146 / 163
第二章
マリアベル 卒業する 2
しおりを挟むパーティーも終わりに近づいていた。
ラストダンスに備えて身嗜みを整えに控え室に向かう生徒がチラホラと見受けられた。
ラストダンスは誰と踊っても良い。
女性と女性、尊敬する先生とでもよし、
以前、四年間 馬の世話になった馬番の方と踊った男生徒もいた。
ラストダンスは感謝を込めてのダンス
作法も関係ない。
学園最後のダンスなのだ。
私は婚約者が間に合わなかったのでソフィアと踊る事にした。
フロアが暗くなり静かな音楽が流れてきた。
「ソフィア様ごめんなさい。私につきあわせてしまって•••」
私より背の高いソフィアが目を細めて言った
「わたくし、貴方と出会って本当によかった。貴方は、かけがえのない わたくしの友よ!だから貴方とラストダンスを踊るのはわたくしも本望なの。」
まるでソフィアから愛の告白を受けたように感じ顔が赤くなった。
その時だった。
私達の脇に高低差のある男性カップルが近づいて来た。
一瞬の出来事だった。
私の手がソフィアから離れ男性に引き渡された。
その瞬間、観客席から大きな拍手と「キャー!!!」という黄色い声が上がった
えっ!!! 誰???
見上げる程の高い背、大きくてゴツゴツとした手。
私はこの手を知っている。
懐かしいあの人、私の婚約者様
「姫、遅くなりました。ウーラノス•ドゥラークただ今 参上いたしました 」
久々に見た婚約者様は少し痩せて、肌も褐色に色付いていた。
「来ていただけて、とても嬉しいです」
私は、彼の目を見て微笑んだ。
ウーラノス様は、、、あれ、目を逸らした?
気のせいか?
「姫は背が伸びたのですね。」
「ええ、160㎝にギリギリ届きました。」
「そうですか•••」
なんだか、会話が続かない。
ウーラノス様ともダンスの距離があるような•••
ウーラノス様のダンス、カクカクとしてロボットぽい
うーん??? なんだろ?
ソフィア様のお相手はアルフレッド様だった。
目が合った彼女は、悪戯が成功したような顔をしてウインクした。
私達は黙ったまま、ギクシャクとした中でラストダンスを終えた。
フロアが明るくなった。
拍手がおこる パーティーの終了である。
私はウーラノス様より、父に引き渡された
ちらっとウーラノス様を見るが•••
なんだかモヤモヤする。
卒業パーティーは無事何も無く終了し、私達はお互いのタウンハウスへと帰って行った
**************
卒業はしたものの、魔導車にはまだまだ多くの課題が残されていた。
パーティーの次の日、私は学園に向かった。
「マリアベル様、四輪だと馬力が不足ですよねぇ、やはり魔石を増やした方がいいんじゃないですか?」
後輩はそう言うが魔石は非常に高い。
今回、私は四輪を諦めて三輪魔導車を作ったのだった。
「取り敢えず、四輪で完成させてみましょう、コストは後から考えればよいわ
問題は回路の簡素化よね!」
そこにはロジャー殿下もいた。
「私が卒業するまで、絶対に作ってみせますよ!」
「期待してるわよ!」
激励して研究室を後にした。
なんだか邸に帰りたくない。
今夜はウーラノス様を交えての夕食会をするのだ。
昨日の事があってかなんだか気が重い。
帰り際に女生徒に囲まれた。
「マリアベル様、昨日はとても綺麗でしたわ!」
「お噂の婚約者様、初めて拝見したしましたわぁ~、[夜の王]大人の魅力ですわね」
「マリアベル様をお守りする為に選ばれたとお聞きしました。素敵ですわぁ」
なんだかんだでウーラノス様は人気がある。
男からもモテ、女からもモテる。
巷では、独身最後の砦と言われ、攻略する女性は誰か?と噂されていた程だ。
女生徒達と別れ、帰りの馬車のなかで考えた。
私の中身はおばあちゃんだけど、実際のマリアベルは、まだまだ少女。
ウーラノス様は大人の女性と浮名を流しておられるから、少女の私との婚約が負担になってしまったのかも?
きっと、以前の私は子供っぽかったから、保護者気分だったのね!
お肉も切ってくれてたし•••
そうね、婚約解消を申し出たほうがいいのかも知れないわ。
ジェイコブ様も臣下に下った事だし、王命も関係無くなるわよね。
私を守る為だけの婚約だなんて•••
そんなの、お互いが不幸になるだけだわ。
うん、それがいいわ、そうしましょう。
***************
ウーラノス様をお迎えしての夕食会。
ウーラノス様はやはり私を見てくれない。
目が合うとそらされる。
もう、ここまでくると嫌われているのかと思ってしまう。
食後にみんながお酒を飲み始めた頃に婚約解消を申し出てみよう。
きっとお父様は、味方についてくれるわね。
食後、男性陣は談話室へと場所を変えた。
私は、部屋に入るタイミングを探っていた。
「マリアベル、入って来なさい」
祖父に呼ばれて入室し、そこで爆弾が投下された。
「お前の結婚が決まった。半年先の10月がよいだろう。寒くなる前に済ましておきたいのでな!」
えっ、結婚?
思わずウーラノス様を見た、目が合った途端、彼は下を向いた。
以前はあんなに優しかったのに、
いつも話しかけて下さって、腕に乗せてくださって、、、、
何処へ行くにも一緒だったのに•••
私、嫌われちゃったんだ
でも、私を守る為に無理して結婚するんだ
これが貴族なんだ•••
「はい、わかりました」
震える声で返事をする。震える足で部屋を出る。
どうやって部屋に帰ったかも覚えていない。
その夜、私は泣きながら眠りについた
1
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説

ザ・聖女~戦場を焼き尽くすは、神敵滅殺の聖女ビームッ!~
右薙光介
ファンタジー
長き平和の後、魔王復活の兆しあるエルメリア王国。
そんな中、神託によって聖女の降臨が予言される。
「光の刻印を持つ小麦と空の娘は、暗き道を照らし、闇を裂き、我らを悠久の平穏へと導くであろう……」
予言から五年。
魔王の脅威にさらされるエルメリア王国はいまだ聖女を見いだせずにいた。
そんな時、スラムで一人の聖女候補が〝確保〟される。
スラム生まれスラム育ち。狂犬の様に凶暴な彼女は、果たして真の聖女なのか。
金に目がくらんだ聖女候補セイラが、戦場を焼く尽くす聖なるファンタジー、ここに開幕!
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる