に関する感想を伝え合う事が出来る)
彼女の以外にも、先程まで繰り広げられていた芸術を愛でる指導者が多く居たらしい。
彼女はフワフワした気持ちを抱きながら、そっとアプリを閉じるのだった。
フォックスセイムがある場所から遠く離れた場所。
スマホ画面を見つめながら、とあるアプリを起動させた一人の女性。
【フォックステイマー】
このアプリの名前である。
すぐに認証機能が作動し、彼女は自身の個人情報を打ち込んでいく。
それから少し時間が経つと、無事認証が下り、ログインを済ませる事が出来た。
すると画面上に、フォックスセイムの部屋番号が20個表示されたのだ。
(どれにしようかしら…)
心臓の鼓動が早くなるのが分かる。
毎回この選択が楽しみで仕方がないのだ。
直感で決めた部屋番号の一つをタップすると、少し時間を置いてから画面が切り替わったのだ。
画面の右下には【UP】のボタンと【SIDE】のボタンが表示され以外は真っ暗である。
女性は慣れた手つきで【SIDE】のボタンを押す。
パッと画面が切り替わると、突如、ベッドの上で裸体のまま愛し合っている二人の男性の映像が映り込んだのだ。
至近距離で、二人の情事を眺めているような感覚に陥る。
「ああっ!そこ、気持ちいい!」
優しそうな青年はそう声を上げる。
「〇〇くん、感じてるんだね。良いよ、もっと感じて!」
少し歳の行った男性は責め立てる手を緩めない。
臨場感溢れる嬌声が次々と漏れ出て来るが、一部、名前だろうか、ピーと言う音で掻き消されていた。
(高性能AIによる自動音声認識システムで、彼らの個人情報(特に名前)と思われる言葉が発せられた場合は自動でその音を伏せる仕組みとなっている)
二人の青年は全くこちらに気付いていない様子である。
何故なら、ベッド脇の鏡はマジックミラー加工が施されており、彼らには覗かれている事が分からないようになっているからだ。
鏡に映るのは自分達の獣のような姿だけ。
そんな快感で悶える二人の姿を見る女性の視線は、一切ブレることなく、寧ろ、愛でるような優しい目で見つめ続けていた。
一通り、側面からの一部始終を楽しんだ後、今度は【UP】のボタンを押した。
すると、画面が切り替わり、天井から覗いているような視点になった。
強すぎる快楽に顔を歪めながらも、喜ぶ受けの青年の表情と、汗を浮かばせながら腰を振り続ける攻めの青年の背中から腰のラインを伺う事が出来る。
これは映像作品ではない。
今まさにあのホテルで繰り広げられているライブ映像なのだ。
さながらそれは究極の性の時間芸術。
そう、この女性は選ばれし鑑賞者なのだ。
彼女達のような者は総称して、指導者と呼ばれている。
身分証明と個人情報を事前にアプリに登録する必要がある。
(女性だけでなく、男性も登録すれば視聴可能である)
月額制で所謂、サブスクリプション。
音声の録音、映像の録画は出来ないような仕組みになっており、勿論、アーカイブも残らないしSNSにその感想をアップする事も出来ない。
決まった時間に配信される訳でもないし、仮に映像が見れたとしても、自分の思い描く結果になるとも限らない。
奇跡のようなタイミングと登場人物が重なった時にだけ見られる最高の時間芸術。
それがこのアプリの最大の魅力なのだ。
登録者数は5000人を超えていると言う噂もあるらしい。
「ああっ! ダメッ!」
「俺もそろそろ…」
彼女の視線の先で、二人の青年は身体を震わせながら甘い声を上げながら、白い液体を撒き散らしていた。
果てた後の荒い息使いが聴こえて来る。
「気持ち良かったよ…」
「…はい」
余韻に浸る二人はそのままキスを交わし、ベッドに身体を落とした。
(なかなか良かったわね。今日は良いモノが見れたわ)
そう思った彼女は心の中で拍手を送ると、左下にあるハートのボタンを押したのだった。
それだけではなく、沢山のコメントが溢れかえっていた。
(アプリ内でのみ、この映像に関する感想を伝え合う事が出来る)
彼女の以外にも、先程まで繰り広げられていた芸術を愛でる指導者が多く居たらしい。
彼女はフワフワした気持ちを抱きながら、そっとアプリを閉じるのだった。
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