転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール

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第二章

プレゼンと女神様

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三月の始めギリギリ年度内に評議会の審議を通過した。

後は領地に帰る前の貴族達を捕まえて、私のプランを説明するだけだ。

王宮のパーティーも全て終了し、私は愛によって授かった娘と言う事が定着して来たようである。
全て、ザビーネ王妃様とエリザベス様のお陰だ。
私はただ、修道院に引きこもっていただけである。


「 よし、今度は私の番だわ!」

私には秘策があった。
名付けてマリアベル女神化計画である。
その為に毎日、実の父母にお祈りを捧げて加護の発動を安定させる練習をした。

そして、南京玉すだれの練習も欠かさずおこなった。

加護と玉すだれ

この二つが私の秘策である。

顎下で綺麗に揃えられた、おかっぱ頭は茶色に染められていた。
しかし、昔と違い手入れが行き届いていた為に、髪のキューティクルが銀にキラキラと輝いている。

「 まあ、これは仕方ないわね。」
私は髪をツンツンと引っ張って呟いた。


******************


そして、三月の末日、
修道院の礼拝堂には椅子と机が並べられた。

そこにはビッシリ、人人々、

[ 女性の尊厳を守る会 ] の説明会を視聴しに来た貴族達であった。

マリアベルは、半分は冷やかしだと 踏んでいる。
しかし、それでよい。
今日の目的の半分は達している。

そしてもう一つの目的とは、、、、
マリアベル本人を人目に晒す事である。

これは誰にも言ってはいない。
父も、祖父も、旧家も、もちろん陛下も、、、

私は、父親譲りの茶色の髪を持つ、平凡な顔の娘!

そして、鼻とほっぺにソバカスを描く。

「姫様のお顔が、美しい姫様のお顔が、、、」
ドゥラーク3人娘は泣きながらソバカスを描いていた。

黒縁の伊達メガネをかけて、新マリアベルの完成である

( 実は、目を小さく見せたくて、近視用のメガネを購入してみたが、頭がクラクラして危険だったので 断念してしまった )



会場では、ジャスティン•クレイが代理人として、会の趣旨と活動要綱を説明していた。

私の中ではイメージとして、NPO団体(非営利目的 )にするつもりである。

ザビーネ王妃様に、名誉会長なってもらい
エリザベス様には、(社外?)役員として就任してもらった。

そして、名誉毀損で搾り取った賠償金は、と言うと、、、

カルバートン伯爵領
マスグレープ伯爵領
カーライト子爵領

各々の夫人達を [女性の尊厳を守る会] 支部代表として据えた
そして各自の領地に、会の設立基金として返還したのだった。

最初のモデルケースとして、運営体制を整えてもらう予定である

ジャスティン•クレイは、
「はい、次のページをお読み下さい。
そこには、年平均の修道院に保護された女性と、保護されたのにもかかわらず、また連れ戻された女性の数を示してあります。
そして、連れ戻された先で亡くなった数も調査してあります。」

淡々と説明をしてくれていた。

父親は皮肉屋だが、彼は全く表情を動かさない冷静さである。



開始時には真上にいた太陽は、もう西に傾いていた。

「 これて、説明を終わります。
ご質問がおありでしたら受付ます。
どなたか、ご質問はございませんが?」


会場は気味が悪いほどシーンと静まっていた。


「 では、発案者のクラレンス侯爵令嬢マリアベル様よりご挨拶を、、
マリアベル様、お願いします 」

私は、控室に通じるドアから演説台に登った。

旧家と祖父が、余りにも様変わりした私に驚愕し、私を人目から遠ざけようと 立ち上がった。

クレイ率いる運営委員会のメンバーが、止めに入った。

「 あれがマリアベル様か?」
「 金の髪ではなかったのか?」
「 女神のような美しさではなかったのか?」
「 噂とは違うじゃないか!」

出席者がザワザワと騒ぎ始めた。

「 皆様、お静かにお願い致します。
私がご紹介に預かりました、マリアベル•クラレンスで御座います。

私が、このような活動を始める切っ掛けは、母コーネリアで御座います。

母はその体の弱さから、死んでも尚、私の出生に関して、永遠と謂れなき中傷を受け続けておりました。

そして、そのような境遇にあるのは、母だけではありません。

女性であるが故に受ける暴力、屈辱、中傷

誰かが、手を差し伸べなければなりません。

誰かが、保護をしなければなりません。

それは、男性の目線では出来ない事です。

女性であるからこそ気付く事なのです。」



(マリアベルは演説を始めて、段々と、トランス状態になってきた)



「 この国は女神様の興された国、
女神の国なのです!!!」

マリアベルは、取り出した玉すだれで 頭上にシュルっと 月を作った
( お母様、お父様、お願い!!!)

月の中にキラキラと煌めきが溢れ出て来た。



おおぉー、、、、


参加者からどよめきの声が上がった


( やりきったわ! )


ホッとして、気が抜けた瞬間だった


背後より強い西日が差し込み、マリアベルを染めた。

マリアベルの髪は、西日を浴びて黄金に輝き、キラキラと銀の煌めきを反射した。

そして、室内にはキラキラと煌めきが散乱している。


尋常ではない雰囲気の中、目をつぶってユラユラと揺れたマリアベルの口からは、彼女のモノでない声が発せられた。



「この国は、妾の国じゃ」


その声は低く重厚で、神々しく、人々の心の中に侵食していった


皆、目を閉じて立ち尽くしてる。


「 女神様 ••• 」
誰が発したその声と同時に、皆が、平伏をした


「愛する民よ、、、、」



そう言い終わると、マリアベルは膝から崩れ落ちた。

  “ガタン”  
前の席より黒い犬が、えもいえぬ早さで飛び出した。

いや、人だ、紺色の髪をした、、、

その大柄な美丈夫は、風の様に走り抜けた

「マリアベル様ぁーー」

彼は、床にぶつかる寸前に彼女を支え上げ、その身体をひっしと抱きしめた。

「 ああぁ、姫、今度は間に合いました。」


( あら、ユル•ブリンナーだわ••• )

そう思いながらマリアベルは意識を失った


また、また、「キャァァーアア!!!」
黄色の歓声が修道院内に響き渡った



*******************


お忍びで演説を聞きに来ていたトラビス。


まるで雷に打たれたように身体が硬直した。

「 女神様の国•••• 」

「 女神様の••••• 」

そうだったのだ、これは女神様の創られた国、、、、、

初代様はその手助けをしたに過ぎぬ。

全てが逆だったのだ!!!


白きモヤの中からい出し 至宝が割れ
夜の帳に包まれし時
世の理の流れる道を示す


[ 世の理 ] とは、この事だったのだ

初代ジョージ1世は、女神様から王位を授けられたのだ
しかし、彼は驕ってしまった

女神の末裔たるもの、
そして王位につく者は決して驕ってはならぬ

このサーガは女神様からの警告だったのだ

女神様は、300年間この事を訴えておられたのか•••••

そして、とうとう御自らお出ましにらなられた

道を示す為に•••••



トラビスは黄色い歓声の中に紛れて、王宮に帰って行った。


*****************







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