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第二章

マリアベルの結婚 その1

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10月、水色の空には雲一つない、正に青天である。

「この雲一つない美しい青空。
これは、まさしく女神様からの祝福だ!」

お祖父様はそうおっしゃられ。

( 天気が良いから祝福? やっぱり昔の人って迷信深いわよね
じゃあ雨が降ったらなんと言うのかしら?
      雨降って地固まる ?
プププ、可笑しいわよね!)

周りの盛り上がりを見て、1人冷めていたマリアベルであった。

住む家がクラレンスからドゥラークに変わるだけ。
結婚生活は、侍女さん達が掃除洗濯してくれるし、うるさい姑も舅もいない
前世の結婚生活よりもずっーと楽かもしれない。
夫婦生活なんて、足開いていれば夫が勝手にアレを入れて、子供が出来るし•••

ガブリエルも付いて来てくれると言っていた。

「さあ、結婚式だわ!」私は腹を括った。



***********


結婚の儀は、婚約の時と同じ城の王家の教会で行った。

生成りのドレスを見に纏い、カツラも被らない。
頭には白いウレクラで出来た花冠を被る
偽りのない素の自分で、神に会わなければならない

参列者は私の生い立ちと運命を知っている人ばかりだ。カツラがなくても問題は無い。
特に王家に縁のある方々は「王家の呪い」を解き放った娘としてとても感謝された。

皆に祝福され、ウーラノス様と2人で神の御前に立つ

式は、神殿長エクルズ様、自ら取り行ってくれた。

神殿長の言葉に「ハイ」と答え書面にサインをする。
そして、結婚の儀は’誓いの口付け’をする

ウーラノス様のお顔が近づくと、こんな私でもドキドキとする。

ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ

あれ? ホッペにキスだ?
口じゃなくていいの?

キョトンとしていたら

「神の門前で婚姻が整いました。
お二人は、神に認められ永遠の魂の結びを得ました」

参列者から拍手が沸き起こった。

私はウーラノス様を、見上げた。
目が合ったのでニコッと笑った。
彼は頭を下げてくれたが、目が笑っていなかった。


**************

式が終わると直ぐに新郎側と新婦側に別れドゥラーク邸に向かう。

ドゥラーク邸でお披露目のパーティーが催される。

こちらの風習では、パーティーは新郎側が総て仕切る。
新婦側はお客様である。
パーティーの規模が新婦側に対しての敬意となる為に、富豪や高位の貴族の娘を娶ると新郎側はかなり出費を覚悟しなければならない。

しかし、今回の披露宴は警備の問題上100%問題の無い厳選した人物しか招待していない。
豪華だか規模の小さいパーティーにする事を両家の間で決められた

***************


ここはドゥラーク邸、マリアベルの控室である。

「姫様、ご覧下さい!」

侍女がサークレットをケースから取り出した。

蔦を模した細い輪に、真珠で出来た花が付けるられている。
その花を朝露のようにキラキラと輝くダイヤが取り巻いている
糸の様に細い金のチェーンが何重にも重なり額から耳元にかけて飾り、動くたびにシャラシャラと美しい音を奏でる。

「まぁ、なんて綺麗なのかしら!」

「旦那様からのプレゼントです。
ベールを止めるのに必要であろうと、アキフューズより取り寄せたのですよ!」

(この、シャラシャラとした感じ、中近東ぽいデザインだわ!アキフューズは中近東の位置付けなのかしら?
そういえば、昔、子供の頃 母の簪がシャラシャラ鳴るのが好きだったな、懐かしいなぁ••• )

ちょっと感情に浸るマリアベルであった。

髪を結い上げ、化粧を施し、
純白のドレスを着付けする。
これでもか、と言う程の魔道具を身につけて、
仕上げに伯父の魔法陣が付いたベールにサークレットを付ける。

「姫様、お美しいです!」
やり切った!とばかりの侍女さん達の賛美の声が昇った。

「これはお約束ですが、何があっても絶対1人では行動しない。よろしいですね!」
「姫様は、すぐ、ご自分で動こうとなさいますから•••」

念を押された

そして、彼女達はポケットから方位磁石を取り出して並んで言った
「探知機の作動確認、OK?」
「OKです!」

「なんですの?それ?」
(方位磁石でしょ!探知機なの?)^_^、

「マリアベル様探知機です。
さるお方から作り方を教わりました。
放っておくとマリアベル様は直ぐ何処かに行ってしまわれるという事でしたので、」

「うんっ?誰なの?そんな事言う人は•••• 
失礼だわ!私、本当は大人しいのよ!」

「ナイショです。」

もー!!!

クスクスと笑い声がこだました。


*************

コンコン、ノックの音がした。

「お支度整いました。お入り下さい」

侍女の声掛けで入って来たのはウーラノス様だった。

入室されて暫く沈黙が続いた

「ウーラノス様、サークレットありがとうございます。とても素敵で気に入っております」

「えっ、あぁ、サークレット、サークレットね、お気に召していただけたようで••• 」

  ウーラノス様は目に手を当て天井を向いた

(  この人、 私を見ると石になると思っているのかしら??? 失礼しちゃうわ )

「会場にご案内致します」
そう言うとウーラノスはクルッと背を向けて歩き出した。

ついて来いと言う事なのか?

「旦那様、エスコート!エスコート!」

侍女さんに言われてウーラノス様は腕を差し出した。

私はその腕に手を掛けた。

そして無言でパーティー会場に向かった。

私は思わず「ハァ」と溜息をついた。

***************

「本日は、私ウーラノス•ドゥラークとマリアベル•クラレンス侯爵令嬢の為にお集まり頂きましてありがとうございます。
ここに私達2人の結婚をご報告させて頂きます。
どうか私達2人を暖かく見守って頂けると嬉しく存じます。」

ひな壇に登ってウーラノス様が壇上より来賓客に挨拶をする。
そして2人で腰を折り礼をする。

拍手が沸いた。

さあ、結婚披露パーティーの始まりである。

会ったことのない沢山の方々から挨拶を受けた。
きっとこの方達は私の事をよく思わないだろう。
顔を隠しているし認識誤認の魔道具をたんまり付けている。
学園に入学した時のように誤解させるんだろうなぁ•••
人間だもの、誤解されるのはちょっと悲しい。

そう思っていたら、五人の男性がこちらにやってきた。

四家と変装したトラビス王だった。
知った顔を見て思わず涙が溢れた。

「どうした、マリアベル、その様に泣いて•••
結婚が嫌になったなら、これから私と王宮に帰るか?」
トラビス王は私を慰めてくれた。

「彼女は私の妻です!」
ウーラノス様に、いきなり手を掴まれた

  ( へっ! ビックリ! )
私は固まってしまった。

「おいおい、そんなに威嚇しなくても•••」
ハワード侯爵がニヤニヤと声を掛けた

「一番危ないのはトラビス王、貴方です」
ウーラノス様は答える。

「 今からこんなでは、先が思いやられるなぁ、マリアベル様!」

なんだかよく分からないけど•••
取り敢えず話を合わせ「ハイ」と答えておいた。

「皆様のおかけで元気が出ました。ありがとうございます。」

「 可愛いマリアベルをこの様に泣かせるとは、困った花婿だ!
伯父さんが後で仕置きしておこう!」
トラビス王は茶目付けタップリでウインクした。



「おじ様、これをソフィア様に 」

私は、結婚の儀で使用したウレクラの花冠をキングスバリー公爵に手渡した。
日本では花嫁のブーケを貰った人が幸せになれるという風習がある。
私を親友だと言ってくれた彼女に何がお礼がしたかったのだ。

「ソフィアは、いつも、貴方と出会えた事が人生で最高のプレゼントだど言っております」

キングスバリー公爵の言葉に、今度は嬉し涙を溢した。

「ウーラノス殿、ソフィア様には勝てませんな!」
ハワード侯爵がウーラノス様にからかいの声を掛けた。




その後、二時間程で宴会はお開きになった


***************













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